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なでなでなでなで

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 そうして髪を梳くのに四苦八苦すること数分。

「あ、あの……」

 食後に風呂も用意させるよう命令しないと、と思っていると、シャルロットの方から話しかけてきた。
 よしよし、少しは打ち解けてきたみたいだな。

「ん?」

「……その、どうして、ですか?」

「どうしてって、どういう意味だ?」

「で、ですから、どうしてわたしに、優しくしてくれるのか、です……」 

 なんだ、そんなことか。

「俺はお前の兄貴だからな。例え義理でも、妹が苦しんでいるのを黙って見ていられるほど、俺は腐っちゃいない」

「…………」

 俺の答えに、シャルロットはひどく驚いたような顔をしている。

 ……あぁ、そうか。

 "俺"が憑依する前のアルフレッドは、シャルロットのことなんか見向きもしていなかったもんな。
 誰からも顧みられず、陰湿な虐げの対象にされ、その存在を誰にも必要とされていなかった。
 シャルロットは、ずっと孤独だったんだ。

 そりゃぁ……そんな顔だってするよなぁ。

 たまらなくなった俺は一度櫛を置いて、そっとシャルロットの頭を撫でた。

「ふぁにゃっ……?」

 きっと、こうやって頭を撫でられたことも無かったからだろう。

「よしよし、今まで無視しててごめんな」

 なでなで。なでなで。なでなで。

「あ、あぅ、あうぅ……」

 ……よし、決めたぞ。

 俺は必ず、この義妹に幸せな未来を約束する。
 彼女に足りないものを、少しずつでも教えて、与えてやりたい。
 シャルロットに害を為す奴は、この兄貴が許さん。
 俺の魂はそのために、この世界のアルフレッドの肉体に乗り移ったのだ、そうに違いない。
 シスコン?

 ハッ(鼻嘲笑)。

 そんなことをほざく奴は、家族の大切さやありがたみが分からんのさ。

「あ、あの……」

 おっと、思わずなでなでし過ぎちまったかな?

「っと、すまんなシャルロット。髪を梳いてやるんだったな」

 よし、この後で風呂に入るだろうが、少しでも小綺麗にしてあげよう。

「そ、そうではなく、て……」

「ん?遠慮しないで、ちゃんと言ってほしいぞ」

「その……お、おに、"お兄様"……で、良いのでしょうか……?」

 お兄様!
 こんな可愛い義妹から「お兄様」だってよ!?お兄様ですって!!ファー!!
 兄貴冥利に尽きます。異世界転生して良かったー!!

 フゥ、嬉しさのあまり内心で発狂してる場合じゃないぞ俺。

「あぁ、もちろんだ。俺はお前の兄貴だからな」

 興奮を押し隠して、さも当然のように頷いて見せる。

「あ、ありがとうございます、お兄様……」

 ほんの少し、僅かだけ、ぎこちないけど、笑ってくれた。

 うん、可愛い。

 女の子はやっぱりそうじゃないとな。
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