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羽ばたきの時

104話 大空の支配者

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 火山の麓の丘に、プレイヤー達の拠点がある。

 アロウ、ルナ、カノラ、フェルテが出発準備を整えた頃、ジルダはコンソールを打ち込んでいた。
 打ち込みに応じて、ジルダのミサイルポッドのハッチが開き、弾頭が組み込まれてからまたハッチが閉じられる。

「ジルダさん?何してるんですか?」

 調子を確かめているのかと思ったカノラだが、ジルダはコンソールから目を離さないままに受け答えする。

「ミサイルの弾頭を切り替えているのよ。今回のレッドワイバーンは空を飛ぶ相手だから、近接信管と、散弾にするつもり」

「き、きんせつしんかん?さんだん?」

 一体何の話をしているのか分からないのか、カノラは頭に疑問符を浮かべている。

「ようするに、ぶつけて爆破するんじゃなくて、ある程度相手との距離が縮まったら勝手に炸裂して、小さい弾が広範囲に拡散するミサイルってこと」

「え、えぇと……?」

「……見てたら分かるわ」

 FPSやロボットモノの創作知識のないカノラは、「どうやらジルダが普段使うミサイルとは違う」ぐらいしか分からなかった。

 ジルダの準備も終わったところで、アロウ達は拠点を出る。



 麓周辺は森に近いため緑も多いが、山に近付くにつれて緑色は姿を消し、代わりに赤々とした溶岩の河がアロウ達を出迎えてくる。

 山道の中は空洞のようになっており、溶岩が冷えて固まって地盤になった道に、そこかしこに溶岩がボコボコと音を立てている。

 毒を吐き出すラプタスの亜種、ポイズンラプタスや、素早い剣技を繰り出すリザードマン、攻撃すると自爆して大ダメージを与えてくるロックボムなど、小型モンスターと言えど油断ならないものが揃っているが、アロウ達はそれらを危なげ無く捌きつつ、レッドワイバーンを探す。

「うーん、なかなか見つからないな……」

 既にエリア全体の半分は見て回ったが、大型モンスターの姿は見当たらない。

「行き違っているのかもしれませんね」

 ルナがそう言うように、つい先程に通過したばかりのエリアに大型モンスターが移動して、行き違いのループが発生している恐れがある。
 大型モンスターを自動で探知するスキルもあるが、そうでない場合は自力で捕捉するしかない。

「ともかくは、まずは一周しましょ。単に奥にいるだけって可能性もあるし」

 とはいえここで慌てて戻っても仕方無いため、このまま進むべきだと進言するジルダ。

 すると、ピクりとフェルテの獣耳が反応し、即座に宝剣を鞘から抜き放った。

「気をつけろっ、上だ!」

 上、と聞いて、アロウはフェルテの視線の先を見据えると、

 真っ赤に燃える火球がまっすぐに降ってきていた。

「!?」

 咄嗟に飛び下がって散開し、五人がいた地点に火球が着弾、爆発を巻き起こす。
 爆煙が晴れたその先から舞い降りるのは、赤茶けた鱗に、雄々しく羽ばたく翼、その口蓋からは煙がもれている。

 レッドワイバーン。

 "大空の支配者"と呼ばれる赤き飛竜は、領域に踏み入ってきた闖入者に、業火の鉄槌を下すのだった。
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