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命令の抜け穴

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 午後の執務もある程度終わらせると、時刻はちょうど15時の辺り。
 この辺りで休憩にするか。
 休憩ついでに、シャルロットと屋外でお茶をするのもいいな。
 よし、そうしよう。

 と、思ったところで不意にドアノックがされる。

「アルフレッド様、お茶菓子をご用意致しました」

 おぉ、ナイスタイミングだ。
 俺は軽く背伸びをしてから、ドアを開けてやる。
 メイドが用意してきたお茶のセットを見た感じ、一人分しか無いな。

「ご苦労。だが、もう一人分用意してほしい」

「もう一人分?」

「シャルロットの分だ。これから二人で外でお茶でもしようかとな。二度手間ですまないが、中庭まで頼む」

「は……かしこまりました」

 一礼してから、メイドは踵を返して来た道を戻っていく。
 今お前、一瞬とはいえ「なんであいつの分までいるんだ」ってな顔しやがったな?気付かなかったフリしてやったけど。
 シャルロットの分のお茶に余計な細工をしてたらとっちめてやる。
 割と本気でそんなことを考えつつ、俺はシャルロットに与えられている自室へ向かった。



 シャルロットの自室……いや、これは果たして自室か?
 あまりにも簡素過ぎる壁とドア。
 しかし、鍵周りだけはやたらと厳重。
 ……ここは刑務所か、さもなきゃブタ箱か?
 ノックしても音が聞こえるかどうかも微妙だが、とりあえず呼びかけてみよう。

「シャルロット、いるか?」

 俺の声を聞いてくれたのか、ベチャベチャと言う、何か水溜り踏むような音が近付いてくる。
 何かが起きている?
 俺の奇妙な不安など知って知らずか、ドアが開けられる。

「あ……お、お兄様……」

「……シャルロット?一体どうした?」

 俺は思わず、今のシャルロットの状態を凝視する。

 ポタポタと髪から水滴が垂れ、着替えたはずの服は濡れて肌に貼り付いて、足跡のように濡れた跡を引きずっている。

「……なん、でもありません」

 シャルロットはそう言うが、何も無いのにこうはなるまい。
 この様子だと、風呂にはちゃんと入れさせてもらったようで、着替えも用意してもらったはずだ。
 なのに何故こうもずぶ濡れなのか……

 ――シャルロットは食後に入浴もさせろ。それと清潔な着替えも用意しろ。それ以外の余計なことはするな。命令したからな?――

 自分が発言した命令と、シャルロットの状態とを照らし合わせて……ある答えが導き出された。
 いや、正確にはとでも言うべきか。

「……はっはぁ、なるほどそう言うことか」

「あの、お兄様……何を……?」

「シャルロット、少し待っててくれ。タオルと別の着替えを持ってこよう」  

 シャルロットに何か言わせる前に、俺は踵を返した。

 ……さて、ちょいと"修正"が必要だな。
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