【完結】マギアアームド・ファンタジア

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)

文字の大きさ
上 下
36 / 159
謎の少女

35話 素材ツアー

しおりを挟む
 興奮と感動の中、アロウは、そのカインのシャイニングセーバーを掲げた堂々たる姿を目に焼き付けた。

 勝負の時は僅か10分にも満たなかった。
 しかし、その10分という600秒は一瞬だった。

「(凄い……これが、トッププレイヤー同士の戦い)」

 次元が違う、違いすぎる。
 装備の質はもちろんだが、それを扱うプレイヤーたるカインとオーディンの腕も比例する。

 カインが放つエナジーライフルの一射一射は、散発的に撃っていただけに見えて、牽制と誘導と直撃コースのパターンを読まれないように不規則に回していた。

 それに対するオーディンの先読みと予測回避もまた神憑り的だ、カインの射撃による攻撃はほとんど通じていなかったのだから。

「は、速すぎて何がなんだかって感じだった……」

 アロウの右隣で、カノラは目を擦っていた。

「ワールドランクトップ10の方々は、廃人を通り越してもはや人間をやめているレベルと聞いたことはありましたが……まさに人外、ですね」

 カノラの反対側にいるルナも、このエキシビションマッチの全容を理解できたとは言えなかった。

 自分が同じ装備を手にしたところで、あれと同じことが出来るかと言えば、自信を持って首を横に振れる。

 興奮と感動の余韻もそこそこに、退席していくギャラリーに流されるように、アロウ達は闘技場の観客席を後にしていく。



 町の広場まで戻って来た三人は、ログアウト予定時間にはまだ余裕があるということで、何をしようかと相談していた。

「新しく行けるようになったフィールドに行ってみたいけど、あんまり長々と探索は出来ないよな」

 アロウは、ログアウト予定時間と現在時刻である17:22を鑑みつつ意見を挙げる。

「アイテム集めとかもするし、採取クエストだと、アイテムが見つからなかったらリタイアしなきゃだよね」

 それを踏まえた上で今日のクエストはどうするかと、カノラも悩む。

「でしたら、『素材ツアー』はいかがでしょう?報酬金は出ませんけど、時間制限が無いので、いつでも好きなタイミングで帰還出来るんですよ」

 そこへルナが意見を挙げる。
 素材ツアーとは、通常のクエストと異なり、報酬は発生しない代わりに制限時間が設定されておらず、帰還する時も自由なタイミングで可能、というものだ。
 ログアウト予定時間ギリギリまでは、素材ツアーで新フィールドを探索しよう、とのことだ。

「素材ツアーか。すぐにログアウト出来るのはいいな、カノラさんもそれでいいかな?」

「うん、そうしよっか」

 アロウとカノラの承認を得たところで、今日の予定は短時間の素材ツアーへ。



 酒場へと移動し、受付カウンターでEランクのクエスト一覧を開く。

「Eランクからは、『デゼルト砂漠』へ行けるようになります。ノヴィス森林とは全く異なる環境ですので、地形や気候に慣れることからお勧めします」

 受付嬢からのアドバイスを受けつつ、『デゼルト砂漠の素材ツアー』を選択する。

「砂漠か。暑そうだな……」

「MAFってけっこうリアルだし、暑さで参っちゃうかも……」

 現実でも砂漠を渡った経験などないアロウとカノラは、未知の世界に漠然とした不安を抱く。

「さすがに脱水症状や熱中症になったりはしませんけど……暑いと思います」

 ルナも砂漠は初めてのようだ。

 転移装置に順番に乗り込み、素材ツアー、開始だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎毎日朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...