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第一話 案件内容の精査

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さてと、どうしたものやら。
ある程度の酷さは予測していたけど、此処まで酷いとは思わなかった。
正直な話、もう少しはマシかと思ってたけど、甘かったか。

机上の書類を眺めつつ、甘めのコーヒーを口に運んだ。
コーヒーが甘いのは問題ない。むしろ、甘いコーヒーが大好物。
甘かったのは俺の出版社への認識の方だ。

その場で即決せずに持ち帰ってこれたのは英断だっただろう。
出版依頼の話を貰った時は凄く嬉しかったんだけどな。
『推理小説』を書いて欲しいと、詳しくは後日面会時に書面で説明すると。


コーヒーを飲みこみ、書類の内容に目を向ける。

一、登場人物に犯罪を犯させない事。
  コンプライアンス重視が尊ばれる現代社会において、小説内の架空の世界観でも法令順守が求められます。
  つきましては、登場人物におきましても、犯罪行為、および犯罪に類する行為、又は犯罪に準ずる行為は発覚の  
  有無に関係なく、禁止とさせていただきます。
  具体的な例としましては、殺人、不法侵入、暴力行為、脅迫、銃刀法違反、
  危険物不法所持、器物損壊、
  破壊行為、道路交通法違反、その他違法行為は作中での描写はNGとなります。
  及び、死体の描写、性行為、猥褻行為も慎んでいただきます。



書けるか!
書ける訳ねーだろ!!
死体も殺人も出さずに推理小説書ける訳ないだろ!!!
何を描写すりゃあいいんだ?


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