隣/同級生×同級生

ハタセ

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運命

隣/同級生×同級生

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 [ 運命 ]


「そうして現在巡り合ったのが、俺とよーちゃんなの。ここまで来て、俺とよーちゃんが関係ないなんて言えるの?」

 そこまで話した菅沼の顔は、何か酷く懐かしいものを見るように俺を見ていた。

「そん…なの、お前が今作った出鱈目でしかないだろ」

 信じられるわけがなかった。
 こんな話を聞かされて
 菅沼と俺が運命だと言われて、
 はい、そーですか
 なんて受け入れられるわけがないだろ。

「まぁ、そう言う反応は分かるんだけどねぇ
 俺も大分性格も変わっちゃったし」

 生まれ変わりだから人格がちょっと変わっちゃうのは仕方ない事だよね
 と笑っている。

「今は俺だけが前世の記憶?ってやつ持ってんの。
 でもすぐに相手はよーちゃんだって分かったよ。一目見て、この人だって心が震えたから」

「だっから!そんな作り話っ」

「前の時は俺の方が記憶持ってなかったよ」

「は?」

「よーちゃんが記憶持ってたの。でもよーちゃんその記憶のせいで俺から逃げちゃったんだよね。
 俺は記憶なかったけど、その時も無意識によーちゃんを愛してた。だから逃げても追っかけた」

 捕まった俺は泣いて喚いて前世の記憶をその時の菅沼にぶちまけたらしい。
 だから今いる俺達には関係ないのだと。
 お前が固執する俺は前世の俺であって、俺ではないのだと。
 運命なんてものに振り回されているんだから、俺に執着するのはお前の本当の気持ちではないのだと。

 だけどその当時の菅沼は俺にこう言ったそうだ。

 だったらその運命に感謝するしかないと。

 運命だからこそ、俺はお前に出会えた。そして俺はお前を愛したと。
 それは何も偶然ではなく、必然だったんだと。
 そんな奇跡みたいなことでお前を手に入れられるなら運命で構わないのだと。

 俺は絶句した。

 つまり三世代?いや、世代と言うべきなのかは分からないが、
 その代々で俺たちは巡り合い、そして俺は菅沼に愛される運命にいるのかと。
 そんなバカな話があるかよ。

「どうやら過去の俺の詰めが甘かったみたいでねぇ…どの世代になってもどちらかの記憶が欠けちゃうみたい。
 それでも必ず俺はよーちゃんと巡り合う。そこだけは何度生まれ変わっても変わらない」

「嘘…だ」

「嘘じゃない」

 俺はふらつき、椅子に腰を落とした。

「証拠もあるよ?」

「…証拠?」

 菅沼は徐に自身の片腕のシャツを捲り上げ、そこにジャラジャラと付けていたアクセサリーを外しだした。

「もうだいぶ薄くなってきちゃったんだけどねぇ…ほら」

 菅沼が見せてきたのは手首にうっすらと跡が残る傷だった。

「そんな……いや、そんなの自分でいくらだって付けれるだろ!」

「俺の小さい頃の写真でも見る?赤ちゃんの時の写真にも同じ傷があるよ」

 そう言った菅沼の顔を一瞥してもまるで証拠なんていくらでも揃っているというような顔で俺を見ていた。
 自信に満ち溢れていた。

「…この傷、あの時お互いの手首に付けたんだ。だから…ねぇよーちゃん、手首、見せて?」

 俺は急に冷や汗がどっと噴き出してきた。
 まるで蛇に睨まれた蛙かのように動けなくなった。

「なっ…んなもん…」

「あるよね?隠しても無駄。だって俺が付けたんだから」

 過去のね。
 と菅沼は言った。

 そうだ
 俺は思い出せない。
 思い出せないからこそ
 今言った菅沼の話したこと全部が本当だと分かる。

 だって俺の手首にも
 菅沼と全く同じ傷が付いているのだから。


「ねぇ…陽次郎、陽次郎の隣は俺だけのモノなんだ。これから何があってもそれだけは変わらない。
 これから先も、その先も、ずっと、ずーっと…ね?」


 無理やりに繋がれた運命は
 その歯車をキシキシと軋ませて、それでも回り続けるのだろう。

 どれだけ逃げても、その「運命」とやらに逆らえないように。


 END
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