ハート オール デスゲーム/宇宙から来たロボットに拠る地球侵略

桃月熊

文字の大きさ
上 下
486 / 504

第四十八 辞書に載っている単語を作れ その十八 現状の確認

しおりを挟む



◇◆◇◆◇◆◇◆


 えーっと。どういう状態だ、コレ。


「やあ、ルーなんちゃら君。全然お店に来てくれないから、持って来てあげたよ~」
「……何を」


 何故ココに変態が。


「これこれ~」
「あ、板チョコ」
「いたちょ……違うけど、うんそう」


 わざわざ板チョコを配達しに来てくれたのか?
 ディオンと一緒に?


「どうも」
「ね~、それタダであげるから僕と話そうよぉ」
「嫌です」
「ルーカス、仕事があるんだろ。早く兄貴のとこへ戻れ」


 いや、ほんとに何しに来たの。お二人さん。
 変態はニヤニヤ笑ってるし、ディオンは顔の治安が悪すぎるし。


「じゃあ、俺はこれでーーーーわっ」


 そのままフィン兄の仕事部屋に戻ろうとしたら、目の前に変態が居た。
 ナニコレ、デジャブ。


「せっかく来たのに、それは酷くない?」
「ワープ使ったんですか」
「うん」
「……マナの無駄使い」
「何か言ったぁ?」
「いえ、何も。あの、そこ退いて下さい」
「イヤ。僕と遊ぶ約束するなら、良いよ~」


 小学生かコイツは。
 ディオンにどうするか聞こう。
そう思って振り向こうとしたら、人にぶつかった。
……真後ろに立つなよー!


「いてっ」
「悪い、大丈夫か」
「ディオン……もしかして、お前もワープを」
「歩いただけだ」


 ですよね。食い気味で答えなくても良いんじゃないかい。さっきの今だったから、もしかしたらって思ったんだよ。だって、あの変態があんなに簡単に使うから。


「あの人、何しに来たの。てかディオン、仕事は?」
第3騎士団オレたちに喧嘩売るだけ売っといて、ルーカスに土産渡すってほざきやがった」
「??」
「だから、見張りに来た」
「あー、なるほど。さっぱり分からん。よし、なら土産はもらったから、用は済んだな」
「ああ。邪魔して悪かった。兄貴によろしく」
「おう」


 ディオンが連れて帰ってくれるなら一安心、と思ったが、そうは上手くいかなかった。


「だ~か~らぁ、僕と遊ぼうよ。ルーなんちゃら」
「ルーカスです」
「ルーカスくん、遊ぼ。何処が良い?
あっ、僕の職場見学する~?」
「おい、近づくな。嫌がってるだろ」


 ぎゅうっと、隠す様にディオンに抱きしめられる。
うーん。いっそ、このまま運んでもらえば安全なんじゃないか?
 ふわっと香る、石鹸の匂いが俺をダラけさせる。
 そーいや、今日はまだハグしてなかったな。
 屋敷では、わりと今みたいにディオンが抱き着いてくる事が多い。俺のサイズ感がちょうど良いっぽい。
 常に人肌を求めるなんて、可愛い奴め。
 だからか、最近はディオンの匂いで落ち着く様になってしまった。
同じ石鹸なのに、何でこうも違うんだろう。俺も、こんな風に香ってるんかな。


「別にいいじゃん。おーい、ルーカスくん。コッチ見て。何、眠たいのぉ? 僕が抱っこしてあげようか」
「要らないです。俺戻らなきゃいけないんで」
「ふ~ん。つまんないのー。
じゃあ、王様に言っちゃおうかなぁ」


 何を?!


「ルーカスくんが欲しがってるから、薬の材料ありませんっ、て」
「言ってないんですけど!」
「王様どう思うかな~。王妃様のお気に入りだしねぇ。モンフォール伯爵が呼び出されちゃうかな?」


 このヤロウ、なんてセコイ奴なんだ。
 そんなしょうもない理由で、モンフォール家に迷惑かけられるか、馬鹿野郎!


「ルーカス、無視してればいい。陛下は戯言に耳を貸すほど暇じゃない」
「あ、そっか」
「やだな~。僕が作らなければ、手に入らないんだから同じ事だよぉ」


 チョコ作ってんの、変態おまえかー!!
 まさか、こんな小学生がダダこねたみたいな理由で脅される日が来ようとはっ。
 人生って分からない。


「職場見学するんで、もう関わらないでもらえます?」
「ん~明日迎えに行くから、親睦を深めていこうね~」
「え、聞いてました? 関わらないでって言ったんですけど」
「じゃあねー。あ、副団長はお留守番ね。ルーカスくんだけの招待だから」
「あ゛あ?」


 え、本当にあっさり帰るじゃん。
 なんなんだよ、調子狂うなー。


「……ディオンは、帰らなくて大丈夫か?」
「そんなに早く帰って欲しいのか」


 おい、仕事中だろ。
 フィン兄に怒られるぞ。


「言い方に棘があるな。
とにかく、俺戻らなきゃ。サボりは良くないし」
「……今晩一緒に寝るぞ」
「はいはい。甘んじて抱き枕役を引き受けてやるよ」
「約束したからな」
「へーへー」


 ちょいちょい、構ってちゃんモード発動するけど、大丈夫なんだろうか。
 モンフォールの次男は情けないとか噂されてたら、どうしよう。
俺のせい?





ーーーー
ーーー

 
「ルゥ、この書類を経理に。これは、情報処理に持って行ってくれ」
「はい」
「終わったら、食堂の前で待ってなさい。遅くなったが、一緒に昼食をとろう」
「はいっ」
 


 メーシっ、飯、飯!
 腹減ってたんだよー。第1騎士団の食堂はどんな感じだろ。建物と一緒で、食事も豪華だったりして。
……そんなわけねーか。ちんたら、高級食材なんて食ってる暇ないよな。普通。

 まずは、経理だ。たしか、2階だったっけ。





「失礼します」
「あー、団長の! ご苦労様です」


 うわ、爽やかっ。
 書類に追われてるはずなのに、全然疲れが見えない。

 次、情報処理。



「失礼します」
「……え~っと、ルーカス殿。はい、確かにお預かりしました。あ、お茶飲みます?」
「いえ、大丈夫です」


 経理に比べて静かな雰囲気だが、それでも爽やかだ。
というか、余裕を感じる。


 やべぇ、第3騎士団みんなが可哀想に思えてきた。この違いは、何だ。
 1人1人のスペックの違いか、回ってくる仕事の違いか。
ーー謎だな。
 帰ったら、ディオンに聞こう。







しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

公主の嫁入り

マチバリ
キャラ文芸
 宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。  17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。  中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...