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謎の少女
30話 友達
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現実側でプレイヤーネーム同士で話すのも気が引けるということで、三人はお互いに本名を名乗り合う。
「一年二組の『君嶋結月』です。ルナのプレイヤーネームは、結月の"月"をそのまま読み替えたものです」
「一年一組の織原徹矢です。ルナさんと同じく、徹矢の"矢"を読み替えて、アロウ」
「えぇと、同じ一組の水城菜々花です。菜の花のキャノーラをもじって、カノラってことです」
互いに名乗ったところで。
「まさか、ルナさんと同じ学校とは思わなかったな……」
「世の中って、案外狭いね」
徹矢と菜々花は、出来すぎた偶然に苦笑する。
「私も、お二人と同じ学校、それも同い年だったなんて思いもしませんでした」
結月の方もしかり。
「言われてみれば、顔とか雰囲気が確かにルナさんに似てるけど……髪の色が全然違うから気付かなかった」
徹矢がそう言ったように、ルナの髪の色は紅色だが、現実側の結月は黒髪だ。
「アロウさんと織原さんはほぼそのまんまですし、カノラさんと水城さんは……髪の色が少し違うくらいですね」
「うん、せっかくゲームなんだから、そのくらいは変えてもいいかなって」
結月の言葉に頷く菜々花。
アバターを自由に設定できるゲームならではだ。
自分の分身と言っても過言ではないが、『なりたい理想の自分』になれるのもキャラメイキングの醍醐味だ。
「でも良かったです。アロウさんもカノラさんも初心者で、私の第一印象としては、"優しそうな人達"でしたけど、現実側ではどうなのかなって思うと、あまり頻繁に関わるのもまずいかなって思ってましたけど……普通に、学校の友達としていられるなら、大丈夫ですね」
「あ、そうか。こういうゲームだから、ネカマとかネナベとか、性別詐称の可能性もあるんだな……」
徹矢は今まで普通に楽しんでいたから気付かなかったが、実際の性別や年齢と異なる場合を考えていなかった。
MAFのキャラメイキングは、性別や容姿、身体付き、外見年齢はおろか、人種も自由自在ではあるが、出会系アプリやサイトなどで起こり得る詐欺や暴力行為と無関係とは限らない。
もっとも、MAFの利用規約上では、ユーザー本人同士の交流には一切責任を負わないので、そこから先は自己責任なのだが。
「変なことに巻き込まれないように、注意しなきゃだね」
そう頷きつつ、菜々花は味噌汁を啜る。
食を進め直して、そろそろごちそうさまでしたと言うとき、結月は「あ、そうです」と何か思い出した。
「こうして現実でも出会って、同い年って分かりましたし、織原さんと水城さん、これからは無理に敬語で話さなくてもいいですよ」
結月が持ち掛けたのは、互いの呼び方についてだった。
「え?あぁそうか……じゃぁ、よろしくお願いします、じゃなくて……よろしく、君嶋さん」
彼女の意見を理解した徹矢は、砕けた口調で改めて挨拶する。
「よ、よろしくね、えぇと……結月ちゃん、でいいかな?」
「いいですね。私も、菜々花さんって呼ばせてもらいます」
「結月ちゃんこそ、敬語じゃなくていいよ」
「私は元々こういう喋り方ですから、これでいつも通りです」
女子二人が仲良さそうにしているのを見て、徹矢は「(水城さんに友達が出来て良かった)」と安心していた。
「一年二組の『君嶋結月』です。ルナのプレイヤーネームは、結月の"月"をそのまま読み替えたものです」
「一年一組の織原徹矢です。ルナさんと同じく、徹矢の"矢"を読み替えて、アロウ」
「えぇと、同じ一組の水城菜々花です。菜の花のキャノーラをもじって、カノラってことです」
互いに名乗ったところで。
「まさか、ルナさんと同じ学校とは思わなかったな……」
「世の中って、案外狭いね」
徹矢と菜々花は、出来すぎた偶然に苦笑する。
「私も、お二人と同じ学校、それも同い年だったなんて思いもしませんでした」
結月の方もしかり。
「言われてみれば、顔とか雰囲気が確かにルナさんに似てるけど……髪の色が全然違うから気付かなかった」
徹矢がそう言ったように、ルナの髪の色は紅色だが、現実側の結月は黒髪だ。
「アロウさんと織原さんはほぼそのまんまですし、カノラさんと水城さんは……髪の色が少し違うくらいですね」
「うん、せっかくゲームなんだから、そのくらいは変えてもいいかなって」
結月の言葉に頷く菜々花。
アバターを自由に設定できるゲームならではだ。
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「でも良かったです。アロウさんもカノラさんも初心者で、私の第一印象としては、"優しそうな人達"でしたけど、現実側ではどうなのかなって思うと、あまり頻繁に関わるのもまずいかなって思ってましたけど……普通に、学校の友達としていられるなら、大丈夫ですね」
「あ、そうか。こういうゲームだから、ネカマとかネナベとか、性別詐称の可能性もあるんだな……」
徹矢は今まで普通に楽しんでいたから気付かなかったが、実際の性別や年齢と異なる場合を考えていなかった。
MAFのキャラメイキングは、性別や容姿、身体付き、外見年齢はおろか、人種も自由自在ではあるが、出会系アプリやサイトなどで起こり得る詐欺や暴力行為と無関係とは限らない。
もっとも、MAFの利用規約上では、ユーザー本人同士の交流には一切責任を負わないので、そこから先は自己責任なのだが。
「変なことに巻き込まれないように、注意しなきゃだね」
そう頷きつつ、菜々花は味噌汁を啜る。
食を進め直して、そろそろごちそうさまでしたと言うとき、結月は「あ、そうです」と何か思い出した。
「こうして現実でも出会って、同い年って分かりましたし、織原さんと水城さん、これからは無理に敬語で話さなくてもいいですよ」
結月が持ち掛けたのは、互いの呼び方についてだった。
「え?あぁそうか……じゃぁ、よろしくお願いします、じゃなくて……よろしく、君嶋さん」
彼女の意見を理解した徹矢は、砕けた口調で改めて挨拶する。
「よ、よろしくね、えぇと……結月ちゃん、でいいかな?」
「いいですね。私も、菜々花さんって呼ばせてもらいます」
「結月ちゃんこそ、敬語じゃなくていいよ」
「私は元々こういう喋り方ですから、これでいつも通りです」
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