107 / 159
羽ばたきの時
104話 大空の支配者
しおりを挟む
火山の麓の丘に、プレイヤー達の拠点がある。
アロウ、ルナ、カノラ、フェルテが出発準備を整えた頃、ジルダはコンソールを打ち込んでいた。
打ち込みに応じて、ジルダのミサイルポッドのハッチが開き、弾頭が組み込まれてからまたハッチが閉じられる。
「ジルダさん?何してるんですか?」
調子を確かめているのかと思ったカノラだが、ジルダはコンソールから目を離さないままに受け答えする。
「ミサイルの弾頭を切り替えているのよ。今回のレッドワイバーンは空を飛ぶ相手だから、近接信管と、散弾にするつもり」
「き、きんせつしんかん?さんだん?」
一体何の話をしているのか分からないのか、カノラは頭に疑問符を浮かべている。
「ようするに、ぶつけて爆破するんじゃなくて、ある程度相手との距離が縮まったら勝手に炸裂して、小さい弾が広範囲に拡散するミサイルってこと」
「え、えぇと……?」
「……見てたら分かるわ」
FPSやロボットモノの創作知識のないカノラは、「どうやらジルダが普段使うミサイルとは違う」ぐらいしか分からなかった。
ジルダの準備も終わったところで、アロウ達は拠点を出る。
麓周辺は森に近いため緑も多いが、山に近付くにつれて緑色は姿を消し、代わりに赤々とした溶岩の河がアロウ達を出迎えてくる。
山道の中は空洞のようになっており、溶岩が冷えて固まって地盤になった道に、そこかしこに溶岩がボコボコと音を立てている。
毒を吐き出すラプタスの亜種、ポイズンラプタスや、素早い剣技を繰り出すリザードマン、攻撃すると自爆して大ダメージを与えてくるロックボムなど、小型モンスターと言えど油断ならないものが揃っているが、アロウ達はそれらを危なげ無く捌きつつ、レッドワイバーンを探す。
「うーん、なかなか見つからないな……」
既にエリア全体の半分は見て回ったが、大型モンスターの姿は見当たらない。
「行き違っているのかもしれませんね」
ルナがそう言うように、つい先程に通過したばかりのエリアに大型モンスターが移動して、行き違いのループが発生している恐れがある。
大型モンスターを自動で探知するスキルもあるが、そうでない場合は自力で捕捉するしかない。
「ともかくは、まずは一周しましょ。単に奥にいるだけって可能性もあるし」
とはいえここで慌てて戻っても仕方無いため、このまま進むべきだと進言するジルダ。
すると、ピクりとフェルテの獣耳が反応し、即座に宝剣を鞘から抜き放った。
「気をつけろっ、上だ!」
上、と聞いて、アロウはフェルテの視線の先を見据えると、
真っ赤に燃える火球がまっすぐに降ってきていた。
「!?」
咄嗟に飛び下がって散開し、五人がいた地点に火球が着弾、爆発を巻き起こす。
爆煙が晴れたその先から舞い降りるのは、赤茶けた鱗に、雄々しく羽ばたく翼、その口蓋からは煙がもれている。
レッドワイバーン。
"大空の支配者"と呼ばれる赤き飛竜は、領域に踏み入ってきた闖入者に、業火の鉄槌を下すのだった。
アロウ、ルナ、カノラ、フェルテが出発準備を整えた頃、ジルダはコンソールを打ち込んでいた。
打ち込みに応じて、ジルダのミサイルポッドのハッチが開き、弾頭が組み込まれてからまたハッチが閉じられる。
「ジルダさん?何してるんですか?」
調子を確かめているのかと思ったカノラだが、ジルダはコンソールから目を離さないままに受け答えする。
「ミサイルの弾頭を切り替えているのよ。今回のレッドワイバーンは空を飛ぶ相手だから、近接信管と、散弾にするつもり」
「き、きんせつしんかん?さんだん?」
一体何の話をしているのか分からないのか、カノラは頭に疑問符を浮かべている。
「ようするに、ぶつけて爆破するんじゃなくて、ある程度相手との距離が縮まったら勝手に炸裂して、小さい弾が広範囲に拡散するミサイルってこと」
「え、えぇと……?」
「……見てたら分かるわ」
FPSやロボットモノの創作知識のないカノラは、「どうやらジルダが普段使うミサイルとは違う」ぐらいしか分からなかった。
ジルダの準備も終わったところで、アロウ達は拠点を出る。
麓周辺は森に近いため緑も多いが、山に近付くにつれて緑色は姿を消し、代わりに赤々とした溶岩の河がアロウ達を出迎えてくる。
山道の中は空洞のようになっており、溶岩が冷えて固まって地盤になった道に、そこかしこに溶岩がボコボコと音を立てている。
毒を吐き出すラプタスの亜種、ポイズンラプタスや、素早い剣技を繰り出すリザードマン、攻撃すると自爆して大ダメージを与えてくるロックボムなど、小型モンスターと言えど油断ならないものが揃っているが、アロウ達はそれらを危なげ無く捌きつつ、レッドワイバーンを探す。
「うーん、なかなか見つからないな……」
既にエリア全体の半分は見て回ったが、大型モンスターの姿は見当たらない。
「行き違っているのかもしれませんね」
ルナがそう言うように、つい先程に通過したばかりのエリアに大型モンスターが移動して、行き違いのループが発生している恐れがある。
大型モンスターを自動で探知するスキルもあるが、そうでない場合は自力で捕捉するしかない。
「ともかくは、まずは一周しましょ。単に奥にいるだけって可能性もあるし」
とはいえここで慌てて戻っても仕方無いため、このまま進むべきだと進言するジルダ。
すると、ピクりとフェルテの獣耳が反応し、即座に宝剣を鞘から抜き放った。
「気をつけろっ、上だ!」
上、と聞いて、アロウはフェルテの視線の先を見据えると、
真っ赤に燃える火球がまっすぐに降ってきていた。
「!?」
咄嗟に飛び下がって散開し、五人がいた地点に火球が着弾、爆発を巻き起こす。
爆煙が晴れたその先から舞い降りるのは、赤茶けた鱗に、雄々しく羽ばたく翼、その口蓋からは煙がもれている。
レッドワイバーン。
"大空の支配者"と呼ばれる赤き飛竜は、領域に踏み入ってきた闖入者に、業火の鉄槌を下すのだった。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる