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勇気ある者達

98話 智の儀

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 デゼルト砂漠の遺跡の時と同じく、フェルテは祭壇に立つ。
 今回が初めての遺跡攻略であるジルダは、これから何が始まるのかとフェルテを興味深げに見やる。

 フェルテが静かに目を閉じる。



『――いにしえより伝承されし約定の元、我、今ここに"智"の儀を始めん』



 最近になって、フェルテが居丈高で高圧的だけでなく、どこか抜けている面もあって愛嬌があるように思えるようになっていたアロウ達だが、この時ばかりはフェルテが神々しい存在であることを再認識させられる。




『叡を与えし"智"よ、我が道を導く標となれ――!!』



 そして、祭壇に眩いばかりの青い光が満ち溢れ、フェルテの身を包み込む。
 やはりその眩しさに、アロウ達は思わず目を覆う。

 光が消えた頃を見計らって目を開くと、

 ――そこには、赤いフェルテが今度は"蒼"くなっていた。

 儀を終えたようで、フェルテはアロウ達に向き直る。

「うむ。皆のおかげで"智"の儀を終えることが出来た。礼を言わせてくれ」

「…………どゆこと?」

 フェルテの仕組み (?)を知らないジルダは、何故彼女の髪や衣服の色が変わったのか測りかねていたので、アロウが説明する。

「この儀式のイベントをクリアすると、フェルテは色が変わって強化されるみたいなんです。俺達が最初に、デゼルト砂漠の遺跡を攻略した時、フェルテは真っ白だったんですよ」

「ふぅん……NPCのストーリーイベントの割には、随分本格的なのね」

 半信半疑とまではいかずとも、とりあえず納得はしてみせるジルダ。

「これで残る儀はひとつ。"勇"の儀のみだ」

 "力"と"智"の儀を終えることが出来たので、必要な儀は残り一つ。

 恐らくは三つ目の遺跡攻略も、一筋縄ではいかないだろう。

「ねぇフェルテちゃん、全部の儀式が終わったら、何が起こるの?」

 ふとカノラが、フェルテの最終目標を訊ねる。

「ん?前に……あぁそうか、あの時はアロウとルナしか聞いていなかったな」

 中間テストが終わった直後のプレイをした日、フェルテはアロウとルナに自分の正体をある程度明かした。
 その時と同じ内容を、カノラ、メイプル、ジルダにも、簡単に話した。
 フェルテが、創造神からの使いであること。
 創造神から与えられた力を返さずに持ったまま、止まった刻の中にいつまでもい続ける者を討ち、その力を創造神に返すこと。
 各地で儀を迎えているのは、戦うための力を得るため。

「「「………………」」」

 それを聞いて、やはり三人ともルナと同じような顔になった。
 言葉にせずとも、何を思っているのかがありありと分かるようだ。
 
「話はもう良いか?では、あそこから帰還するとしよう」

 フェルテは、祭壇の向こう側へ繋がっている転移装置のある小部屋を指す。
 デゼルト砂漠の時と同じなら、入口付近にまでワープされるはずだ。

 アロウ、カノラ、メイプル、ジルダ、フェルテの順に転移装置に乗り込み――シュンッ、という音ともに消える。
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