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4章『恋路編』
89「問題しかねえ──っ!」
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病院なのに、個室でシャワー完備というありがたい仕様に、俺は昨夜泣きたいほど感謝していた。
おまけに替えのシーツも完備されており、やってしまった失態を全て洗い流すことができ、本気でお礼を述べていた。
「えっと、……起きてるよな」
さっき目が覚めた時から、ずっと天王寺に抱きしめられていた俺は、振りほどけない力に違和感しか覚えない。
寝起きに声をかけてみたが返答がなく、てっきり眠っているかと思ったんだけど、起き上がろうとした時に強く抱きしめられた感覚があり、変な汗がでた。
なんでこいつは起きてるのに、何も返事を返さないのか。胸に抱き込むように正面から抱きしめられているため、顔が全然見えないから、余計不安を煽られる。
「天王寺、起きてんだろう……なぁ」
「……」
またも返事はない。かといって寝息も聞こえてこない。だからといってまた意識を失っているわけでもなさそうで、体温も鼓動も普通にある。
なんなんだよもう……。
「返事くらいしたっていいだろう」
「……」
「天王寺! 俺だって怒るぞ」
「──」
抱きしめられる腕の中で俺は暴れ出す。だが、悲しいかなこの怪力男の腕はビクともしない。
「言いたいことがあるなら、はっきり言えよッ」
思いきり腕を突っぱねて、無理やり引き離せば天王寺の視線と絡み合う。
まだおはようも言ってないけど、天王寺はじっと俺の顔を見る。そして無言のまま天王寺は俺の腕を強く引き、有無を言わせない強引さでベッドに組み敷いた。
俺の頭の両サイドに手をつき、上から見下ろしてくる天王寺の顔が真剣すぎて、素直に怖いと感じた。
少し長い金髪が肩から垂れる様子は、綺麗だったけど。
「な、なんだよ……」
サラリと流れる髪が天王寺の顔をわずかに隠し、影をつくる。朝から一言も話さない天王寺が怖い、怖すぎると俺はドキドキしながらも苛立ちを募らせる。
「黙ってないで、……」
「昨夜の言葉は誠であるのか」
ようやく言葉を出した天王寺の声は低く、問い詰めるような声だった。
昨日の言葉って? 俺は昨夜の出来事をいろいろ思い出してしまい、当然真っ赤に沸騰する。とてつもなく恥ずかしい台詞をいろいろ言っていたような気がして、完全燃焼。
擬音が流れるとしたら『ぷしゅ~』と、空気が抜けたような音がしていたに違いない。天王寺が一体どこのどの言葉を差しているのか、俺には皆目見当もつかず、真っ白に燃え尽きていた。
「私を好きだと申したことは、誠であるかと聞く」
そういえば、俺告白しちゃったんだっけ。
「1回しか言わないって、言っただろう」
「なにゆえ一度しか言わぬのだ」
「それはだな、……」
とてつもなく、恥ずかしいからに決まってるだろうがぁぁぁ──ッ!
「今一度聞きたい」
「駄目だ」
「姫!」
天王寺が少し大きな声を出した。
ん? 何か俺は大事なこと忘れてるよな。呼ばれた名前にピンッときた俺の眉間に皺がよる。
そういえば、この間からずっとそうだったことを思い出す。
「天王寺、お前、俺との約束忘れてるだろう」
ピクピクと眉が引きつり、俺はジト~と睨みつけてやる。
「約束とは何のことだ」
「名前! 俺の事は陸って呼ぶって言ったよな」
約束を破っていることについて指摘すれば、天王寺は罰が悪そうに視線を逸らした。絶対忘れてた。俺は確信する。
この落とし前はどうしてやろうかと思ったんだが、相手は天王寺、しかも一般人とは明らかに思考の動向が違う。
よって、俺は自分で自分の首を絞めるという結果を招くことになった……。
「姫木ではなくなるのであるから、確かに姫と呼ぶのは間違っておるな」
「……は…ぃ?」
「天王寺陸となるのだから、陸と呼ぶのが相応しいであろう」
ど、どういうことなんだ? 凡人の俺にはさっぱり意味が分からず、ただ冷たい汗だけが流れる。
「……それって、まさか俺が天王寺家に養子に入る、とか?」
恐る恐る小さな震える声で天王寺に尋ねたが、天王寺は無言の笑みを返してくれただけ。
つまりどういうことなんだよぉ~、と怯える俺は、天王寺のその笑顔がまるで悪魔のように見えた。
「養子ではない。私の伴侶だ」
「冗談じゃない! なんで俺が……」
「互いが愛し合っておるのだ、問題などどこにある」
「問題しかねえ──っ!」
朝から思いっきり叫んだ俺は、自分の呼び名について嫌な思考が働いた。つまり天王寺の話を俺なりに解釈するとすれば、このままの関係なら『姫』と呼び、一緒になるなら『陸』と呼ぶ。そう言っている。
当然、このまま『姫』なんて呼ばれたくないが、天王寺と一緒になるなんて、絶対に考えられない。かといって、説得しようにも俺の言葉を全く聞かない、前代未聞の男。俺の主張はきっとどこか遠くへ飛んでいくんだろうと、はっきりとわかる。
「帰る」
どうにもならない状況を悟って、俺は帰宅という選択肢を選んだ。
昨夜無断で外泊してしまったんだ、両親が心配してないはずがないと、とりあえず帰ることにし、覆いかぶさっていた天王寺の腕を避けると俺はベッドから降りる。
「どこへ行くと言うのだ、姫」
「家族が心配してるから、帰るんだよ」
「私を置いていくと申すのか」
軽く身支度を整える俺の背後で、泣きそうな声を出す天王寺。
おまけに替えのシーツも完備されており、やってしまった失態を全て洗い流すことができ、本気でお礼を述べていた。
「えっと、……起きてるよな」
さっき目が覚めた時から、ずっと天王寺に抱きしめられていた俺は、振りほどけない力に違和感しか覚えない。
寝起きに声をかけてみたが返答がなく、てっきり眠っているかと思ったんだけど、起き上がろうとした時に強く抱きしめられた感覚があり、変な汗がでた。
なんでこいつは起きてるのに、何も返事を返さないのか。胸に抱き込むように正面から抱きしめられているため、顔が全然見えないから、余計不安を煽られる。
「天王寺、起きてんだろう……なぁ」
「……」
またも返事はない。かといって寝息も聞こえてこない。だからといってまた意識を失っているわけでもなさそうで、体温も鼓動も普通にある。
なんなんだよもう……。
「返事くらいしたっていいだろう」
「……」
「天王寺! 俺だって怒るぞ」
「──」
抱きしめられる腕の中で俺は暴れ出す。だが、悲しいかなこの怪力男の腕はビクともしない。
「言いたいことがあるなら、はっきり言えよッ」
思いきり腕を突っぱねて、無理やり引き離せば天王寺の視線と絡み合う。
まだおはようも言ってないけど、天王寺はじっと俺の顔を見る。そして無言のまま天王寺は俺の腕を強く引き、有無を言わせない強引さでベッドに組み敷いた。
俺の頭の両サイドに手をつき、上から見下ろしてくる天王寺の顔が真剣すぎて、素直に怖いと感じた。
少し長い金髪が肩から垂れる様子は、綺麗だったけど。
「な、なんだよ……」
サラリと流れる髪が天王寺の顔をわずかに隠し、影をつくる。朝から一言も話さない天王寺が怖い、怖すぎると俺はドキドキしながらも苛立ちを募らせる。
「黙ってないで、……」
「昨夜の言葉は誠であるのか」
ようやく言葉を出した天王寺の声は低く、問い詰めるような声だった。
昨日の言葉って? 俺は昨夜の出来事をいろいろ思い出してしまい、当然真っ赤に沸騰する。とてつもなく恥ずかしい台詞をいろいろ言っていたような気がして、完全燃焼。
擬音が流れるとしたら『ぷしゅ~』と、空気が抜けたような音がしていたに違いない。天王寺が一体どこのどの言葉を差しているのか、俺には皆目見当もつかず、真っ白に燃え尽きていた。
「私を好きだと申したことは、誠であるかと聞く」
そういえば、俺告白しちゃったんだっけ。
「1回しか言わないって、言っただろう」
「なにゆえ一度しか言わぬのだ」
「それはだな、……」
とてつもなく、恥ずかしいからに決まってるだろうがぁぁぁ──ッ!
「今一度聞きたい」
「駄目だ」
「姫!」
天王寺が少し大きな声を出した。
ん? 何か俺は大事なこと忘れてるよな。呼ばれた名前にピンッときた俺の眉間に皺がよる。
そういえば、この間からずっとそうだったことを思い出す。
「天王寺、お前、俺との約束忘れてるだろう」
ピクピクと眉が引きつり、俺はジト~と睨みつけてやる。
「約束とは何のことだ」
「名前! 俺の事は陸って呼ぶって言ったよな」
約束を破っていることについて指摘すれば、天王寺は罰が悪そうに視線を逸らした。絶対忘れてた。俺は確信する。
この落とし前はどうしてやろうかと思ったんだが、相手は天王寺、しかも一般人とは明らかに思考の動向が違う。
よって、俺は自分で自分の首を絞めるという結果を招くことになった……。
「姫木ではなくなるのであるから、確かに姫と呼ぶのは間違っておるな」
「……は…ぃ?」
「天王寺陸となるのだから、陸と呼ぶのが相応しいであろう」
ど、どういうことなんだ? 凡人の俺にはさっぱり意味が分からず、ただ冷たい汗だけが流れる。
「……それって、まさか俺が天王寺家に養子に入る、とか?」
恐る恐る小さな震える声で天王寺に尋ねたが、天王寺は無言の笑みを返してくれただけ。
つまりどういうことなんだよぉ~、と怯える俺は、天王寺のその笑顔がまるで悪魔のように見えた。
「養子ではない。私の伴侶だ」
「冗談じゃない! なんで俺が……」
「互いが愛し合っておるのだ、問題などどこにある」
「問題しかねえ──っ!」
朝から思いっきり叫んだ俺は、自分の呼び名について嫌な思考が働いた。つまり天王寺の話を俺なりに解釈するとすれば、このままの関係なら『姫』と呼び、一緒になるなら『陸』と呼ぶ。そう言っている。
当然、このまま『姫』なんて呼ばれたくないが、天王寺と一緒になるなんて、絶対に考えられない。かといって、説得しようにも俺の言葉を全く聞かない、前代未聞の男。俺の主張はきっとどこか遠くへ飛んでいくんだろうと、はっきりとわかる。
「帰る」
どうにもならない状況を悟って、俺は帰宅という選択肢を選んだ。
昨夜無断で外泊してしまったんだ、両親が心配してないはずがないと、とりあえず帰ることにし、覆いかぶさっていた天王寺の腕を避けると俺はベッドから降りる。
「どこへ行くと言うのだ、姫」
「家族が心配してるから、帰るんだよ」
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