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ハタセ

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彼の事情 No.3〔八野 深弦の場合〕

彼の事情 No.3〔八野 深弦の場合〕5

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「……」

「三春?」

少し何かを考えたかのような素振りを見せた三春は、でもすぐに俺の目を見て口を開いた。

「大丈夫だよ」

「…大丈夫?」

「うん。八野くんは俺なんかが居なくても大丈夫」

三春が何を言いだしたのか、すぐに理解が出来なかった。

「三春?大丈夫ってどういう…」

「俺がいなくても八野くんは人気者だからすぐに代わりは見つかるよ
だから大丈夫。俺なんて忘れて転校先でも元気でね」

そう言って、三春は至極あっさりと俺の手から自分の手を抜き取っていった。

その後、自分がどうやって帰ったのかも分からない。
混乱した状態で、精神的にショックを受けた俺は学校を休んでそのまま転校してしまった。

あれから三春とは会っていない。
連絡先も携帯なんて持っているはずもなく、連絡網で知っていた家の電話番号だけが俺と三春を繋ぐ唯一の物だったけど
それも使われることはなく、いつの間にか親に捨てられていた。

三春の中で、俺と言う立ち位置がどこにあるかを知ろうとして
そして地雷を踏んだ。
自分は、三春の中でどうとも思われていなかったのだ。
親友なんてほど遠いところに置かれていた。
友達とすら思われていたのか危うい距離。
三春の中で唯一なのは、三春自身なのだとその時に気が付いた。
他者は全て外部に居て、内部には自分一人しか存在させていない。
あくまでも他人と自分と言うスタンスなのだ。
それを理解していなかった。
三春の事は俺が一番分かっていると言う過信。
何も分かっていなかった戸惑いと憤り。
そして三春に対しての憎悪と執着。
膨れ上がる感情を殺せずに、俺は中学に上がり、
三春への行き場のない気持ちを発散するかのように手当たり次第に女に手を出した。

とにかく三春を忘れたかった。

勉強も出来た。運動も出来た。加えて容姿も悪くないと言う事で寄ってくる女の数は途切れる事はなく
こちらが動かなくとも勝手に自分が彼女だと勘違いをしてくれるバカな女だらけだった。
それでも
俺の心が満たされることはなかった。
ただひたすらに枯渇する心を潤そうと必死で、三春を忘れようと必死で…。
そんなある時、三春と同じ名前の女が俺の前に現れた。
三春とは似ても似つかないのに堂々と「みはる」と呼べることに、興奮した。

行為の最中は目を瞑ればいい
そうすれば俺の目の前に「三春」が現れる
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