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1章『恋着編』
10「俺もお前も男だよな」
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怒鳴る勢いで、俺が結婚しているんじゃないかと迫る。マジでなんなのこいつ! なんで俺が結婚しているなんて話になるんだと、イライラが募る。
だから口調が乱暴になって……。
「っんなわけあるかぁぁ――ッ!」
「では、私に不満があると申すのだな、何が不満だ、全て吐き出すがいい」
「なんなんだよもう!」
「姫に相応しい者になる」
だぁぁ~! なんで俺の言葉が全然伝わらないんだ。てか、日本語おかしくないか?
さっきから天王寺の話し方が妙に古臭くて、ここまで来ていきなりそんな疑問を抱いてしまった。明らかに現代語じゃないよな。しいて言うなら古い、そう、時代劇とかに出てきそうだんだよ。
もしかして、現代語が通用しないんじゃないかと、俺は必死に言葉遣いを考える。
「ん~、……っ、苦しゅうない? 心配ご無用?」
「姫?」
こういう時ってなんて返せばいいのかと、とりあえずテレビで聞いたことのあるような台詞を口にしてみたが、全然しっくりこなくて、お断りの台詞が出てこない。
結局、「謹んでお断りいたします」と、訳の分からない言葉を吐き出して、丁寧に頭をさげてみた。
「どこが気に入らぬ。至らぬところがあるのなら、全て直すと申しておるのだ」
「直すも何も……」
「姫っ、隠さずに申してほしいのだ」
切羽詰まった様子で迫ってくる天王寺だが、そもそも根本的におかしいんだ。男に好かれること自体が……。
「俺もお前も男だよな」
全ての答えはこれだ。
ドラマや漫画でありそうな、運命的な出会いから恋に落ちるという展開。もしも俺が女の子だったなら、超トキメク出会いだったかもしれないが、実際は男同士の出会い。友達になれたらいいな、レベル。
俺はようやく的確な指摘ができて、ほっと肩の荷を下ろしたのだが、このズレた思考回路の持ち主様にはまったくもって通用しなかったことを、数秒で思い知らされた。
そう、天王寺の放った一言が衝撃過ぎて、頭は真っ白だ。
「それならば、私が女性になればよいのであるな」
室内にいた誰もが声を失った。あろうことか、天王寺は女性になるといいだした。しかも冗談とかじゃなくて、本気の本気で。
「え、……と、その……」
一体なんて答えたら正解なのか分からないまま、俺は冷や汗を浮かべて、頬を指で掻く。
性転換までして俺の彼女になりたいのか? いや、待て待て、こいつが俺の彼女……。
ないっ! 絶対ない!
ブンブンと首を振って、気色悪い妄想を振り払えば、
「それって、本気で言ってます?」
唖然としていた火月が、遠慮気味に本人に確認をした。
「誠であるが」
「女性になるってことですよね……」
「無論だ、姫が望むのなら、私は快く承諾する」
本人はいたって真面目に答えた。
待て! たかが昨日今日出会っただけの俺のために、なんでわざわざ性転換までして付き合いたいとか思うんだ。絶対こいつおかしいだろう。
どう考えても頭のネジが飛んでいると思った俺は、浅見に視線を向けて助けを求める。このぶっ飛んだ思考回路の持ち主を今すぐに止めて欲しいと。
それを受け取った浅見が、一歩前に出れば、俺の肩にそっと手を置く。
「確認するが、姫木は尚人が女性になったら付き合うのか?」
「いえ」
無理です。と、やけに冷静に言葉がでてきた。
出会う前ならまだしも、俺はこいつが男性だと認識してしまっている。例え性転換しようとも、元は男性という記憶はどうあっても消えない。よって、無理なものは無理だ。
「私は、美女になる自信はあるが」
「いえ、そうではなくて……」
「では、愛らしい方がよいのだな」
「そっちもちょっと……」
「ならば、どのようなタイプが好みであるか?」
望んだタイプの女性になるとまで言い出して、俺はどういったら分かってもらえるのか、泣きたくなって、思わず浅見に抱きついてしまっていた。
「……ぅ、浅見さん、助けてください」
天王寺にはきっと俺の言葉が通じないと縋れば、状況はますます悪化した。
「私ではなく、冬至也を愛しておるからだと申すのかッ」
怒声をあげ、怒りを露にした天王寺に、俺と浅見は信じられないものを見る目で見る。
なんでそうなるんだぁぁぁ~~!
「尚人、落ち着け。姫木も離れろ」
「ヤダっ」
「姫木、離せと言っているんだ」
「離したくない」
人知を超えた思考回路の持ち主なんか相手にできないと、俺は必死に浅見にしがみつく。だってこの人、普通だし、まともだし、天王寺と唯一会話のできる人物なんだから、離すわけないだろう。
浅見なら俺を助けてくれると信じたから。
「やはり、そうなのだな。ゆえに私を愛せぬと申すのだな」
大勘違いをした天王寺の眉間に深い皺が寄る。焦った浅見は、俺を引き離しながら少々声を荒げた。
「誤解するな、俺はこいつのことなどなんとも思っていない」
「如何様にも思っておらぬと口にするか」
「そうだ、姫木など興味もない」
全く持って関心も、好意もないと、浅見がきっぱりと言い放てば、天王寺の表情は鬼のように変化した。
俺と浅見は、なぜさらに怒るんだと恐怖さえ覚える。
だから口調が乱暴になって……。
「っんなわけあるかぁぁ――ッ!」
「では、私に不満があると申すのだな、何が不満だ、全て吐き出すがいい」
「なんなんだよもう!」
「姫に相応しい者になる」
だぁぁ~! なんで俺の言葉が全然伝わらないんだ。てか、日本語おかしくないか?
さっきから天王寺の話し方が妙に古臭くて、ここまで来ていきなりそんな疑問を抱いてしまった。明らかに現代語じゃないよな。しいて言うなら古い、そう、時代劇とかに出てきそうだんだよ。
もしかして、現代語が通用しないんじゃないかと、俺は必死に言葉遣いを考える。
「ん~、……っ、苦しゅうない? 心配ご無用?」
「姫?」
こういう時ってなんて返せばいいのかと、とりあえずテレビで聞いたことのあるような台詞を口にしてみたが、全然しっくりこなくて、お断りの台詞が出てこない。
結局、「謹んでお断りいたします」と、訳の分からない言葉を吐き出して、丁寧に頭をさげてみた。
「どこが気に入らぬ。至らぬところがあるのなら、全て直すと申しておるのだ」
「直すも何も……」
「姫っ、隠さずに申してほしいのだ」
切羽詰まった様子で迫ってくる天王寺だが、そもそも根本的におかしいんだ。男に好かれること自体が……。
「俺もお前も男だよな」
全ての答えはこれだ。
ドラマや漫画でありそうな、運命的な出会いから恋に落ちるという展開。もしも俺が女の子だったなら、超トキメク出会いだったかもしれないが、実際は男同士の出会い。友達になれたらいいな、レベル。
俺はようやく的確な指摘ができて、ほっと肩の荷を下ろしたのだが、このズレた思考回路の持ち主様にはまったくもって通用しなかったことを、数秒で思い知らされた。
そう、天王寺の放った一言が衝撃過ぎて、頭は真っ白だ。
「それならば、私が女性になればよいのであるな」
室内にいた誰もが声を失った。あろうことか、天王寺は女性になるといいだした。しかも冗談とかじゃなくて、本気の本気で。
「え、……と、その……」
一体なんて答えたら正解なのか分からないまま、俺は冷や汗を浮かべて、頬を指で掻く。
性転換までして俺の彼女になりたいのか? いや、待て待て、こいつが俺の彼女……。
ないっ! 絶対ない!
ブンブンと首を振って、気色悪い妄想を振り払えば、
「それって、本気で言ってます?」
唖然としていた火月が、遠慮気味に本人に確認をした。
「誠であるが」
「女性になるってことですよね……」
「無論だ、姫が望むのなら、私は快く承諾する」
本人はいたって真面目に答えた。
待て! たかが昨日今日出会っただけの俺のために、なんでわざわざ性転換までして付き合いたいとか思うんだ。絶対こいつおかしいだろう。
どう考えても頭のネジが飛んでいると思った俺は、浅見に視線を向けて助けを求める。このぶっ飛んだ思考回路の持ち主を今すぐに止めて欲しいと。
それを受け取った浅見が、一歩前に出れば、俺の肩にそっと手を置く。
「確認するが、姫木は尚人が女性になったら付き合うのか?」
「いえ」
無理です。と、やけに冷静に言葉がでてきた。
出会う前ならまだしも、俺はこいつが男性だと認識してしまっている。例え性転換しようとも、元は男性という記憶はどうあっても消えない。よって、無理なものは無理だ。
「私は、美女になる自信はあるが」
「いえ、そうではなくて……」
「では、愛らしい方がよいのだな」
「そっちもちょっと……」
「ならば、どのようなタイプが好みであるか?」
望んだタイプの女性になるとまで言い出して、俺はどういったら分かってもらえるのか、泣きたくなって、思わず浅見に抱きついてしまっていた。
「……ぅ、浅見さん、助けてください」
天王寺にはきっと俺の言葉が通じないと縋れば、状況はますます悪化した。
「私ではなく、冬至也を愛しておるからだと申すのかッ」
怒声をあげ、怒りを露にした天王寺に、俺と浅見は信じられないものを見る目で見る。
なんでそうなるんだぁぁぁ~~!
「尚人、落ち着け。姫木も離れろ」
「ヤダっ」
「姫木、離せと言っているんだ」
「離したくない」
人知を超えた思考回路の持ち主なんか相手にできないと、俺は必死に浅見にしがみつく。だってこの人、普通だし、まともだし、天王寺と唯一会話のできる人物なんだから、離すわけないだろう。
浅見なら俺を助けてくれると信じたから。
「やはり、そうなのだな。ゆえに私を愛せぬと申すのだな」
大勘違いをした天王寺の眉間に深い皺が寄る。焦った浅見は、俺を引き離しながら少々声を荒げた。
「誤解するな、俺はこいつのことなどなんとも思っていない」
「如何様にも思っておらぬと口にするか」
「そうだ、姫木など興味もない」
全く持って関心も、好意もないと、浅見がきっぱりと言い放てば、天王寺の表情は鬼のように変化した。
俺と浅見は、なぜさらに怒るんだと恐怖さえ覚える。
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