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羽ばたきの時
101話 俺は多分普通オブ普通
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結月の案内で、駅から近い地点にあるショッピングモールへ。
モールの開館時間に合わせて待ち合わせしていたので、出入り口で待つこともなく、三人はすんなりと入店する。
「女性層向けのお店が一階に集中しているので、織原さんは最初、退屈かもしれませんけど……」
「うぅん、大丈夫。俺のことは気にしなくていいから」
「織原くんは、こういう時は気長に待ってくれるの。だから、ついついそれに甘えて待たせちゃうんだけど……」
男子である徹矢のことも考慮する結月に、気遣いは無用と言う徹矢、そんな徹矢のスタンスに慣れている菜々花。
「菜々花さんって、織原さんと二人で出掛けること、よくあるんですか?」
「うん。中学の頃から、何回かくらい」
それがどうかしたのかと小首を傾げる菜々花に、結月は少しだけ迷うような間を置いてから、
「その……やっぱり、織原さんと菜々花さんって、恋人同士だったりするんですか?」
そっと、爆弾発言を転がす。
「べふっ!?」
爆弾発言の爆風をもろに受けて奇声を上げる菜々花。
「……べふって、なんだ?」
発言の内容より、菜々花の奇声の意味を冷静に考察しようとする徹矢。
「ちちっ、違うよっ!?そそそのっ、わたしと織原くんじゃ釣り合って無いというかっ、恐れ多いというか……!」
「そ、そんなに慌てなくても……」
顔を真っ赤にしながら慌てふためく菜々花に、結月は困ったように苦笑する。
「うんまぁ……釣り合って無いのは分かるよ?水城さんは綺麗で可愛いけど、俺は多分普通オブ普通というか」
そんな菜々花の熱した頬の内側に油をぶちまけるようなことを言う徹矢。
「やっ、そそ、そういうんじゃなくて、わたしの方が織原くんに釣り合って無いし……!」
「え、えぇと、何でしょうこの、おノロケっぷりは……?」
……少なくとも、開館直後のモールの出入り口付近で繰り広げていいやり取りでは無いだろう。
結論として、徹矢と菜々花はお互いに「付き合っていない」と言う共通認識であり (何故か菜々花はちょっと残念そうな顔をするのだが、徹矢はそれに気付いていない)、結月もそれに理解と納得を示したところで、モールに入っていく。
結月の懸念通り、まずは一階のブティック等から見て回ることになり、女子二人があれもこれもと服や靴、アクセサリを楽しそうに物色している中、徹矢だけはちょっと手持ち無沙汰だ。
「(二人とも楽しそうだなぁ)」
完全に保護者の目線である。
けれども、いかに待ち慣れている徹矢と言えど、さすがに退屈さは隠しきれそうにない。
菜々花一人の時でさえそれなりに時間がかかるのに、加えて結月と楽しくお喋りしながらともなれば……
「……ん?」
ふと、店の外に視線を向けると。
通路の端の方に、一組の男女。徹矢から見てやや斜め、男の背と、女――と言っても、結月や菜々花と同じくらいの女学生か、活発そうなショートカットが可愛らしい――の顔が見えるような位置取り。
男の方は無駄に金属品で着飾っており、控え目に言っても好青年と呼べるような出で立ちではない。
一方の少女の方は、どこか嫌そうな様子であり、しかし強く出ることもしないのか、遠慮がちに遠慮したがっている。
「(ナンパか。男の方は見る目はあるけど、察しは悪そうだな……)」
こっちに来たら二人を守らないとな、と思っている徹矢だが、
なかなかナンパが終わりそうにない、男の方も相当しつこいらしい。
こういうのに首を突っ込むのもなぁ、と思いつつも、既に徹矢の足はそこへ向いていた。
モールの開館時間に合わせて待ち合わせしていたので、出入り口で待つこともなく、三人はすんなりと入店する。
「女性層向けのお店が一階に集中しているので、織原さんは最初、退屈かもしれませんけど……」
「うぅん、大丈夫。俺のことは気にしなくていいから」
「織原くんは、こういう時は気長に待ってくれるの。だから、ついついそれに甘えて待たせちゃうんだけど……」
男子である徹矢のことも考慮する結月に、気遣いは無用と言う徹矢、そんな徹矢のスタンスに慣れている菜々花。
「菜々花さんって、織原さんと二人で出掛けること、よくあるんですか?」
「うん。中学の頃から、何回かくらい」
それがどうかしたのかと小首を傾げる菜々花に、結月は少しだけ迷うような間を置いてから、
「その……やっぱり、織原さんと菜々花さんって、恋人同士だったりするんですか?」
そっと、爆弾発言を転がす。
「べふっ!?」
爆弾発言の爆風をもろに受けて奇声を上げる菜々花。
「……べふって、なんだ?」
発言の内容より、菜々花の奇声の意味を冷静に考察しようとする徹矢。
「ちちっ、違うよっ!?そそそのっ、わたしと織原くんじゃ釣り合って無いというかっ、恐れ多いというか……!」
「そ、そんなに慌てなくても……」
顔を真っ赤にしながら慌てふためく菜々花に、結月は困ったように苦笑する。
「うんまぁ……釣り合って無いのは分かるよ?水城さんは綺麗で可愛いけど、俺は多分普通オブ普通というか」
そんな菜々花の熱した頬の内側に油をぶちまけるようなことを言う徹矢。
「やっ、そそ、そういうんじゃなくて、わたしの方が織原くんに釣り合って無いし……!」
「え、えぇと、何でしょうこの、おノロケっぷりは……?」
……少なくとも、開館直後のモールの出入り口付近で繰り広げていいやり取りでは無いだろう。
結論として、徹矢と菜々花はお互いに「付き合っていない」と言う共通認識であり (何故か菜々花はちょっと残念そうな顔をするのだが、徹矢はそれに気付いていない)、結月もそれに理解と納得を示したところで、モールに入っていく。
結月の懸念通り、まずは一階のブティック等から見て回ることになり、女子二人があれもこれもと服や靴、アクセサリを楽しそうに物色している中、徹矢だけはちょっと手持ち無沙汰だ。
「(二人とも楽しそうだなぁ)」
完全に保護者の目線である。
けれども、いかに待ち慣れている徹矢と言えど、さすがに退屈さは隠しきれそうにない。
菜々花一人の時でさえそれなりに時間がかかるのに、加えて結月と楽しくお喋りしながらともなれば……
「……ん?」
ふと、店の外に視線を向けると。
通路の端の方に、一組の男女。徹矢から見てやや斜め、男の背と、女――と言っても、結月や菜々花と同じくらいの女学生か、活発そうなショートカットが可愛らしい――の顔が見えるような位置取り。
男の方は無駄に金属品で着飾っており、控え目に言っても好青年と呼べるような出で立ちではない。
一方の少女の方は、どこか嫌そうな様子であり、しかし強く出ることもしないのか、遠慮がちに遠慮したがっている。
「(ナンパか。男の方は見る目はあるけど、察しは悪そうだな……)」
こっちに来たら二人を守らないとな、と思っている徹矢だが、
なかなかナンパが終わりそうにない、男の方も相当しつこいらしい。
こういうのに首を突っ込むのもなぁ、と思いつつも、既に徹矢の足はそこへ向いていた。
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