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10章『恋慕編』

208「陸は誰にも渡さない」(R)

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「声が枯れるまで喘がせる。そこで聞いていろ」

俺の可愛い声を搾り取ると、挑発するように言えば、天王寺は唇から血を滲ませた。壊れるまで抱くと宣言され、天王寺の怒りは頂点を超える。だが、拘束された状態では何もできず、ただひたすらに口の中に鉄の味を味わう。

「やっ、ぁ……っ」
「蜜が溢れているぞ、陸」

舌を出して、零れている先端を舐めとられれば、ビクンと身体が跳ねる。このまま無理やり挿入して、激しく突き上げれば、壊れるか? そんなことを考えながら、アデルは天王寺をとことん挑発しようと企む。
陸が誰のモノであるか、ここでしっかり教え込む必要があると。
可愛い、可愛い陸。手放すことなどできない。
アデルは十分に解す前に、俺の身体を抱き起こし、自らも身体を起こした。見せつけてやると、俺の身体を天王寺の方へ向けると、嫌な笑いを見せた。

「陸が俺に溺れていく姿を、お前に堪能させてやる」

そう言って、俺の身体を浮かせると固く閉じた襞に自身の熱くなったモノを宛がう。

「あ、無理……や、いやだ……っぁぁ」

無理やり挿入されると、身体を硬直させた俺は涙を流して抵抗を試みるが、逃げられない。
入れられる、そう思って硬く目を閉じれば、



「失礼いたしますっ!」

部屋の外から切羽詰まった大きな声が響き、ドアが思いきり叩かれた。
何事かと、アデルは俺をベッドに降ろして兵士を呼ぶ。

「申し上げます、宮殿内に数名の侵入者がいる模様です」
「テンノウジ以外にも侵入者だと」
「現在、出入り口を封鎖し、捜索中です」

兵士は淡々と状況を述べ、宝物庫と王子の自室のある離れにあたる、こちらの建物への警備を強化していると、報告する。侵入者の人数、目的がまだ掴めていないため、来客も含めて宮殿内より、誰も外に出せないと言った。
さすがに来客を閉じ込め、不安にさせる訳にはいかないと、アデルは急ぎ身支度を整え始める。

「来客には俺が説明する。お前たちは引き続き侵入者を探せ」

いいな、と、強く言いつけると兵士は深く頭を下げて、「御意」と部屋を出て行った。
それからアデルは自身の服を漁ると、小さなガラスの小瓶を探し出しベッドへと戻ってきた。
キュポンと小さな音をさせて蓋を開ければ、その中身をシーツに沁み込ませる。

「すまない、戻ってきたら続きをしてやるから、少し我慢していろ」
「うっ、んんッ……ぅんっ……」

沁み込ませたシーツを鷲掴みしたアデルは、それで俺の鼻と口を塞いだ。薬品のような嫌な匂いがする。
瞼が重くなる、俺は徐々に薄れていく意識の中で「天王寺」と誰にも聞こえない声を繋いだ。
完全に意識がなくなり、ベッドに沈んだ俺を見たアデルは、足枷を外し、優しく抱き上げると、俺の額に口づけを落とす。

「陸は誰にも渡さない」

そう口にして、アデルは「そいつはそこにしっかりと繋いでおけ」と、命令して部屋を出て行く。

「姫をどこに連れ行く気だッ」
「俺の部屋だ。お前に見せられないのは残念だが、陸は俺が可愛がってやる。心配するな」
「放すのだ! 今すぐ姫を放せ、姫は私のこの世で一番大切な人であるぞ」

暴れ出した天王寺は棒で押さえつけられ、床に押さえつけられる。顔が床に擦れるのも構わずに、天王寺はなおもアデルに噛みつく。

「返せ、返すのだ! 無理やり身体を開かせるなど、私が許さぬ」
「ならば、お前を利用して自ら俺を求めさせる」
「何を言う……」
「お前を殺すと脅せば、陸は自ら俺に足を開くだろう」

卑劣なやり口を聞かされ、天王寺の顔色が真っ青に変わる。自分のせいで姫木が傷つく。傷つけさせられ、苦しめられ、奪われる。
自然と涙が滲む。

「下衆が……」
「利用できるものは何でも利用する、それだけだ」

冷たく言い捨てると、アデルは姫木を連れ去った。残された天王寺は、騒がぬように口に布を宛がわれ、石の柱に括りつけられた。もがいても暴れても、縄は解けず、天王寺はただただ心を痛めた。
一方、自室に戻ったアデルは、自身のベッドに姫木をそっと下すと、自らもベッドに腰を下ろす。
薬で眠らせた姫木の前髪にそっと触れ、中途半端なところで放置してしまったと、顔を顰めつつも、優しく微笑んで見せた。

「すぐに戻る。そしたら、続きをしてやる」

骨の髄まで溶かして、俺しか見えないように溺れさせて、俺だけを求めるように調教して、俺だけの、俺だけのモノにすると、アデルは妖艶に口元を吊り上げると、姫木の耳の後ろ辺りに手を差し込み、静かに持ち上げると僅かに湿っている小さな唇を奪った。

「俺の、愛しい陸」

小さく囁き、アデルは自室には誰も、ネズミ一匹通すなと強く言い放ち、来客たちの元へと向かった。
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