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勇気ある者達

68話 データの破損

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 海岸周りの探索とオークの討伐を終えると、次は洞窟内だ。

 洞窟内は幾筋にも分岐した水路で構成されており、恐らくは水中でしか通れない場所も多いだろう。
 陸戦タイプや空戦タイプで水中戦を行うプレイヤーもいるため、水陸両用タイプで無ければまともに戦えない、というわけではない。
 小型モンスターもオークだけでなく、マーマンやアクアスライムと言った水棲種が多く見られる。

「先程は聞きそびれたのだが、フェルテ君はNPCと言っていたね?」

 リックは、アロウにそう訊ね直した。
 ついさっきの問答の続きのようだ。

「あ、はい。多分ですけど……」

「多分?」

 何故そうだと言い切れないのかと、リックは仮面越しにアロウを訝しむ。
 不意に、ルナはアロウに近付いて、彼に耳打ちする。

「アロウさん、言ってもいいんですか?」

「うーん、ダメってことは無いと思うけどな……」

 第三者に、フェルテとはどのような経緯があったのかを話していいのかと迷う二人。
 そこへ。

「二人とも何をコソコソしているのだ。我のことなら気にするな、話せるように話すがいい」

 堂々と、自分のことを話しても良いというフェルテ。
 確かにリックが悪質なプレイヤーで無ければ、フェルテに危害を加えないだろうし、彼女はNPCですと言えば信じてくれるだろう。

「え?まぁ、フェルテがいいって言うなら……」

 本人からの承諾 (?)を得て、アロウは自分が知る限りの範囲で、フェルテとの出会いをリックに話す。

「なるほど。RPGのように、特定のフィールドにある遺跡の最奥部を目指し、そこで儀式を行うと。……しかし、疑問も残るな」

「疑問、ですか?」

「デゼルト砂漠の遺跡は私も攻略したことがあり、そこのボスであるボーンナイトも撃破した。その後で、遺跡の内部も隅々まで探索したものだが……祭壇の間らしきものはどこにも見当たらなかった」

「え、ボーンナイトを倒した時、その奥に続く扉があったんですけど……」

「……では、私の見落としだろうか?」

「かも、しれません?」

 とはいえ、アロウ達から見ても、祭壇の間へ続く扉は分かりやすい位置にあったのだが。

「分かった。また後日にもう一度遺跡を探索してみ……ん?」

 ふと、リックは足を止めた。

「リックさん?どうかしましたか?」 

 ルナは、何故足を止めたのかとリックの顔を見やる。やはり仮面のせいでその表情は見えないが。
 少し待っていてくれ、とリックは小走りでそこへ駆け寄る。

 彼が向かった方向には、形の崩れたテクスチャがそこに漂っている。

「これは……」

 それを見ているリックに、アロウ達も近付く。

「リックさん、それは?」

「……どうやらこれは、データが破損しているな」

「データの破損?」

 データの破損。
 それは、通常では想定されていない負荷が掛かったか、内部情報の改竄が施されたか。

「MAFは不正なツールへの対策などは、特に厳しく行われているはずだが……」

 こういったオンラインゲームでは、往々にして『チート』などが横行しがちであり、MAFもそれは例外ではない。
 だからこそMAFはリアルマネーを使った課金や、外部からの持ち込んだデータなどには、何段階ものの認証や、時には人の手と目が加わることで、極めて厳重に管理される。
 故に、MAFではチートや不正ツールを使った"ヌルゲー"は出来ないとされているのだが。

 だと、すれば。
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