11 / 76
さらば義妹よ(一時的に)
しおりを挟む
シャルロットが焼菓子を美味しそうに、本当に美味しそうに平らげていくのを、紅茶を片手に眺めていたら、あっという間に時間が過ぎていた。
そろそろ執務に戻らなければまずい時間だ。
くっ、こんなに可愛らしい義妹を眺めていられる時間が有限とは……!
出来る事なら、焼菓子を頬張るシャルロットの頭をなでなでしながら、口元が汚れたら拭いてあげたり、あわよくば『あーん』をしてあげたり……
ん?これは義妹にしてやって普通だよな?
一瞬「あれこれ何だか恋人同士っぽくね?」と思った俺はきっと執務に疲れているんだ。そうに違いない。
「さてと、俺はそろそろ執務に戻るとするか」
紅茶を飲み干して、カップをソーサーに置いてから俺は席を立つ。
「あっ……お、お兄様……」
ふと、シャルロットが呼び留めてきたので振り返ってやると、どことなく恥ずかしそうに、
「そ、その……お仕事、頑張ってください」
と言ってくれた。
うん!最高だ!!
その一言をもらえるだけで俺は何徹だって出来るぞ!
「あぁ、頑張るとしよう」
またも顔がニヤけそうになる表情筋を引き締めて、"お兄様"らしい微笑で応じてやる。
よしやるぞ、ふんすっ。
残る執務を片付けながら、俺は思考を回す。
恐らく……この邸宅内でシャルロットの味方になってくれる人は、俺以外にいない。
俺がシャルロットの近くにいる内は、権力を笠に着てシャルロットへの待遇を改善するように呼び掛けられるが、今のように俺がいない時に、シャルロットはどうなっているのか、それが分からないのが気掛かりだ。
こうして俺の目が届かない間にも、シャルロットは……なんて考えただけでもどかしい。
と言うか、ここの使用人達は一体どんな精神構造をしてやがるんだ。
生まれはあまり関心できるものではないだろうが、だからといって女の子にあんな虐待行為をしていて、良心の呵責と言うものが無いのか。
……よくよく思い返せば前世の日本でも、毎年虐待で幼児が死亡したことや、イジメが原因で自殺した学生は、(新聞やニュースで情報統制されているとはいえ)千人以上いる。
少子高齢化の原因は、行き過ぎた男女平等――女性へのバリアフリーに傾注するあまり男性への配慮が蔑ろにされている女尊男卑とも言うべき社会体制――よりも、未来に花咲く芽がこうして踏み潰され、焼き払われていることだろう。
っといかんいかん、これはそれはともかくだ。
使用人達全員を一人ひとり呼び出して(頸を)締め上げて調教してやってもいいが、やり過ぎれば俺までもが陰湿行為の対象……いや下手したら暗殺とかされかねん。
不満を募らせれば、人はいとも容易く他人を殺せるようになってしまうからな。
だが分かるとすれば、シャルロットの居場所はここにはない。
しかし、何の力も無い少女が一人で外の世界に出たところで野垂れ死ぬか、性欲を持て余した獣に死ぬまで(自主規制)されるのは火を見るより明らかだ。
今のシャルロットは、まだ誰かに守ってもらわなければならないんだ。
そして今、それが出来る人間は俺しかいない。
だ、と、すれば。
そろそろ執務に戻らなければまずい時間だ。
くっ、こんなに可愛らしい義妹を眺めていられる時間が有限とは……!
出来る事なら、焼菓子を頬張るシャルロットの頭をなでなでしながら、口元が汚れたら拭いてあげたり、あわよくば『あーん』をしてあげたり……
ん?これは義妹にしてやって普通だよな?
一瞬「あれこれ何だか恋人同士っぽくね?」と思った俺はきっと執務に疲れているんだ。そうに違いない。
「さてと、俺はそろそろ執務に戻るとするか」
紅茶を飲み干して、カップをソーサーに置いてから俺は席を立つ。
「あっ……お、お兄様……」
ふと、シャルロットが呼び留めてきたので振り返ってやると、どことなく恥ずかしそうに、
「そ、その……お仕事、頑張ってください」
と言ってくれた。
うん!最高だ!!
その一言をもらえるだけで俺は何徹だって出来るぞ!
「あぁ、頑張るとしよう」
またも顔がニヤけそうになる表情筋を引き締めて、"お兄様"らしい微笑で応じてやる。
よしやるぞ、ふんすっ。
残る執務を片付けながら、俺は思考を回す。
恐らく……この邸宅内でシャルロットの味方になってくれる人は、俺以外にいない。
俺がシャルロットの近くにいる内は、権力を笠に着てシャルロットへの待遇を改善するように呼び掛けられるが、今のように俺がいない時に、シャルロットはどうなっているのか、それが分からないのが気掛かりだ。
こうして俺の目が届かない間にも、シャルロットは……なんて考えただけでもどかしい。
と言うか、ここの使用人達は一体どんな精神構造をしてやがるんだ。
生まれはあまり関心できるものではないだろうが、だからといって女の子にあんな虐待行為をしていて、良心の呵責と言うものが無いのか。
……よくよく思い返せば前世の日本でも、毎年虐待で幼児が死亡したことや、イジメが原因で自殺した学生は、(新聞やニュースで情報統制されているとはいえ)千人以上いる。
少子高齢化の原因は、行き過ぎた男女平等――女性へのバリアフリーに傾注するあまり男性への配慮が蔑ろにされている女尊男卑とも言うべき社会体制――よりも、未来に花咲く芽がこうして踏み潰され、焼き払われていることだろう。
っといかんいかん、これはそれはともかくだ。
使用人達全員を一人ひとり呼び出して(頸を)締め上げて調教してやってもいいが、やり過ぎれば俺までもが陰湿行為の対象……いや下手したら暗殺とかされかねん。
不満を募らせれば、人はいとも容易く他人を殺せるようになってしまうからな。
だが分かるとすれば、シャルロットの居場所はここにはない。
しかし、何の力も無い少女が一人で外の世界に出たところで野垂れ死ぬか、性欲を持て余した獣に死ぬまで(自主規制)されるのは火を見るより明らかだ。
今のシャルロットは、まだ誰かに守ってもらわなければならないんだ。
そして今、それが出来る人間は俺しかいない。
だ、と、すれば。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる
シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。
※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。
※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。
俺の名はグレイズ。
鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。
ジョブは商人だ。
そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。
だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。
そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。
理由は『巷で流行している』かららしい。
そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。
まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。
まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。
表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。
そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。
一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。
俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。
その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。
本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道
コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。
主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。
こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。
そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。
修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。
それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。
不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。
記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。
メサメサメサ
メサ メサ
メサ メサ
メサ メサ
メサメサメサメサメサ
メ サ メ サ サ
メ サ メ サ サ サ
メ サ メ サ ササ
他サイトにも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる