□ベストアンサー□

彼等について

〔事の発端と始まり〕

｢B地点にRIZE。E地点にBOX。F地点に黒。今回は少ないっすね｣

携帯の液晶画面に映し出されているここら辺一帯の地図に指で場所を特定していく。

｢少なくてもいいさ。BOXと黒が先にやり合いそーだな。｣

｢RIZEは？｣

｢やり合いが始まったらすぐにでも来るだろ。あそこは血気盛んな奴ばっかりだから。んな事より俺らも行くぞ。｣

｢見ないんすか？｣

｢Ｃ地点。絶対此処で合流になる｣

｢またお得意の勘？｣

｢計算｣

｢りょーかいっす｣

ヨイショと立ち上がり、俺達はＣ地点へ向かうべくそこら辺にあったママチャリを拝借し夜の暗闇へとその身を投じた。

北星高校２年Ａ組 吉野 三春(ヨシノ ミハル)17歳。
一般的なサラリーマン家庭に生まれ育ち、それなりに不自由のない生活を送る極一般的な人間だ。
高校も自分の頭の出来と家から通う分には不都合ではない所を選び、人間関係もイジメられない程度には社交的かつ円滑に世の中を渡っている。
ただその彼にも唯一【個性】と言うべき趣味があった。
それがこの【観察】と呼んでいる行いである。

｢流石っすね吉野先輩。大当りじゃないっすか｣

｢当たりじゃなくて正解。勘じゃなくて計算って言っただろ｣

｢はいはい。あ、先輩ジャムパンでいいっすか？俺あんパン食べたいんで｣

｢どっちでもいい。｣

｢ほんと、先輩って基本【観察】以外はなーんも興味ないっすよね～｣

｢あ、頭が出て来た｣

｢マジッ！？｣

直ぐさま双眼鏡を構えて下の様子を伺う。

北星高校１年Ｃ組。桜崎 圭(オウサキ ケイ)16歳。
それなりに名の知れた株式会社の次男坊に生まれ育った。
しかし彼は親の仕事に関心も興味もこれと言ってなく、会社の事は優秀な兄に任せておけばいいと自分は好き勝手に生きる事を僅か１０歳の時に決意する。
そのせいで親も圭には何の期待も干渉もしなくなり野放し状態。
高校も特別偏差値が高い所へ行くわけでもなく、ただ何となくで決めた北星高校を受験し難無く首席合格したのである。
そこで彼が見付けたのが吉野であった。
非凡と暇を持て余していた彼の唯一である【興味】の対象が吉野の趣味と呼ばれる【観察】となったのだ。