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謎の少女
35話 素材ツアー
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興奮と感動の中、アロウは、そのカインのシャイニングセーバーを掲げた堂々たる姿を目に焼き付けた。
勝負の時は僅か10分にも満たなかった。
しかし、その10分という600秒は一瞬だった。
「(凄い……これが、トッププレイヤー同士の戦い)」
次元が違う、違いすぎる。
装備の質はもちろんだが、それを扱うプレイヤーたるカインとオーディンの腕も比例する。
カインが放つエナジーライフルの一射一射は、散発的に撃っていただけに見えて、牽制と誘導と直撃コースのパターンを読まれないように不規則に回していた。
それに対するオーディンの先読みと予測回避もまた神憑り的だ、カインの射撃による攻撃はほとんど通じていなかったのだから。
「は、速すぎて何がなんだかって感じだった……」
アロウの右隣で、カノラは目を擦っていた。
「ワールドランクトップ10の方々は、廃人を通り越してもはや人間をやめているレベルと聞いたことはありましたが……まさに人外、ですね」
カノラの反対側にいるルナも、このエキシビションマッチの全容を理解できたとは言えなかった。
自分が同じ装備を手にしたところで、あれと同じことが出来るかと言えば、自信を持って首を横に振れる。
興奮と感動の余韻もそこそこに、退席していくギャラリーに流されるように、アロウ達は闘技場の観客席を後にしていく。
町の広場まで戻って来た三人は、ログアウト予定時間にはまだ余裕があるということで、何をしようかと相談していた。
「新しく行けるようになったフィールドに行ってみたいけど、あんまり長々と探索は出来ないよな」
アロウは、ログアウト予定時間と現在時刻である17:22を鑑みつつ意見を挙げる。
「アイテム集めとかもするし、採取クエストだと、アイテムが見つからなかったらリタイアしなきゃだよね」
それを踏まえた上で今日のクエストはどうするかと、カノラも悩む。
「でしたら、『素材ツアー』はいかがでしょう?報酬金は出ませんけど、時間制限が無いので、いつでも好きなタイミングで帰還出来るんですよ」
そこへルナが意見を挙げる。
素材ツアーとは、通常のクエストと異なり、報酬は発生しない代わりに制限時間が設定されておらず、帰還する時も自由なタイミングで可能、というものだ。
ログアウト予定時間ギリギリまでは、素材ツアーで新フィールドを探索しよう、とのことだ。
「素材ツアーか。すぐにログアウト出来るのはいいな、カノラさんもそれでいいかな?」
「うん、そうしよっか」
アロウとカノラの承認を得たところで、今日の予定は短時間の素材ツアーへ。
酒場へと移動し、受付カウンターでEランクのクエスト一覧を開く。
「Eランクからは、『デゼルト砂漠』へ行けるようになります。ノヴィス森林とは全く異なる環境ですので、地形や気候に慣れることからお勧めします」
受付嬢からのアドバイスを受けつつ、『デゼルト砂漠の素材ツアー』を選択する。
「砂漠か。暑そうだな……」
「MAFってけっこうリアルだし、暑さで参っちゃうかも……」
現実でも砂漠を渡った経験などないアロウとカノラは、未知の世界に漠然とした不安を抱く。
「さすがに脱水症状や熱中症になったりはしませんけど……暑いと思います」
ルナも砂漠は初めてのようだ。
転移装置に順番に乗り込み、素材ツアー、開始だ。
勝負の時は僅か10分にも満たなかった。
しかし、その10分という600秒は一瞬だった。
「(凄い……これが、トッププレイヤー同士の戦い)」
次元が違う、違いすぎる。
装備の質はもちろんだが、それを扱うプレイヤーたるカインとオーディンの腕も比例する。
カインが放つエナジーライフルの一射一射は、散発的に撃っていただけに見えて、牽制と誘導と直撃コースのパターンを読まれないように不規則に回していた。
それに対するオーディンの先読みと予測回避もまた神憑り的だ、カインの射撃による攻撃はほとんど通じていなかったのだから。
「は、速すぎて何がなんだかって感じだった……」
アロウの右隣で、カノラは目を擦っていた。
「ワールドランクトップ10の方々は、廃人を通り越してもはや人間をやめているレベルと聞いたことはありましたが……まさに人外、ですね」
カノラの反対側にいるルナも、このエキシビションマッチの全容を理解できたとは言えなかった。
自分が同じ装備を手にしたところで、あれと同じことが出来るかと言えば、自信を持って首を横に振れる。
興奮と感動の余韻もそこそこに、退席していくギャラリーに流されるように、アロウ達は闘技場の観客席を後にしていく。
町の広場まで戻って来た三人は、ログアウト予定時間にはまだ余裕があるということで、何をしようかと相談していた。
「新しく行けるようになったフィールドに行ってみたいけど、あんまり長々と探索は出来ないよな」
アロウは、ログアウト予定時間と現在時刻である17:22を鑑みつつ意見を挙げる。
「アイテム集めとかもするし、採取クエストだと、アイテムが見つからなかったらリタイアしなきゃだよね」
それを踏まえた上で今日のクエストはどうするかと、カノラも悩む。
「でしたら、『素材ツアー』はいかがでしょう?報酬金は出ませんけど、時間制限が無いので、いつでも好きなタイミングで帰還出来るんですよ」
そこへルナが意見を挙げる。
素材ツアーとは、通常のクエストと異なり、報酬は発生しない代わりに制限時間が設定されておらず、帰還する時も自由なタイミングで可能、というものだ。
ログアウト予定時間ギリギリまでは、素材ツアーで新フィールドを探索しよう、とのことだ。
「素材ツアーか。すぐにログアウト出来るのはいいな、カノラさんもそれでいいかな?」
「うん、そうしよっか」
アロウとカノラの承認を得たところで、今日の予定は短時間の素材ツアーへ。
酒場へと移動し、受付カウンターでEランクのクエスト一覧を開く。
「Eランクからは、『デゼルト砂漠』へ行けるようになります。ノヴィス森林とは全く異なる環境ですので、地形や気候に慣れることからお勧めします」
受付嬢からのアドバイスを受けつつ、『デゼルト砂漠の素材ツアー』を選択する。
「砂漠か。暑そうだな……」
「MAFってけっこうリアルだし、暑さで参っちゃうかも……」
現実でも砂漠を渡った経験などないアロウとカノラは、未知の世界に漠然とした不安を抱く。
「さすがに脱水症状や熱中症になったりはしませんけど……暑いと思います」
ルナも砂漠は初めてのようだ。
転移装置に順番に乗り込み、素材ツアー、開始だ。
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