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勇気ある者達
85話 フェルテの勧誘
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アロウ達は、両手を上げたまま微動だにしないジルダを囲む。
これから寄って集って嬲るのではない、今回のことを問い質すためだ。
「貴様、ジルダと言ったか。何故そうも簡単に降参した?」
最初にフェルテがそう訊ねた。彼女が連れ去られたのは、その身柄をアロウ達もに売ってもらうための脅迫材料にするためだということは、相手のリーダーがそう言っていた。
対するジルダは、メイプルのスパイラルフィンの切っ先を突き付けられながらも淡々と吐き捨てるように答える。
「義理立てする必要が無いからよ」
「義理立て?」
それは何のことかと、今度はアロウが訊ねる。
「あんな奴らの仲間と思われるなんて、吐き気がするわ」
つまりジルダは、彼らを仲間だと思っていないということだ。
「あたしは奴らの言いなりになっていた、と言えばいいかしら」
「言いなりって……脅されていたってことですか?」
ルナは、ジルダの言葉をそう解釈した。
「そう。訳あって、そこのNPCを捕まえるなんて誘拐犯の真似事をさせられたのよ」
そう言いながらジルダはフェルテに目を向ける。
「脅されてたって、それって規約違反ですよね?運営に通報しないんですか?」
MAFの運営側には、悪質行為や違法行為をするプレイヤーに対して、一方的にアクセス権を凍結させる権限がある。
それを理由にしないのかとカノラは言うが。
「プレイヤー同士のいざこざには、基本的に関与しないのが運営のやり方よ。連中のやり口は、その運営に目を付けられないグレーラインだもの。通報したところで、『プレイヤー同士の問題には関与出来ません』と返されるのがオチ。それに関与するなら、あたしも連中も一纏めにして垢バンよ」
でも、とジルダは自棄になったようにその場に座り込む。
「もう、いいわ。……疲れちゃった」
プレイヤー同士の諍いが、人間関係に軋轢を生じさせたり、精神的苦痛や負担になる。
彼女はそれに翻弄されてきて、もう限界なのかもしれない。
「抵抗しないわ。さっさとプレイヤーキルして」
「MAFを、やめるんですか?」
諦めたジルダに、アロウはそう声をかけた。
「そうよ。仲間からも必要とされないし、傭兵プレイでも汚れ仕事ばかりさせられて……楽しくないのよ」
首を斬れと言うように頭をメイプルに差し出すジルダ。
「…………」
スパイラルフィンを向けたまま動かないメイプル。
言う通りに、ひと思いにプレイヤーキルしてやるべきなのか。
「待て、メイプル」
そこで待ったをかけたのは、フェルテだった。
「ジルダとやら。我らの戦いに力を貸す気は無いか?」
「…………は?」
「我らに気取られずに忍び寄る身のこなし、正確に目標を麻痺させた腕の冴え、そしてその潔さ。ただ捨てるには惜しい。カノラよ、汝はそうは思わなかったか?」
不意にフェルテは、カノラに同意を求めた。
「え?えぇ、と……フェルテちゃんを拐ったのは良くないことだけど、メイプルさんの攻撃にもすぐに対応してたし、強い人なのかなぁと……」
困惑しつつも、カノラは率直に答える。
突如として勧誘を始めたフェルテに、ジルダどころか、アロウ達でさえ目を丸くする。
カノラの言葉を間に立ててから、フェルテは"スカウト"を続ける。
「我らはより強き力を欲している。それこそ、我らには無い力をな。あのような下郎の輩も、貴様を必要とせぬ者どもも、"宝の持ち腐れ"という言葉を知らぬようだしな」
ジルダは元々は別のパーティに所属していたようだが、必要とされなくなって追い出され、傭兵としてフリーでプレイしていたところで、汚れ仕事のようなことをやらされ続けていたらしい。
だが、それももう今日で終わりにしていいのだと、フェルテは言う。
これから寄って集って嬲るのではない、今回のことを問い質すためだ。
「貴様、ジルダと言ったか。何故そうも簡単に降参した?」
最初にフェルテがそう訊ねた。彼女が連れ去られたのは、その身柄をアロウ達もに売ってもらうための脅迫材料にするためだということは、相手のリーダーがそう言っていた。
対するジルダは、メイプルのスパイラルフィンの切っ先を突き付けられながらも淡々と吐き捨てるように答える。
「義理立てする必要が無いからよ」
「義理立て?」
それは何のことかと、今度はアロウが訊ねる。
「あんな奴らの仲間と思われるなんて、吐き気がするわ」
つまりジルダは、彼らを仲間だと思っていないということだ。
「あたしは奴らの言いなりになっていた、と言えばいいかしら」
「言いなりって……脅されていたってことですか?」
ルナは、ジルダの言葉をそう解釈した。
「そう。訳あって、そこのNPCを捕まえるなんて誘拐犯の真似事をさせられたのよ」
そう言いながらジルダはフェルテに目を向ける。
「脅されてたって、それって規約違反ですよね?運営に通報しないんですか?」
MAFの運営側には、悪質行為や違法行為をするプレイヤーに対して、一方的にアクセス権を凍結させる権限がある。
それを理由にしないのかとカノラは言うが。
「プレイヤー同士のいざこざには、基本的に関与しないのが運営のやり方よ。連中のやり口は、その運営に目を付けられないグレーラインだもの。通報したところで、『プレイヤー同士の問題には関与出来ません』と返されるのがオチ。それに関与するなら、あたしも連中も一纏めにして垢バンよ」
でも、とジルダは自棄になったようにその場に座り込む。
「もう、いいわ。……疲れちゃった」
プレイヤー同士の諍いが、人間関係に軋轢を生じさせたり、精神的苦痛や負担になる。
彼女はそれに翻弄されてきて、もう限界なのかもしれない。
「抵抗しないわ。さっさとプレイヤーキルして」
「MAFを、やめるんですか?」
諦めたジルダに、アロウはそう声をかけた。
「そうよ。仲間からも必要とされないし、傭兵プレイでも汚れ仕事ばかりさせられて……楽しくないのよ」
首を斬れと言うように頭をメイプルに差し出すジルダ。
「…………」
スパイラルフィンを向けたまま動かないメイプル。
言う通りに、ひと思いにプレイヤーキルしてやるべきなのか。
「待て、メイプル」
そこで待ったをかけたのは、フェルテだった。
「ジルダとやら。我らの戦いに力を貸す気は無いか?」
「…………は?」
「我らに気取られずに忍び寄る身のこなし、正確に目標を麻痺させた腕の冴え、そしてその潔さ。ただ捨てるには惜しい。カノラよ、汝はそうは思わなかったか?」
不意にフェルテは、カノラに同意を求めた。
「え?えぇ、と……フェルテちゃんを拐ったのは良くないことだけど、メイプルさんの攻撃にもすぐに対応してたし、強い人なのかなぁと……」
困惑しつつも、カノラは率直に答える。
突如として勧誘を始めたフェルテに、ジルダどころか、アロウ達でさえ目を丸くする。
カノラの言葉を間に立ててから、フェルテは"スカウト"を続ける。
「我らはより強き力を欲している。それこそ、我らには無い力をな。あのような下郎の輩も、貴様を必要とせぬ者どもも、"宝の持ち腐れ"という言葉を知らぬようだしな」
ジルダは元々は別のパーティに所属していたようだが、必要とされなくなって追い出され、傭兵としてフリーでプレイしていたところで、汚れ仕事のようなことをやらされ続けていたらしい。
だが、それももう今日で終わりにしていいのだと、フェルテは言う。
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