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羽ばたきの時
103話 残された時間
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「――っていうことが、この間あったんですよ」
それからまた数日後に、MAFにログインしてきたアロウ達は、ジルダに先日の件を話していた。
「ふぅん、みんな割と近いところに住んでるのね」
酒場の席にいたジルダは、アルコールを片手に (当然酔ったりはしない)何気なく頷く。
「ジルダさんも、意外と私達の近くに住んでたりしませんか?」
楓(メイプル)がそうだったなら、もしやジルダも……とルナは言う。
同じ学校内ならまだしも、距離のある学校の生徒と偶然繋がっていた、という話も珍しくはないが、滅多にあるものでもない。
「いや、それは無いわ。あたしが住んでる地元とじゃ距離があるもの」
ジルダのリアルの人が住んでいる地点は、アロウ達にとっては新幹線を利用しないと何時間もかかるような距離であり、気軽に会えるような距離ではない。
「新幹線が必要な距離って結構な距離ですね……」
アロウは眉の端を落とす。
ただ新幹線に乗るだけでも、彼ら学生にとっては大金と言っても過言ではない金額が必要になる。
「ま、気が向いたらオフ会ぐらいは参加してもいいけど」
それより、とジルダは辺りを見回す。
アロウ、ルナ、カノラ、フェルテはいるのだが、メイプルはリアルの方で部活動に勤しんでいるらしく、今日はログインしないと言う。
「今日はメイプルがいないけど、クエストはどうするのかしら?」
「あ、俺から意見、いいですか?」
そこへアロウが挙手する。
「そろそろ、空戦タイプのマギアアームドが本格的に作れそうなんで、飛竜系のクエストに行きたいんです」
「飛竜系のクエストね。まぁ、好きに任せるわ」
「ありがとうございます。じゃぁ、クエストリスト、見に行きますか」
アロウとルナ、カノラは席を立ってクエストカウンターへ向かう。
しかし、フェルテだけはジュースを前にして腕を組んで「ふむ……」と唸っている。
「ん、あんたはいいの?フェルテ」
「我は元からアロウ達に任せるつもりだ。"勇"の儀を行うための準備だと思えば良い」
「にしては、浮かない顔してるじゃない」
「………………うむ」
フェルテは話すべきか否かと躊躇い、口を開いた。
「……残された時間が、あまり無いのかもしれぬ」
「残された時間?」
当然、何のことかとジルダは訊き返す。
「このところ、創造神の力の弱体化が目立って来ているのでな。出来るなら、早く"勇"の儀を終わらせたいところなのだ」
「あぁー、そのことね……」
なんだその設定か、とジルダは心で溜息をつく。
残された時間は少ない、一刻の猶予もない、というセリフはRPGでもよくあるが、実際にはゆっくり寄り道しても全く問題ないので、その類だろう。
もう少し待っていると、アロウ達三人がクエストデータを片手に席に戻って来た。
今回のクエストは、MAFを代表する大型モンスター『レッドワイバーン』の討伐クエストだ。
それからまた数日後に、MAFにログインしてきたアロウ達は、ジルダに先日の件を話していた。
「ふぅん、みんな割と近いところに住んでるのね」
酒場の席にいたジルダは、アルコールを片手に (当然酔ったりはしない)何気なく頷く。
「ジルダさんも、意外と私達の近くに住んでたりしませんか?」
楓(メイプル)がそうだったなら、もしやジルダも……とルナは言う。
同じ学校内ならまだしも、距離のある学校の生徒と偶然繋がっていた、という話も珍しくはないが、滅多にあるものでもない。
「いや、それは無いわ。あたしが住んでる地元とじゃ距離があるもの」
ジルダのリアルの人が住んでいる地点は、アロウ達にとっては新幹線を利用しないと何時間もかかるような距離であり、気軽に会えるような距離ではない。
「新幹線が必要な距離って結構な距離ですね……」
アロウは眉の端を落とす。
ただ新幹線に乗るだけでも、彼ら学生にとっては大金と言っても過言ではない金額が必要になる。
「ま、気が向いたらオフ会ぐらいは参加してもいいけど」
それより、とジルダは辺りを見回す。
アロウ、ルナ、カノラ、フェルテはいるのだが、メイプルはリアルの方で部活動に勤しんでいるらしく、今日はログインしないと言う。
「今日はメイプルがいないけど、クエストはどうするのかしら?」
「あ、俺から意見、いいですか?」
そこへアロウが挙手する。
「そろそろ、空戦タイプのマギアアームドが本格的に作れそうなんで、飛竜系のクエストに行きたいんです」
「飛竜系のクエストね。まぁ、好きに任せるわ」
「ありがとうございます。じゃぁ、クエストリスト、見に行きますか」
アロウとルナ、カノラは席を立ってクエストカウンターへ向かう。
しかし、フェルテだけはジュースを前にして腕を組んで「ふむ……」と唸っている。
「ん、あんたはいいの?フェルテ」
「我は元からアロウ達に任せるつもりだ。"勇"の儀を行うための準備だと思えば良い」
「にしては、浮かない顔してるじゃない」
「………………うむ」
フェルテは話すべきか否かと躊躇い、口を開いた。
「……残された時間が、あまり無いのかもしれぬ」
「残された時間?」
当然、何のことかとジルダは訊き返す。
「このところ、創造神の力の弱体化が目立って来ているのでな。出来るなら、早く"勇"の儀を終わらせたいところなのだ」
「あぁー、そのことね……」
なんだその設定か、とジルダは心で溜息をつく。
残された時間は少ない、一刻の猶予もない、というセリフはRPGでもよくあるが、実際にはゆっくり寄り道しても全く問題ないので、その類だろう。
もう少し待っていると、アロウ達三人がクエストデータを片手に席に戻って来た。
今回のクエストは、MAFを代表する大型モンスター『レッドワイバーン』の討伐クエストだ。
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