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一方その頃ギャレット家は
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トリスティン国 ギャレット領。
ある日の深夜、突如として発生した火災により、邸宅は四割近くが焼失してしまい、それらの再建には莫大な時間と金額を要した。
ギャレット家当主『ガルシア・ギャレット』は、子飼いの密偵からの報告を受けて、目を見開いた。
「本当なのか、それは」
「はっ、キンジョーの町の住民と、キャラバンからの聞き込み、その他複数による聞き込みを照らし合わせても、間違いないかと」
およそ一週間前、キンジョーの町でアルフレッドと思われる赤髪の青年と、シャルロットと思われる黒髪の少女の兄妹が宿屋で一泊し、その翌日にキャラバンと共に北の方へ向かったと聞いた。
これを聞いたガルシアは最初、耳を疑った。
何故ならアルフレッドとシャルロットは火災によって死亡した。
そう言い切れる理由としては、火災によって全焼してしまった所は、厨房や備蓄庫、書斎の周辺以外には、アルフレッドとシャルロットの部屋だけだったからだ。
仮にアルフレッドがシャルロットを連れてどこかへ避難したのだとしても、丸一日経っても戻ってこないのなら、死亡したと判断すべきである。
「他人の空似か偶然の可能性は無いのか?」
「宿屋の方で宿泊客の名前を調べたところ、それぞれ「アルフ」「シャル」という名前が書き込まれていたようです」
それに、と密偵は続ける。
「火災の被害を調べても不自然な点が。火災発生の直前、窓ガラスが連続で割れる音が発されました。実際、厨房や書斎はガラスが割れた痕跡が見られましたが、アルフレッド様の部屋のみガラスの割れた痕跡が見られませんでした」
「…………」
ガルシアは、有能な自慢の息子であるアルフレッドの、直近の行動や発言を思い返す。
今までシャルロットの事など知らぬ存ぜぬだったと言うのに、ある日突然シャルロットの身を案じ始め、その彼女について怒鳴ってきたりもした。
その翌日から、アルフレッドは剣を持ち始め、魔法の修練も行うようになった。
本人は「自分の身を自分で守るための鍛錬」と言っていたが、シャルロットのことを守るなどと宣っていたことを鑑みれば、それはただの建前だと言うのは分かっていた。
だが、その建前の裏にある真意までは汲み取れなかった。
そして火災被害の不自然さ。
「付け加えるならば、アルフレッド様は魔法の修練の際、火球の魔法を頻繁に顕現しておりました」
それらを読み取り、照らし合わせてみれば――
「まさか……あの日の火事は、アルフレッドの自作自演だとでも言うのか!?」
「その可能性が極めて高いかと思われます」
だとすれば、そもそも火災を引き起こしたのがアルフレッドということになる。
アルフレッドとシャルロットの部屋だけが全焼してしまったのは、家内の者に『アルフレッドとシャルロットは死亡した』と思わせるための仕込み。
「何と言うことだ……アルフレッドめ、育ててやった恩を仇で返したか!!」
ガルシアは激怒し、食い入るように密偵に再確認する。
「それで、奴とシャルロットは、キンジョーの町から北の方へ向かったのだな?」
「はっ。麓周辺でキャラバンとは別れたようで、その後でベルク山道の方へ向かった、と。行き先は恐らくベルク村か、反対側の麓にあるサダルスウドではないかと」
「すぐに手の者を北へ向かわせろ!何としてでもアルフレッドをここへ連れ戻すのだ!」
「アルフレッド様だけでよろしいと?シャルロット様はいかがなさいますか?」
「捨て置け。抵抗するようなら殺せ。だが、アルフレッドだけは絶対に殺すな。手段は問わん」
「御意」
密偵は了承すると、すぐにその場を去った。
ある日の深夜、突如として発生した火災により、邸宅は四割近くが焼失してしまい、それらの再建には莫大な時間と金額を要した。
ギャレット家当主『ガルシア・ギャレット』は、子飼いの密偵からの報告を受けて、目を見開いた。
「本当なのか、それは」
「はっ、キンジョーの町の住民と、キャラバンからの聞き込み、その他複数による聞き込みを照らし合わせても、間違いないかと」
およそ一週間前、キンジョーの町でアルフレッドと思われる赤髪の青年と、シャルロットと思われる黒髪の少女の兄妹が宿屋で一泊し、その翌日にキャラバンと共に北の方へ向かったと聞いた。
これを聞いたガルシアは最初、耳を疑った。
何故ならアルフレッドとシャルロットは火災によって死亡した。
そう言い切れる理由としては、火災によって全焼してしまった所は、厨房や備蓄庫、書斎の周辺以外には、アルフレッドとシャルロットの部屋だけだったからだ。
仮にアルフレッドがシャルロットを連れてどこかへ避難したのだとしても、丸一日経っても戻ってこないのなら、死亡したと判断すべきである。
「他人の空似か偶然の可能性は無いのか?」
「宿屋の方で宿泊客の名前を調べたところ、それぞれ「アルフ」「シャル」という名前が書き込まれていたようです」
それに、と密偵は続ける。
「火災の被害を調べても不自然な点が。火災発生の直前、窓ガラスが連続で割れる音が発されました。実際、厨房や書斎はガラスが割れた痕跡が見られましたが、アルフレッド様の部屋のみガラスの割れた痕跡が見られませんでした」
「…………」
ガルシアは、有能な自慢の息子であるアルフレッドの、直近の行動や発言を思い返す。
今までシャルロットの事など知らぬ存ぜぬだったと言うのに、ある日突然シャルロットの身を案じ始め、その彼女について怒鳴ってきたりもした。
その翌日から、アルフレッドは剣を持ち始め、魔法の修練も行うようになった。
本人は「自分の身を自分で守るための鍛錬」と言っていたが、シャルロットのことを守るなどと宣っていたことを鑑みれば、それはただの建前だと言うのは分かっていた。
だが、その建前の裏にある真意までは汲み取れなかった。
そして火災被害の不自然さ。
「付け加えるならば、アルフレッド様は魔法の修練の際、火球の魔法を頻繁に顕現しておりました」
それらを読み取り、照らし合わせてみれば――
「まさか……あの日の火事は、アルフレッドの自作自演だとでも言うのか!?」
「その可能性が極めて高いかと思われます」
だとすれば、そもそも火災を引き起こしたのがアルフレッドということになる。
アルフレッドとシャルロットの部屋だけが全焼してしまったのは、家内の者に『アルフレッドとシャルロットは死亡した』と思わせるための仕込み。
「何と言うことだ……アルフレッドめ、育ててやった恩を仇で返したか!!」
ガルシアは激怒し、食い入るように密偵に再確認する。
「それで、奴とシャルロットは、キンジョーの町から北の方へ向かったのだな?」
「はっ。麓周辺でキャラバンとは別れたようで、その後でベルク山道の方へ向かった、と。行き先は恐らくベルク村か、反対側の麓にあるサダルスウドではないかと」
「すぐに手の者を北へ向かわせろ!何としてでもアルフレッドをここへ連れ戻すのだ!」
「アルフレッド様だけでよろしいと?シャルロット様はいかがなさいますか?」
「捨て置け。抵抗するようなら殺せ。だが、アルフレッドだけは絶対に殺すな。手段は問わん」
「御意」
密偵は了承すると、すぐにその場を去った。
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