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謎の少女
29話 思わぬ再会
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アロウとカノラがEランクに昇格してから。
二人――徹矢と菜々花が高校生活にも慣れてきた頃。
いつもは弁当派である二人だが、今日の昼食は二人とも学生食堂の予定である。
「今日も混んでるなぁ……」
「混んでるね……」
今日も今日とて、昼休みの学生食堂は大盛況。
多くの生徒でごった返すこの場所は、学生達の戦場のひとつ。
「よし、俺が席を確保しておく。水城さん、日替わりランチひとつで」
「あ、うん。お代は後でね」
徹矢が席の確保に走り、菜々花が二人分のオーダーをする。
「(とはいえ、空いてるかな……)」
所狭しと生徒達が行き交い、喧騒と食器が擦れる音が混ざり合う中、ちょうど四人席が一箇所空いていた。
「よし、確保っ」
席に座り、その向かいの菜々花の分の席には鞄を置いて、横取りを防ぐ。
少しだけ待っていると、注文を受け取った菜々花がキョロキョロと徹矢の姿を探している。
「水城さーん、こっちこっちー」
「あっ、うんー」
徹矢の手振りと声掛けに気付いて、菜々花がやって来る。
「お待たせ、日替わりランチだったね」
「ありがとう。先に代金渡しておくな」
徹矢は予め用意していた小銭を菜々花に手渡してから、いただきます。
今日の日替わりランチは、焼鮭定食だ。
「こうしてたまに食べるぶんには、学食もいいよな」
「でもやっぱりちょっとお高いから、毎日はちょっとね」
食を進めながらも、他愛のない話を交わす二人。
そこへ。
「すみません、そこの空席にご一緒してもいいでしょうか?」
徹矢に声を掛けてきたのは、長く美しい黒髪の女子生徒。
周囲の男子生徒の視線は、彼女に釘付けられ、囁き合う。
「すげぇ可愛い娘……」
「誰だあの娘……?」
「一年だよな……?」
そんな小声が聞こえるものの、女子生徒はそれを気にするような素振りも見せない。
「いいですよ」
「どうぞー」
菜々花が自分の鞄を取って席を空けるのを見て、女子生徒は「ありがとうございます」と会釈しつつ、こぢんまりと座る。
そうしてまたしばらく食を進めてから、徹矢は菜々花に話し掛ける。
「水城さん、今日はMAFはどうする?」
「今日は大丈夫だよ」
「じゃぁ、放課後に。せっかくEランクに上がったし、新しいフィールドとか行ってみたいな」
「うんうん」
これからのプレイに期待を膨らませる徹矢と菜々花。
すると、菜々花の隣りにいた女子生徒が不思議そうな顔で二人を見ていた。
「あ、すいません。うるさかったですか?」
迷惑になったかと徹矢は謝るが、「いえ、迷惑ではありませんよ」と返す女子生徒。
続いて何かを言おうとして躊躇うような間を置いてから。
「あの……もしかして、アロウさんと、カノラさんですか?」
「「えっ」」
初対面の相手から、いきなりMAF内でのプレイヤーネームを言い当てられた。
何故、と思った二人だが、
「……あっ、ルナさん!?」
菜々花が、その思い当たった節を口にする。
「やっぱりアロウさんとカノラさんでしたか。そうです、ルナです」
ルナと思しき女子生徒は、思わぬ再会に驚きつつも喜んだ。
二人――徹矢と菜々花が高校生活にも慣れてきた頃。
いつもは弁当派である二人だが、今日の昼食は二人とも学生食堂の予定である。
「今日も混んでるなぁ……」
「混んでるね……」
今日も今日とて、昼休みの学生食堂は大盛況。
多くの生徒でごった返すこの場所は、学生達の戦場のひとつ。
「よし、俺が席を確保しておく。水城さん、日替わりランチひとつで」
「あ、うん。お代は後でね」
徹矢が席の確保に走り、菜々花が二人分のオーダーをする。
「(とはいえ、空いてるかな……)」
所狭しと生徒達が行き交い、喧騒と食器が擦れる音が混ざり合う中、ちょうど四人席が一箇所空いていた。
「よし、確保っ」
席に座り、その向かいの菜々花の分の席には鞄を置いて、横取りを防ぐ。
少しだけ待っていると、注文を受け取った菜々花がキョロキョロと徹矢の姿を探している。
「水城さーん、こっちこっちー」
「あっ、うんー」
徹矢の手振りと声掛けに気付いて、菜々花がやって来る。
「お待たせ、日替わりランチだったね」
「ありがとう。先に代金渡しておくな」
徹矢は予め用意していた小銭を菜々花に手渡してから、いただきます。
今日の日替わりランチは、焼鮭定食だ。
「こうしてたまに食べるぶんには、学食もいいよな」
「でもやっぱりちょっとお高いから、毎日はちょっとね」
食を進めながらも、他愛のない話を交わす二人。
そこへ。
「すみません、そこの空席にご一緒してもいいでしょうか?」
徹矢に声を掛けてきたのは、長く美しい黒髪の女子生徒。
周囲の男子生徒の視線は、彼女に釘付けられ、囁き合う。
「すげぇ可愛い娘……」
「誰だあの娘……?」
「一年だよな……?」
そんな小声が聞こえるものの、女子生徒はそれを気にするような素振りも見せない。
「いいですよ」
「どうぞー」
菜々花が自分の鞄を取って席を空けるのを見て、女子生徒は「ありがとうございます」と会釈しつつ、こぢんまりと座る。
そうしてまたしばらく食を進めてから、徹矢は菜々花に話し掛ける。
「水城さん、今日はMAFはどうする?」
「今日は大丈夫だよ」
「じゃぁ、放課後に。せっかくEランクに上がったし、新しいフィールドとか行ってみたいな」
「うんうん」
これからのプレイに期待を膨らませる徹矢と菜々花。
すると、菜々花の隣りにいた女子生徒が不思議そうな顔で二人を見ていた。
「あ、すいません。うるさかったですか?」
迷惑になったかと徹矢は謝るが、「いえ、迷惑ではありませんよ」と返す女子生徒。
続いて何かを言おうとして躊躇うような間を置いてから。
「あの……もしかして、アロウさんと、カノラさんですか?」
「「えっ」」
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何故、と思った二人だが、
「……あっ、ルナさん!?」
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