ホラー小話

桃月熊

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改悪・鶴の恩返しのつづき

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なにせこの青年、元は鶴なので言葉が通じているのかいないのかを
確認すらしない。
鶴だから仕方のない事だが。

魔法のランプから垂らされたオリーブオイルは
あっという間に、器を満たし、こぼれ始めた。

「こりゃ、上等な油だが、もう器には入りきらん、とめてくれ」
二郎丸が頼んだが、当然伝わっていない。
青年は『ストップ』を耳にするまでは、とめる気がないのだから。


二郎丸は器を土間の土の上に置いた。
オリーブオイルは器からあふれ続けて、土間中にあふれ、
やがて、玄関の扉を破壊し、外へと流れだした。

二郎丸は頭の整理が追い付かない状態になった。
(まず、こいつは誰だ?
 しかも聞いた事のない言葉だし。
 うわさに聞いた異国人か?
 なんで油をくれるんだ?
 後で金を取るつもりなのか?
 このままだったら、村全体に油が広がってしまう。
 掃除とかそんな感じで大変な事になるし、作物も駄目になってしまう)

「もうやめろ、やめてくれ」
二郎丸は青年の胸倉を掴み、床へと押し倒した。
青年の手から、魔法のランプが離れた。

「やめろ、やめろ、やめろ」
激高した二郎丸は、青年の顔面を殴り続けた。

二郎丸が正気に戻った時には、青年は息をしていなかった。
「ヒッ、えらいことをしちまった。
 んんんん? この音と匂いはなんだ?」

二郎丸が振り返ると、囲炉裏から火柱が上がっていた。
魔法のランプから流出し続けているオリーブオイルが燃えているのだ。


「うわあああああああああああああああああああああああああ、大変だ!!!」
二郎丸は消火は不可能だと判断し、家の外へと逃げた。

倒れている魔法のランプは半永久的にオリーブオイルを流し続ける。
オリーブオイルは家の外へ、そして、地下へ。
やがては村全体へ。
当然ながら、炎も村全体へと広がっていく。

オリーブオイルは川を越えて、他の村へ、そして国全体へと広がる。
やがては海を越えて、諸外国全てへ。
この惑星はオリーブオイルに包まれて、やがて、炎も同じだけ広がっていく。





















こうして誕生したのが太陽だと言われています。
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