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ハタセ

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彼の事情 No.1〔桜崎 圭の場合〕

彼の事情 No.1〔桜崎 圭の場合〕3

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それからと言うもの、俺は夜中になるとフラフラと街に出ては彼を探すようになっていた。
運よく見付けた日には彼が帰るまでずっと彼の事を眺める日々を淡々と過ごしていた。
自分でも何が楽しくてそんな事を続けているのかも分からずに。

そしてその生活が一ヶ月程経った頃、俺は自分が通う高校でたまたま彼を見付けてしまったのである。

直ぐさま調べに走ったら、彼は俺より1つ年上の先輩だということが分かった。

これはチャンスだと思ったんだ。ずっと夜の彼しか知らなかった俺に突如として舞い込んできた千載一遇のチャンス。

この機会を逃す手はなかった。
偶然には感謝しよう。
彼に近付けるのなら脅したって構わない厭わない、そう、俺は吉野三春を徹底的に調べ上げて直接彼に近付いた。

彼に俺という存在を刻み付けてやろうと思ったんだ。

「初めまして吉野先輩。俺1年の桜崎圭と言う者なんですが、写真、見てもらえましたか?」

古典的に彼の靴箱に置いた封筒。その中身は吉野先輩の夜の顔写真。
屋上のフェンスにもたれ掛かかり、入って来た相手に単刀直入にそう聞いた。

「ああ」

機械的に彼はそう発した。
2度目の会話に俺は少しだけ興奮して、普段ではありえないような口調で彼に話し掛けた。

「よく撮れているでしょう?暗闇でも綺麗に写るようにわざわざ高感度一眼レフ買ったんですよ」

「あっそ」

さして興味はないとばかりに相手は扉にもたれ空を仰いでいる。

これは余裕?それとも諦めなのか?

「あれ?お気に召しませんでしたか?なら、もう1枚別アングルから撮ったやつ見ます?俺、吉野先輩の写真沢山持ってますから」

「初めまして」

唐突に彼がそう言った。

「……………………はい?」

「じゃないだろう。お前、あの時、路地裏で会った奴だよな」

疑問形ではなく決定された彼の言葉に俺は微かに唇の端を上げた。

「ああ、覚えてたんですか。……その後、叔父さん家はちゃんと行けましたか?」

「行けたよ」

悪びれた風もなく、彼は穏やかに言い放った。

「フッ…ハハ、嘘ばっかりっすね先輩」

「まーな」

堪らず笑い出す俺に吉野先輩は溜息をはいた。

「ハハハハ!ハ、ハハアーあ、……それ、写真に写ってるのをバラされたくなかったら俺も仲間に入れて下さいよ」
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