157 / 504
第二十四 白線を進む 対戦相手は無し その七
しおりを挟む目当てのカニも取れたことだし潮干狩りと行こう。
貝採り。
ザクザク
ザクザク
傷つけないように慎重に掘る。
「お兄ちゃん! 」
リンがはしゃぎまわる。
教えるのも一苦労。
うん? 頭が! 頭が!
封印された思い出がよみがえる。
ザクザク
ザクザク
何だ? 何かを掘っている?
ここは建物の中。
山小屋ではないようだ。
だとしたらコテージ?
いや違う。違和感がある。
ここはどこだろう?
俺は一体何を?
土をかぶせる。
まさか死体?
フラッシュバック?
こちらを睨んでいる。
何を恨めしそうに見ていやがる!
俺が悪いんじゃない。
お前が悪いんだ! お前らが……
うおおお!
止めてくれ! もう思い出したくない。
「誰か助けてくれ! 」
「お兄ちゃん? お兄ちゃん? 大丈夫? 」
リンが心配そうにのぞき込む。
「俺は誰だ? 誰なんだ? 教えてくれ! 」
「お兄ちゃん…… 」
落ち着きを取り戻した。
何とか夕飯には足りそうだ。
間抜けにものこのこ歩いていたカニをキャッチ。
これで文句ないだろう。
戻る。
「ゲンジさん」
アイミと空蝉が戻っていた。
話は飯の時にでも。
リンゴとココナッツもある。
デザートが楽しみだ。
カニと貝のスープを味わう。
うん。出汁が効いている。
「うんうまい。うまい」
たまらずにお代わり。
さすがは空蝉だ。頼りになる。
続いて貝の残りを焼く。
満足満足。
本題に入るとするか。
「なあアイミ。PTって何か分かるか? 」
アイミがムーちゃんを見る。
ムーちゃんが頷き、促す。
「PTに特別な意味はないよ」
「嘘だ! そんなはずはない! 」
なぜ断定できる。なぜ知っているのか?
いくら俺が細かいことを気にしないからと言ってその違和感は払拭できない。
「ほら落ち着いてゲンジ」
「これが落ち着いてられるか! 」
「いい? これはあなたを混乱させるために仕掛けた罠。時間稼ぎの意味もある」
「どういうことだ? 」
「もうしょうがないなあ。本当はPTじゃなくてSTだったの」
「ST? 本当か? なぜ知っている? 」
「私もそう聞いております」
空蝉がデザートを持ってきた。
遠慮なくリンゴを丸かじり。
さほど大きくないミニリンゴなので食後にはもってこい。
「PTに意味はありません」
空蝉が言うと説得力がある。
「そんなことないよ! 意味はあるもん! 」
リンが反論する。
「PTは…… 」
アイミが睨む。
リンは下を向いてしまった。
「まあいいや。それでSTだと」
「はい」
「STってまさか? 」
「もうお分かりになりましたか? そうです。その通りです」
「やっぱり…… 」
「ですが今日はもう遅いですし明日にでも」
「それがいい。ゲンジそうしなよ」
財宝は逃げはしない。
大人しく言うことを聞くか。
楽しみは明日に取っておく。
翌日。
最後の総仕上げ。
ST
青空教室に全員を集める。
「それでは始めようか」
「どうしたのお兄ちゃん。真剣な顔しちゃって」
リンのおふざけが始まった。いちいち付き合ってられない。
無視を決め込む。
「まるで探偵みたいですね」
「そうそうムーちゃんの言う通り」
「誰が犯人なの? 」
「お前ら黙ってろ! 調子が狂う」
「では発表してもらいましょう。おっと失礼。披露してもらいましょうでしたね」
空蝉までふざける。
これでは収拾がつかない。
「犯人は? 探偵さん」
「犯人は俺かな? 」
「おおお! 」
歓声が上がる。
「違う違う。そんな単純なものか。と言うよりもジャンルが違う。
これは宝さがしではないか」
「早くしてよお兄ちゃん! 」
リンは我慢できない。
「では冗談はこれくらいで。STの意味が分かった者? 」
「はーい! 」
「はい! はい! 」
全員分かったようだ。
一晩あったのだ誰でも分かるか。
「では発表しよう」
皆の顔を順に見ていく。
「STとは…… STARTのことだ! 」
「お兄ちゃん凄い! 」
どうやらリンはまだ理解してなかったようだ。
それはそれで立派とも言える。
「STARTとはどこか?
始まりの場所。
振り出し。
出発地。
この島に当てはめるとそれはコテージになる」
「凄いよお兄ちゃん! 」
「何だ分かったんだ…… 」
「早くしましょう」
リンだけが褒めてくれる。
「よしコテージを掘り返すぞ! 」
「おう! 」
発掘開始。
ザクザク ザクザク
ザック ジャッブ
ザックザック ジャパン
事前に邪魔なベッドを退かしスペースができた。
そこに走り込んでシュート。
「ゴール! 」
リンの悪ふざけだ。
こんな大事な時に何をやらせようと言うのか。
「遊ぼうよお兄ちゃん」
「もうすぐなんだから邪魔をするな! 」
「ええっ? つまんない! 」
地味な発掘作業に飽きたようだ。
リンらしいが笑ってはいられない。
ザクザク
ザクザク
掘り進めていく。
近い。もうすぐだ。
金銀がもう目の前だ。
オイルマネーで潤った?
莫大な金銀。
「お兄ちゃん? 」
「そこは危ないからどっかに行ってようね」
簡易式の床なので簡単に取り外すことができた。
まあ畳みたいなもの。
ボロ小屋にはお似合いだ。
「リン! 」
危険だから近寄るなと言っているのだが言うことを聞かない。
「手伝うよ」
「良いから! 大人しくしてろ! 」
「はーい」
渋々引き下がった。
リンはまだましだ。
他の奴らは姿を見せようともしない。
まあ穴掘りなんて疲れるだけなので楽しくもない。
リンが稀なのだ。
さあ最後の仕上げといこう。
【続】
貝採り。
ザクザク
ザクザク
傷つけないように慎重に掘る。
「お兄ちゃん! 」
リンがはしゃぎまわる。
教えるのも一苦労。
うん? 頭が! 頭が!
封印された思い出がよみがえる。
ザクザク
ザクザク
何だ? 何かを掘っている?
ここは建物の中。
山小屋ではないようだ。
だとしたらコテージ?
いや違う。違和感がある。
ここはどこだろう?
俺は一体何を?
土をかぶせる。
まさか死体?
フラッシュバック?
こちらを睨んでいる。
何を恨めしそうに見ていやがる!
俺が悪いんじゃない。
お前が悪いんだ! お前らが……
うおおお!
止めてくれ! もう思い出したくない。
「誰か助けてくれ! 」
「お兄ちゃん? お兄ちゃん? 大丈夫? 」
リンが心配そうにのぞき込む。
「俺は誰だ? 誰なんだ? 教えてくれ! 」
「お兄ちゃん…… 」
落ち着きを取り戻した。
何とか夕飯には足りそうだ。
間抜けにものこのこ歩いていたカニをキャッチ。
これで文句ないだろう。
戻る。
「ゲンジさん」
アイミと空蝉が戻っていた。
話は飯の時にでも。
リンゴとココナッツもある。
デザートが楽しみだ。
カニと貝のスープを味わう。
うん。出汁が効いている。
「うんうまい。うまい」
たまらずにお代わり。
さすがは空蝉だ。頼りになる。
続いて貝の残りを焼く。
満足満足。
本題に入るとするか。
「なあアイミ。PTって何か分かるか? 」
アイミがムーちゃんを見る。
ムーちゃんが頷き、促す。
「PTに特別な意味はないよ」
「嘘だ! そんなはずはない! 」
なぜ断定できる。なぜ知っているのか?
いくら俺が細かいことを気にしないからと言ってその違和感は払拭できない。
「ほら落ち着いてゲンジ」
「これが落ち着いてられるか! 」
「いい? これはあなたを混乱させるために仕掛けた罠。時間稼ぎの意味もある」
「どういうことだ? 」
「もうしょうがないなあ。本当はPTじゃなくてSTだったの」
「ST? 本当か? なぜ知っている? 」
「私もそう聞いております」
空蝉がデザートを持ってきた。
遠慮なくリンゴを丸かじり。
さほど大きくないミニリンゴなので食後にはもってこい。
「PTに意味はありません」
空蝉が言うと説得力がある。
「そんなことないよ! 意味はあるもん! 」
リンが反論する。
「PTは…… 」
アイミが睨む。
リンは下を向いてしまった。
「まあいいや。それでSTだと」
「はい」
「STってまさか? 」
「もうお分かりになりましたか? そうです。その通りです」
「やっぱり…… 」
「ですが今日はもう遅いですし明日にでも」
「それがいい。ゲンジそうしなよ」
財宝は逃げはしない。
大人しく言うことを聞くか。
楽しみは明日に取っておく。
翌日。
最後の総仕上げ。
ST
青空教室に全員を集める。
「それでは始めようか」
「どうしたのお兄ちゃん。真剣な顔しちゃって」
リンのおふざけが始まった。いちいち付き合ってられない。
無視を決め込む。
「まるで探偵みたいですね」
「そうそうムーちゃんの言う通り」
「誰が犯人なの? 」
「お前ら黙ってろ! 調子が狂う」
「では発表してもらいましょう。おっと失礼。披露してもらいましょうでしたね」
空蝉までふざける。
これでは収拾がつかない。
「犯人は? 探偵さん」
「犯人は俺かな? 」
「おおお! 」
歓声が上がる。
「違う違う。そんな単純なものか。と言うよりもジャンルが違う。
これは宝さがしではないか」
「早くしてよお兄ちゃん! 」
リンは我慢できない。
「では冗談はこれくらいで。STの意味が分かった者? 」
「はーい! 」
「はい! はい! 」
全員分かったようだ。
一晩あったのだ誰でも分かるか。
「では発表しよう」
皆の顔を順に見ていく。
「STとは…… STARTのことだ! 」
「お兄ちゃん凄い! 」
どうやらリンはまだ理解してなかったようだ。
それはそれで立派とも言える。
「STARTとはどこか?
始まりの場所。
振り出し。
出発地。
この島に当てはめるとそれはコテージになる」
「凄いよお兄ちゃん! 」
「何だ分かったんだ…… 」
「早くしましょう」
リンだけが褒めてくれる。
「よしコテージを掘り返すぞ! 」
「おう! 」
発掘開始。
ザクザク ザクザク
ザック ジャッブ
ザックザック ジャパン
事前に邪魔なベッドを退かしスペースができた。
そこに走り込んでシュート。
「ゴール! 」
リンの悪ふざけだ。
こんな大事な時に何をやらせようと言うのか。
「遊ぼうよお兄ちゃん」
「もうすぐなんだから邪魔をするな! 」
「ええっ? つまんない! 」
地味な発掘作業に飽きたようだ。
リンらしいが笑ってはいられない。
ザクザク
ザクザク
掘り進めていく。
近い。もうすぐだ。
金銀がもう目の前だ。
オイルマネーで潤った?
莫大な金銀。
「お兄ちゃん? 」
「そこは危ないからどっかに行ってようね」
簡易式の床なので簡単に取り外すことができた。
まあ畳みたいなもの。
ボロ小屋にはお似合いだ。
「リン! 」
危険だから近寄るなと言っているのだが言うことを聞かない。
「手伝うよ」
「良いから! 大人しくしてろ! 」
「はーい」
渋々引き下がった。
リンはまだましだ。
他の奴らは姿を見せようともしない。
まあ穴掘りなんて疲れるだけなので楽しくもない。
リンが稀なのだ。
さあ最後の仕上げといこう。
【続】
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

公主の嫁入り
マチバリ
キャラ文芸
宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。
17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。
中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる