8 / 18
8話
しおりを挟む
裏で起こっていることなんて知るよしもなく、俺は相原と四条のお誘いを断ることができ、無事に夏休みを迎えることが出来ていた。まあ一つだけ失敗があるが……。それはバイトである。結局有力なバイト先も見つからずダラダラと休みを迎えることになってしまったのが心残りだが、それはそれで仕方のないことと自分なりに諦めたので、よしとしよう。しかし、この夏休みがとんでもないことになるとは、終業式の時点では想像さえも出来なかった。
「誠! また休み明けな。しっかりバイトしてこいよ」
「南もいい休みをな」
俺たちは軽い挨拶を交わして、それぞれの夏休みを迎えた。
家に帰ると珍しく兄貴が二人ともいた。俺の家は男だけの三人兄弟。両親は4年ほど前に事故で亡くしていて、長男圭祐が成人をしていたため3三人で暮らすことを決めた。今では次男果津樹も社会人となり、しっかり切り盛りしている。
そして、二年ほど前から一緒に暮らし始めた雪さんがいるから今は四人暮らし。
浅井雪さんこと雪さんは、果津にいの彼女? である。とっても綺麗な人で、料理もうまく、家事全般が得意。まさに理想の人なんだけど……、ひとつだけ問題ありで、圭にいと果津にいが大喧嘩。一体どれくらい長い間喧嘩してたのかも忘れるほどに長かった。だって雪さんって男でも女でもないから。つまり、上もあって下もある。見た目は綺麗なのにな~~~。
圭にいはまだ完全に二人の仲を許したわけじゃないみたいだけど、半分は諦めたみたいだ。
その圭にいの口癖は『悠太はちゃんといい人見つけるんだぞ』だ。まさか『俺も男に好かれちゃった(笑)』なんて口が裂けても言えない。
「ただいま」
「お帰り、悠君」
玄関で迎えてくれたのはエプロン姿の雪さんだった。
「帰ったのか悠太」
そして、奥から圭にいが出てくる。手に大きな荷物を持って……。
「圭にい、何その重たそうな荷物? どっか行くの?」
「悠君の荷物だよ。お兄さんが用意してくれたんだよ」
「えっ! 俺の荷物?」
何のことかさっぱり分からず、玄関でぼけ~と立ったまま頭の中を整理したけど、やっぱり何のことか分からない。夏休みは兄貴二人とも忙しいからって、出かける予定はないし、サークルに入ってない俺が合宿に行くわけないし。
「今冷たいものでも用意するから、早く上がって悠君」
雪さんはそう言ってキッチンに入っていく。圭にいも玄関に荷物を置くと俺の鞄を受け取って部屋に戻る。俺も圭にいの後を追いかけて部屋に入った。
「悠太の学校にはいい先生がいるんだな。私たちに遠慮しないで行っておいで悠太」
机に一枚のプリントを差し出して、圭にいがにっこりと微笑む。
差し出されたプリントには、
『サマーキャンプに行こう!!』
のタイトルで始まるキャンプの内容がこと細かに書かれていた。募集定員は二十名、期間は一週間らしい。
「先日雨宮先生がいらしてな、まじめで仕事もしっかりやっている悠太に、少し学生らしい思い出はどうかとお誘いに来てくださったんだ」
「お誘い?」
「募集定員はいっぱいになってしまったそうなんだが、一人や二人増えてもかまわないと言って下さってな」
キャンプの話は初耳だ。学校でも聞いたことないし、こんなプリント見るのも初めてだ。
怪しすぎる。俺はプリントにご丁寧に記載されているキャンプ場の電話番号に問い合わせることに。もしこれで、雨宮が出るようなことがあったら絶対罠だ。
しかしだ、俺の予想は見事にはずれ電話はキャンプ場につながり、聖都の学生が二十名ほど行くことまでしっかり確認できてしまった。
「どうしたんだ悠太?」
俺の不審な行動に圭にいが心配顔になる。末っ子ってこともあるのか、圭にいはいつも俺のことを一番に心配してくれる。俺が成人するまでは結婚はしないって断言までして、心配かけたくないけどやっぱりかけちゃってるんだろうな。
「悠君、カキ氷作ってみたんだけど……」
「おいしそう、雪さんありがと!」
「こう暑い日はカキ氷がいいな。浅井さん悪いな」
「いえ、暑いですから。二階にも置いてきますね」
イチゴシロップのかっかったカキ氷を持ってやってきた雪さんは、机に二つ置くともう一つを持って階段を上がっていく。さっきから姿が見えないと思った果津にいは、どうやら自分の部屋に居るみたいだ。
冷たいカキ氷を食べながら、圭にいが話を戻す。
「今年の夏もどこにも出かけられそうもないから、キャンプに行って遊んでおいで」
「別に俺行かなくてもいいって……」
「悠太は優しいから、私たちに気を使ってるなら行ってきなさい。学生は学生らしくたまには生き抜きも必要だぞ。」
片手を俺の肩に乗せた圭にいは、ポンポンと数回叩いて勝手に行くことを承認して、再びカキ氷を食べ始めていた。俺だってみんなと騒ぐのは嫌いじゃないけど。主催者が雨宮ってところが引っかかるんだよな。
その夜、果津にいも『行け行け』ってしつこく、雪さんにも『たまにはあそんでおいで』って言われちゃって、引っ込みがつかなった俺は行くこととなってしまった。
「誠! また休み明けな。しっかりバイトしてこいよ」
「南もいい休みをな」
俺たちは軽い挨拶を交わして、それぞれの夏休みを迎えた。
家に帰ると珍しく兄貴が二人ともいた。俺の家は男だけの三人兄弟。両親は4年ほど前に事故で亡くしていて、長男圭祐が成人をしていたため3三人で暮らすことを決めた。今では次男果津樹も社会人となり、しっかり切り盛りしている。
そして、二年ほど前から一緒に暮らし始めた雪さんがいるから今は四人暮らし。
浅井雪さんこと雪さんは、果津にいの彼女? である。とっても綺麗な人で、料理もうまく、家事全般が得意。まさに理想の人なんだけど……、ひとつだけ問題ありで、圭にいと果津にいが大喧嘩。一体どれくらい長い間喧嘩してたのかも忘れるほどに長かった。だって雪さんって男でも女でもないから。つまり、上もあって下もある。見た目は綺麗なのにな~~~。
圭にいはまだ完全に二人の仲を許したわけじゃないみたいだけど、半分は諦めたみたいだ。
その圭にいの口癖は『悠太はちゃんといい人見つけるんだぞ』だ。まさか『俺も男に好かれちゃった(笑)』なんて口が裂けても言えない。
「ただいま」
「お帰り、悠君」
玄関で迎えてくれたのはエプロン姿の雪さんだった。
「帰ったのか悠太」
そして、奥から圭にいが出てくる。手に大きな荷物を持って……。
「圭にい、何その重たそうな荷物? どっか行くの?」
「悠君の荷物だよ。お兄さんが用意してくれたんだよ」
「えっ! 俺の荷物?」
何のことかさっぱり分からず、玄関でぼけ~と立ったまま頭の中を整理したけど、やっぱり何のことか分からない。夏休みは兄貴二人とも忙しいからって、出かける予定はないし、サークルに入ってない俺が合宿に行くわけないし。
「今冷たいものでも用意するから、早く上がって悠君」
雪さんはそう言ってキッチンに入っていく。圭にいも玄関に荷物を置くと俺の鞄を受け取って部屋に戻る。俺も圭にいの後を追いかけて部屋に入った。
「悠太の学校にはいい先生がいるんだな。私たちに遠慮しないで行っておいで悠太」
机に一枚のプリントを差し出して、圭にいがにっこりと微笑む。
差し出されたプリントには、
『サマーキャンプに行こう!!』
のタイトルで始まるキャンプの内容がこと細かに書かれていた。募集定員は二十名、期間は一週間らしい。
「先日雨宮先生がいらしてな、まじめで仕事もしっかりやっている悠太に、少し学生らしい思い出はどうかとお誘いに来てくださったんだ」
「お誘い?」
「募集定員はいっぱいになってしまったそうなんだが、一人や二人増えてもかまわないと言って下さってな」
キャンプの話は初耳だ。学校でも聞いたことないし、こんなプリント見るのも初めてだ。
怪しすぎる。俺はプリントにご丁寧に記載されているキャンプ場の電話番号に問い合わせることに。もしこれで、雨宮が出るようなことがあったら絶対罠だ。
しかしだ、俺の予想は見事にはずれ電話はキャンプ場につながり、聖都の学生が二十名ほど行くことまでしっかり確認できてしまった。
「どうしたんだ悠太?」
俺の不審な行動に圭にいが心配顔になる。末っ子ってこともあるのか、圭にいはいつも俺のことを一番に心配してくれる。俺が成人するまでは結婚はしないって断言までして、心配かけたくないけどやっぱりかけちゃってるんだろうな。
「悠君、カキ氷作ってみたんだけど……」
「おいしそう、雪さんありがと!」
「こう暑い日はカキ氷がいいな。浅井さん悪いな」
「いえ、暑いですから。二階にも置いてきますね」
イチゴシロップのかっかったカキ氷を持ってやってきた雪さんは、机に二つ置くともう一つを持って階段を上がっていく。さっきから姿が見えないと思った果津にいは、どうやら自分の部屋に居るみたいだ。
冷たいカキ氷を食べながら、圭にいが話を戻す。
「今年の夏もどこにも出かけられそうもないから、キャンプに行って遊んでおいで」
「別に俺行かなくてもいいって……」
「悠太は優しいから、私たちに気を使ってるなら行ってきなさい。学生は学生らしくたまには生き抜きも必要だぞ。」
片手を俺の肩に乗せた圭にいは、ポンポンと数回叩いて勝手に行くことを承認して、再びカキ氷を食べ始めていた。俺だってみんなと騒ぐのは嫌いじゃないけど。主催者が雨宮ってところが引っかかるんだよな。
その夜、果津にいも『行け行け』ってしつこく、雪さんにも『たまにはあそんでおいで』って言われちゃって、引っ込みがつかなった俺は行くこととなってしまった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
宰相様は抱き枕がほしい【完結】
うなきのこ
BL
イグニバイル国に仕える宰相のハイドラ•アルペンジオ。
国王や王子たちからの無茶振りを全てそつなく熟す手腕を持つ宰相ハイドラは、今までの無理が祟り倒れるがそれを支えたのはーー
抱き枕(癒し)が欲しい宰相様のお話
※R指定
設定ざっくりですので、なんとなくの関係性だけで読めると思います。
小説はほぼ初めてですので拙い文章ですが、どうかお手柔らかに
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
銀の魔術師の恩返し
喜々
BL
寡黙な美丈夫剣士✕マイペースな本好き最強魔術師
世界を歩きながら様々な書物を集める本好きな旅人のラズウェルは、溜まりに溜まっていた書物を読み切ってしまい、しぶしぶ旅を再開することにする。次に目指す国は北に位置する雪国フィロントだったが、旅を再開したは良いものの旅の準備が足りておらずあまりの寒さに雪の降る森の中で倒れてしまう。意識が朦朧としていくなか遠くから黒い人影が近づいて来るのが見えたがそのまま視界は暗転した。
目が覚めるとフィロント王国の王立学園であった。
ラズウェルは命の恩人である剣術の教師ゼロに恩返しする為に臨時の魔術教師として働き始めるが………
偽物の僕。
れん
BL
偽物の僕。
この物語には性虐待などの虐待表現が多く使われております。
ご注意下さい。
優希(ゆうき)
ある事きっかけで他人から嫌われるのが怖い
高校2年生
恋愛対象的に奏多が好き。
高校2年生
奏多(かなた)
優希の親友
いつも優希を心配している
高校2年生
柊叶(ひいらぎ かなえ)
優希の父親が登録している売春斡旋会社の社長
リアコ太客
ストーカー
登場人物は増えていく予定です。
増えたらまた紹介します。
かなり雑な書き方なので読みにくいと思います。
僕らは、ただ一つの愛を誓う
星空永遠
BL
中高生に人気沸騰中、ラノベ作家の『神崎紅』。
『神崎紅』の情報はほとんどが謎とされていた。
主人公である星ヶ丘高校に通う生徒会副会長の神崎冬夜(かんざき とうや)もまた『神崎紅』のファンだった。
親友であり、星ヶ丘高校の生徒会長である如月紅蓮(きさらぎ ぐれん)に『神崎紅』の話をすると、「これ以上、神崎紅を好きにならないでほしい....」との意味深な言葉。
何事にも表情を変えない冷静沈着な如月紅蓮×傍若無人で俺様な神崎冬夜の淡く燃え上がるような恋物語。
そして、『神崎紅』の正体は一体何者なのか....?
*完全オリジナルBL小説です。
苦手な人はUターンしてください。
俺とあいつの、近くて遠い距離
ちとせ。
BL
「俺、お前が好きだ」――― 高三の夏のあの告白さえなければ、俺とあいつは今でも親友だったはずだ。どんなに悔やんでも、時間はもう巻き戻らない。どんなに願っても、俺とあいつの間にできてしまった距離はもう埋められない。だって俺も男であいつも男。俺はゲイだけど、あいつはそうじゃないのだから。フェロモンだだ漏れで女にモテまくりなイケメンノンケ大学生×一途で意地っ張りで本人自覚なしのノンケキラーなゲイ大学生。受け視点のお話。※本編、本編の裏話(攻め視点)とも完結しました。続編も予定していますが、一旦完結表示にさせていただきます。※ムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる