54 / 159
謎の少女
53話 恐れずに進め
しおりを挟む
「意外とあっさりいけたね」
メイプルは拍子抜けしたように一息つく。
「まぁ、5対1でしたし、多勢に無勢ですかね」
アロウも、以前に随分苦戦したのが嘘のような幕引きに、呆気を取られている。
「気を抜くのはまだ早いぞ、この先に待つのは祭壇のガーディアン。同じように多勢に無勢とはいかぬだろう」
宝剣を鞘に納めながら、フェルテは気を引き締める。
「消耗も大してしてませんし、このまま進んでも問題無さそうですね」
ボーンナイト戦で少なからず消耗するだろうと見越していたルナだが、それは取り越し苦労で済んだようだ。
とりあえずは、フェルテ以外の四人はボーンナイトが残した素材アイテムを拾い、戦利品のサーベルはアロウが確保する。
ボーンナイトが倒されたことによるものか、部屋の奥の隠し扉が開かれ、アロウ達は先に進む。
――<=\ ×m=%*<○――
遺跡の奥部ゆえか、元より薄暗い遺跡内部がより暗くなり、どこか冷ややかさを感じる。
加えて、崩れた石柱や雑草が生え放題になっている石床、風化したような石像が、よりここが寂れた場所であることを思わせる。
「何か、先程までとは雰囲気が違いますね」
ルナは緊張感を滾らせつつ、いつでもエナジーライフルを撃てるよう身構えている。
もう少し進むと、ふと開けた場所へと出る。
周りには、棺のようなものがそこかしこに立ち並び、まるで霊安室のように思える――が、途端に棺が音を立てて、その蓋が開けられる。
「これは、罠か!」
アロウは事態の把握を急ぐ。
すると、周囲の棺の蓋が次々に開かれ、その中から辛うじて人としての原型を残したゾンビらしきエネミーが現れる。
『タチサレ……タチサレ……』
『ヒラクナ……ヒライテハ、ナラヌ……』
口々に「立ち去れ」「開くな」などとうわ言のように繰り返しながらも迫りくるゾンビ達。
アロウ達は背中合わせに立ち、互いに背を向け合う。
「フン……過去に踊らされているだけの屍どもが。何にせよ、我の邪魔をするならば容赦はせん」
フェルテはそう吐き捨てると、宝剣を抜いて詠唱し、赤色の魔法陣を顕現する。
「――撃ち抜け火炎よ――『ファイアボール』!」
宝剣の切っ先をゾンビの群れに向けると火球が放たれ、複数固まっていたゾンビ達を焼き尽くす。
『ガ ア ア ア ア ア ……』
『タチサレ……タチ、サレ!』
『タチサレ!』『タチサレ!』『タチサレ!』
仲間を焼かれたためか、ゾンビ達は声を荒らげながらもアロウ達に襲い掛かる。
「撃て!撃ちまくるんだ!」
アロウが率先してエナジーライフルを連射してゾンビ達を撃ち抜き、ルナはすぐに続き、カノラもゾンビ達の異様さに怖がりながらもライトサブマシンガンを連射する。
射撃武器を持たないメイプルに近付いたゾンビはラプタスクロウズで斬り裂かれ、蹴り飛ばされ、フェルテもファイアボールを連発する。
一分ほどそれが続くと、ようやくゾンビ達は沈黙する。
「……なんか、別のゲームをやってるみたいだ」
周囲に動けるゾンビがいないかを確かめつつ、アロウはそう呟く。
MAFがいかにリアルさを追求しているとはいえ、対象年齢十五歳以上の年齢制限を逸脱しているように思える。
「行くぞ。この先だ」
NPC故か、何も思うことなく先へ進もうとするフェルテ。
得体の知れない不気味さを覚えながらも、アロウ達も続く。
――倒したことで消失するはずのゾンビが、何故かそのまま残っていることには、気付いていない。
メイプルは拍子抜けしたように一息つく。
「まぁ、5対1でしたし、多勢に無勢ですかね」
アロウも、以前に随分苦戦したのが嘘のような幕引きに、呆気を取られている。
「気を抜くのはまだ早いぞ、この先に待つのは祭壇のガーディアン。同じように多勢に無勢とはいかぬだろう」
宝剣を鞘に納めながら、フェルテは気を引き締める。
「消耗も大してしてませんし、このまま進んでも問題無さそうですね」
ボーンナイト戦で少なからず消耗するだろうと見越していたルナだが、それは取り越し苦労で済んだようだ。
とりあえずは、フェルテ以外の四人はボーンナイトが残した素材アイテムを拾い、戦利品のサーベルはアロウが確保する。
ボーンナイトが倒されたことによるものか、部屋の奥の隠し扉が開かれ、アロウ達は先に進む。
――<=\ ×m=%*<○――
遺跡の奥部ゆえか、元より薄暗い遺跡内部がより暗くなり、どこか冷ややかさを感じる。
加えて、崩れた石柱や雑草が生え放題になっている石床、風化したような石像が、よりここが寂れた場所であることを思わせる。
「何か、先程までとは雰囲気が違いますね」
ルナは緊張感を滾らせつつ、いつでもエナジーライフルを撃てるよう身構えている。
もう少し進むと、ふと開けた場所へと出る。
周りには、棺のようなものがそこかしこに立ち並び、まるで霊安室のように思える――が、途端に棺が音を立てて、その蓋が開けられる。
「これは、罠か!」
アロウは事態の把握を急ぐ。
すると、周囲の棺の蓋が次々に開かれ、その中から辛うじて人としての原型を残したゾンビらしきエネミーが現れる。
『タチサレ……タチサレ……』
『ヒラクナ……ヒライテハ、ナラヌ……』
口々に「立ち去れ」「開くな」などとうわ言のように繰り返しながらも迫りくるゾンビ達。
アロウ達は背中合わせに立ち、互いに背を向け合う。
「フン……過去に踊らされているだけの屍どもが。何にせよ、我の邪魔をするならば容赦はせん」
フェルテはそう吐き捨てると、宝剣を抜いて詠唱し、赤色の魔法陣を顕現する。
「――撃ち抜け火炎よ――『ファイアボール』!」
宝剣の切っ先をゾンビの群れに向けると火球が放たれ、複数固まっていたゾンビ達を焼き尽くす。
『ガ ア ア ア ア ア ……』
『タチサレ……タチ、サレ!』
『タチサレ!』『タチサレ!』『タチサレ!』
仲間を焼かれたためか、ゾンビ達は声を荒らげながらもアロウ達に襲い掛かる。
「撃て!撃ちまくるんだ!」
アロウが率先してエナジーライフルを連射してゾンビ達を撃ち抜き、ルナはすぐに続き、カノラもゾンビ達の異様さに怖がりながらもライトサブマシンガンを連射する。
射撃武器を持たないメイプルに近付いたゾンビはラプタスクロウズで斬り裂かれ、蹴り飛ばされ、フェルテもファイアボールを連発する。
一分ほどそれが続くと、ようやくゾンビ達は沈黙する。
「……なんか、別のゲームをやってるみたいだ」
周囲に動けるゾンビがいないかを確かめつつ、アロウはそう呟く。
MAFがいかにリアルさを追求しているとはいえ、対象年齢十五歳以上の年齢制限を逸脱しているように思える。
「行くぞ。この先だ」
NPC故か、何も思うことなく先へ進もうとするフェルテ。
得体の知れない不気味さを覚えながらも、アロウ達も続く。
――倒したことで消失するはずのゾンビが、何故かそのまま残っていることには、気付いていない。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
催眠アプリで恋人を寝取られて「労働奴隷」にされたけど、仕事の才能が開花したことで成り上がり、人生逆転しました
フーラー
ファンタジー
「催眠アプリで女性を寝取り、ハーレムを形成するクソ野郎」が
ざまぁ展開に陥る、異色の異世界ファンタジー。
舞台は異世界。
売れないイラストレーターをやっている獣人の男性「イグニス」はある日、
チートスキル「催眠アプリ」を持つ異世界転移者「リマ」に恋人を寝取られる。
もともとイグニスは収入が少なく、ほぼ恋人に養ってもらっていたヒモ状態だったのだが、
リマに「これからはボクらを養うための労働奴隷になれ」と催眠をかけられ、
彼らを養うために働くことになる。
しかし、今のイグニスの収入を差し出してもらっても、生活が出来ないと感じたリマは、
イグニスに「仕事が楽しくてたまらなくなる」ように催眠をかける。
これによってイグニスは仕事にまじめに取り組むようになる。
そして努力を重ねたことでイラストレーターとしての才能が開花、
大劇団のパンフレット作製など、大きな仕事が舞い込むようになっていく。
更にリマはほかの男からも催眠で妻や片思いの相手を寝取っていくが、
その「寝取られ男」達も皆、その時にかけられた催眠が良い方に作用する。
これによって彼ら「寝取られ男」達は、
・ゲーム会社を立ち上げる
・シナリオライターになる
・営業で大きな成績を上げる
など次々に大成功を収めていき、その中で精神的にも大きな成長を遂げていく。
リマは、そんな『労働奴隷』達の成長を目の当たりにする一方で、
自身は自堕落に生活し、なにも人間的に成長できていないことに焦りを感じるようになる。
そして、ついにリマは嫉妬と焦りによって、
「ボクをお前の会社の社長にしろ」
と『労働奴隷』に催眠をかけて社長に就任する。
そして「現代のゲームに関する知識」を活かしてゲーム業界での無双を試みるが、
その浅はかな考えが、本格的な破滅の引き金となっていく。
小説家になろう・カクヨムでも掲載しています!
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
勇者パーティーを追放された俺は腹いせにエルフの里を襲撃する
フルーツパフェ
ファンタジー
これは理不尽にパーティーを追放された勇者が新天地で活躍する物語ではない。
自分をパーティーから追い出した仲間がエルフの美女から、単に復讐の矛先を種族全体に向けただけのこと。
この世のエルフの女を全て討伐してやるために、俺はエルフの里を目指し続けた。
歪んだ男の復讐劇と、虐げられるエルフの美女達のあられもない姿が満載のマニアックファンタジー。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる