上 下
31 / 159
謎の少女

30話 友達

しおりを挟む
 現実側でプレイヤーネーム同士で話すのも気が引けるということで、三人はお互いに本名を名乗り合う。

「一年二組の『君嶋結月きみしまゆづき』です。ルナのプレイヤーネームは、結月の"月"をそのまま読み替えたものです」

「一年一組の織原徹矢です。ルナさんと同じく、徹矢の"矢"を読み替えて、アロウ」

「えぇと、同じ一組の水城菜々花です。菜の花のキャノーラをもじって、カノラってことです」

 互いに名乗ったところで。

「まさか、ルナさんと同じ学校とは思わなかったな……」

「世の中って、案外狭いね」

 徹矢と菜々花は、出来すぎた偶然に苦笑する。

「私も、お二人と同じ学校、それも同い年だったなんて思いもしませんでした」

 結月の方もしかり。

「言われてみれば、顔とか雰囲気が確かにルナさんに似てるけど……髪の色が全然違うから気付かなかった」

 徹矢がそう言ったように、ルナの髪の色は紅色だが、現実側の結月は黒髪だ。

「アロウさんと織原さんはほぼそのまんまですし、カノラさんと水城さんは……髪の色が少し違うくらいですね」

「うん、せっかくゲームなんだから、そのくらいは変えてもいいかなって」

 結月の言葉に頷く菜々花。

 アバターを自由に設定できるゲームならではだ。
 自分の分身と言っても過言ではないが、『なりたい理想の自分』になれるのもキャラメイキングの醍醐味だ。
 
「でも良かったです。アロウさんもカノラさんも初心者で、私の第一印象としては、"優しそうな人達"でしたけど、現実側ではどうなのかなって思うと、あまり頻繁に関わるのもまずいかなって思ってましたけど……普通に、学校の友達としていられるなら、大丈夫ですね」

「あ、そうか。こういうゲームだから、ネカマとかネナベとか、性別詐称の可能性もあるんだな……」

 徹矢は今まで普通に楽しんでいたから気付かなかったが、実際の性別や年齢と異なる場合を考えていなかった。

 MAFのキャラメイキングは、性別や容姿、身体付き、外見年齢はおろか、人種も自由自在ではあるが、出会系アプリやサイトなどで起こり得る詐欺や暴力行為と無関係とは限らない。
 もっとも、MAFの利用規約上では、ユーザー本人同士の交流には一切責任を負わないので、そこから先は自己責任なのだが。

「変なことに巻き込まれないように、注意しなきゃだね」

 そう頷きつつ、菜々花は味噌汁を啜る。

 食を進め直して、そろそろごちそうさまでしたと言うとき、結月は「あ、そうです」と何か思い出した。

「こうして現実でも出会って、同い年って分かりましたし、織原さんと水城さん、これからは無理に敬語で話さなくてもいいですよ」

 結月が持ち掛けたのは、互いの呼び方についてだった。

「え?あぁそうか……じゃぁ、よろしくお願いします、じゃなくて……よろしく、君嶋さん」

 彼女の意見を理解した徹矢は、砕けた口調で改めて挨拶する。

「よ、よろしくね、えぇと……結月ちゃん、でいいかな?」

「いいですね。私も、菜々花さんって呼ばせてもらいます」

「結月ちゃんこそ、敬語じゃなくていいよ」

「私は元々こういう喋り方ですから、これでいつも通りです」

 女子二人が仲良さそうにしているのを見て、徹矢は「(水城さんに友達が出来て良かった)」と安心していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

処理中です...