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勇気ある者達

81話 刺客は死角から襲い来る

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 食事を邪魔された挙げ句ファイアボールをぶつけられて転倒し、袋叩きも同然にされたスパイクタートルだが、ようやく起き上がり、脚を引きずりながらも海中に飛び込み、沖合のエリアへ逃れていく。

「よーし、あと少しだ……」

 最後まで油断せずに行こう、とアロウはすぐに海中へ飛び込んでスパイクタートルを追う。
 メイプル、ルナも続いて海中へ飛び込み、カノラも続こうとするが、もう一度周囲を見渡す。

「……やっぱり気のせいだったのかな」

 彼女が先程から感じている、視線らしき気配。
 何かが近くにいるはずなのに、それらしい姿は見えない。

「何をしておるのだカノラ。行くぞ」

 フェルテに呼ばれて、カノラはそちらに向き直り、三人の後を追おうとするが、

 ヒュッ、と何かが空を切る音が聞え――突然、左脇腹に何かが突き刺さった。

「はぅっ!?え、ぁっ、やっ、な、にこ、……!?」

 突然の痛みと同時に、全身が痺れるような感覚がカノラを痙攣させ、糸を切られた人形のように倒れてしまう。
 同時に、カノラのコンソールにポップアップが表示される。

【状態異常:麻痺】

 身体が痺れて動けない状態です。
 一定時間が経つか、攻撃を受けて吹き飛ばされるまで、解除されません。

「カノラ!どうし……かはっ、ぁっ……!?」

 突如としてカノラが動けなくなってしまったことに、フェルテはどうしたのかと駆け寄ろうとし、フェルテの背中にも何かが突き刺さり――同じように身体が麻痺し、倒れてしまった。

 カノラとフェルテが動けなくなったところを、物陰から一人のプレイヤーが現れた。
 先程からアロウ達を遠巻きから見ていた、黒髪の女性だ。

「……悪く思わないで」

 黒髪の女性は、動けないフェルテを拘束して抱き上げると、肩に担いでさっさと立ち去っていった。

「……!?~~~~~っ!」

 声を上げようにも声帯すら麻痺しているのか、カノラは身体を痙攣させるばかりで、何も喋れない。
 フェルテが連れ去られるのを、見ているしか出来なかった。



「……?」 

 スパイクタートルを追撃しようとしていたアロウは、ふとその足を止める。
 ルナとメイプルは、急に止まった彼を見て、自分達もスラスターを切って減速する。
 水中では喋ることが出来ないので、アロウは人差し指を頭上へ向けて指差し、水面に上がるよう伝える。
 水面から顔を出して、喋れるようになってから、アロウは口を開く。

「カノラさんとフェルテはどうしたんだ?」

「ついてきてませんね……?」

 二人が続いてきていないことを疑問に思い、ルナはコンソールからマップを開く。

 見れば、ルナは先程の海岸のエリアから動いておらず、フェルテに至っては全く違うエリアにいる。

「フェルテちゃん、もしかして迷子になってたり?」

 メイプルは半ば冗談でそう言ったが、マップや仲間の現在地が分かるなら、迷うこともないはずだが。

 すると、突然アロウのコンソールに通話が着信する。
 カノラからだ。

「カノラさん、どうし……」

『アロウくんっ!フェルテちゃんがっ、連れ去られちゃったのっ!』

「「「!?」」」
 
 フェルテが連れ去られた。
 慌てているような怯えているようなカノラの声に、三人は驚愕する。
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