□ベストアンサー□

ハタセ

文字の大きさ
上 下
23 / 28
彼の事情 No.3〔八野 深弦の場合〕

彼の事情 No.3〔八野 深弦の場合〕5

しおりを挟む
「……」

「三春?」

少し何かを考えたかのような素振りを見せた三春は、でもすぐに俺の目を見て口を開いた。

「大丈夫だよ」

「…大丈夫?」

「うん。八野くんは俺なんかが居なくても大丈夫」

三春が何を言いだしたのか、すぐに理解が出来なかった。

「三春?大丈夫ってどういう…」

「俺がいなくても八野くんは人気者だからすぐに代わりは見つかるよ
だから大丈夫。俺なんて忘れて転校先でも元気でね」

そう言って、三春は至極あっさりと俺の手から自分の手を抜き取っていった。

その後、自分がどうやって帰ったのかも分からない。
混乱した状態で、精神的にショックを受けた俺は学校を休んでそのまま転校してしまった。

あれから三春とは会っていない。
連絡先も携帯なんて持っているはずもなく、連絡網で知っていた家の電話番号だけが俺と三春を繋ぐ唯一の物だったけど
それも使われることはなく、いつの間にか親に捨てられていた。

三春の中で、俺と言う立ち位置がどこにあるかを知ろうとして
そして地雷を踏んだ。
自分は、三春の中でどうとも思われていなかったのだ。
親友なんてほど遠いところに置かれていた。
友達とすら思われていたのか危うい距離。
三春の中で唯一なのは、三春自身なのだとその時に気が付いた。
他者は全て外部に居て、内部には自分一人しか存在させていない。
あくまでも他人と自分と言うスタンスなのだ。
それを理解していなかった。
三春の事は俺が一番分かっていると言う過信。
何も分かっていなかった戸惑いと憤り。
そして三春に対しての憎悪と執着。
膨れ上がる感情を殺せずに、俺は中学に上がり、
三春への行き場のない気持ちを発散するかのように手当たり次第に女に手を出した。

とにかく三春を忘れたかった。

勉強も出来た。運動も出来た。加えて容姿も悪くないと言う事で寄ってくる女の数は途切れる事はなく
こちらが動かなくとも勝手に自分が彼女だと勘違いをしてくれるバカな女だらけだった。
それでも
俺の心が満たされることはなかった。
ただひたすらに枯渇する心を潤そうと必死で、三春を忘れようと必死で…。
そんなある時、三春と同じ名前の女が俺の前に現れた。
三春とは似ても似つかないのに堂々と「みはる」と呼べることに、興奮した。

行為の最中は目を瞑ればいい
そうすれば俺の目の前に「三春」が現れる
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!

toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」 「すいません……」 ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪ 一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。 作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

罰ゲームで告白したら、一生添い遂げることになった話

雷尾
BL
タイトルの通りです。 高校生たちの罰ゲーム告白から始まるお話。 受け:藤岡 賢治(ふじおかけんじ)野球部員。結構ガタイが良い 攻め:東 海斗(あずまかいと)校内一の引くほどの美形

失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった

無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。 そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。 チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。

それはきっと、気の迷い。

葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ? 主人公→睦実(ムツミ) 王道転入生→珠紀(タマキ) 全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?

僕の平凡生活が…

ポコタマ
BL
アンチ転校生によって日常が壊された主人公の話です 更新頻度はとても遅めです。誤字・脱字がある場合がございます。お気に入り、しおり、感想励みになります。

片桐くんはただの幼馴染

ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。 藤白侑希 バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。 右成夕陽 バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。 片桐秀司 バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。 佐伯浩平 こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。

処理中です...