114 / 159
羽ばたきの時
111話 決闘承諾
しおりを挟む
「えっ、勝負って……?」
「俺と戦え、一対一でな」
唐突に申し込まれた勝負。
一対一ということは、決闘だろう。
「お前達が、そこのNPCを仲間にした非公開のストーリーイベントを攻略しているということは知っている。そこで得られた強さを、俺に見せてみろ」
アトラスの視線が、フェルテを一瞥する。
「ほぉ、我にではなく、アロウに勝負をしろと申すか。アトラスとやら、貴様、なかなかに見どころがありそうだ」
何を思ったのか、フェルテは一歩前に出てアロウの隣に立つ。
「このアロウは随分な女誑しではあるが、その芯の強さと力は本物だ。我が保証しよう」
「お、女誑しって、何言ってるんだ……」
「違うのか?」
真顔で訊き返すフェルテに、アロウは「全力で否定させてくれ!」と声を荒げる。
アトラスは特に意を介することもなく。
「三日後に、この時間、ノヴィス平原に来い。都合が悪いならすぐに言え」
「え、えぇと……」
しかも日程や場所まですぐに決められてしまい、アロウは少し混乱している。
ちょっと待ってください、とアロウは一言断ってから、後ろにいるメンバー達に向き直る。
「えーっと、三日後なんだけど。俺、そこに予定が入ったんだけど、大丈夫だよな?」
多分一緒にプレイ出来ない、とアロウは伝えると、ルナとカノラは顔を合わせて頷き、メイプルも「売られた喧嘩は買っちゃいなさい」と背中を押し、ジルダは我関せずだ。
それを確認して、アロウは意を決してアトラスに振り返る。
「分かりました。その勝負、謹んで受けさせてもらいます!」
承諾。
アトラスはニヤリと口角を上げた。
「よぉし、よく言った。逃げることも忘れることも、許さんぞ」
アロウとの勝負を託けたアトラスは、クエストカウンターに向き直ると、Aランクのクエストを受けて即座に発っていった。
それを見送っていたフェルテは、残念そうに鼻を鳴らす。
「ふむ、出来ることなら奴も引き入れたいところだが、奴は男だ、アロウの誑し込みも恐らくは通じるまい」
「フェ~ル~テ~、そろそろ怒るぞ?」
散々「誑し」だのなんだのと言われて、アロウはフェルテの頬を抓んで引っ張り上げる。
「むおぉっ、にゃ、にゃにをしゅるっ、んえぇぃっ、はにゃしぇっ!」
アロウの攻撃(?)から逃れようと首を振るが、なかなか解けない。
「とりあえず、今日は予定通りイグニート火山の素材ツアーで、慣らし運転兼採集をしようか」
フェルテの意外と柔らかく伸びる頬を引っ張りながら、イグニート火山の素材ツアーを受けるアロウ。
アトラスとの勝負に備え、アロウはこの日は慣らし運転に集中し、連日でやり過ぎないように一日間を置いた。
「俺と戦え、一対一でな」
唐突に申し込まれた勝負。
一対一ということは、決闘だろう。
「お前達が、そこのNPCを仲間にした非公開のストーリーイベントを攻略しているということは知っている。そこで得られた強さを、俺に見せてみろ」
アトラスの視線が、フェルテを一瞥する。
「ほぉ、我にではなく、アロウに勝負をしろと申すか。アトラスとやら、貴様、なかなかに見どころがありそうだ」
何を思ったのか、フェルテは一歩前に出てアロウの隣に立つ。
「このアロウは随分な女誑しではあるが、その芯の強さと力は本物だ。我が保証しよう」
「お、女誑しって、何言ってるんだ……」
「違うのか?」
真顔で訊き返すフェルテに、アロウは「全力で否定させてくれ!」と声を荒げる。
アトラスは特に意を介することもなく。
「三日後に、この時間、ノヴィス平原に来い。都合が悪いならすぐに言え」
「え、えぇと……」
しかも日程や場所まですぐに決められてしまい、アロウは少し混乱している。
ちょっと待ってください、とアロウは一言断ってから、後ろにいるメンバー達に向き直る。
「えーっと、三日後なんだけど。俺、そこに予定が入ったんだけど、大丈夫だよな?」
多分一緒にプレイ出来ない、とアロウは伝えると、ルナとカノラは顔を合わせて頷き、メイプルも「売られた喧嘩は買っちゃいなさい」と背中を押し、ジルダは我関せずだ。
それを確認して、アロウは意を決してアトラスに振り返る。
「分かりました。その勝負、謹んで受けさせてもらいます!」
承諾。
アトラスはニヤリと口角を上げた。
「よぉし、よく言った。逃げることも忘れることも、許さんぞ」
アロウとの勝負を託けたアトラスは、クエストカウンターに向き直ると、Aランクのクエストを受けて即座に発っていった。
それを見送っていたフェルテは、残念そうに鼻を鳴らす。
「ふむ、出来ることなら奴も引き入れたいところだが、奴は男だ、アロウの誑し込みも恐らくは通じるまい」
「フェ~ル~テ~、そろそろ怒るぞ?」
散々「誑し」だのなんだのと言われて、アロウはフェルテの頬を抓んで引っ張り上げる。
「むおぉっ、にゃ、にゃにをしゅるっ、んえぇぃっ、はにゃしぇっ!」
アロウの攻撃(?)から逃れようと首を振るが、なかなか解けない。
「とりあえず、今日は予定通りイグニート火山の素材ツアーで、慣らし運転兼採集をしようか」
フェルテの意外と柔らかく伸びる頬を引っ張りながら、イグニート火山の素材ツアーを受けるアロウ。
アトラスとの勝負に備え、アロウはこの日は慣らし運転に集中し、連日でやり過ぎないように一日間を置いた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています
もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。
使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる