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day3 喫茶室

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アパートの喫茶室「喫茶ローズ」にはさまざまな人が来る。
スクラップを趣味にしているおじさん、お絵描きしている若い二人組、常に大量のクリームを食べている美形医師、そしてアイスティーとSNSをたしなむフールだ。

「あ~ここのアイスティーは格別だね。デカンタで作ってもらって正解だったよ」

そんなことを言いながら、求人広告、ノート、SNSを表示したタブレット端末を机に広げるフール。
死神以外の仕事も、最近は探しているのだ。

「フール♡クリームいる?」
「あ、ロバート」

クリーム食べ食べおじさんこと美形医師のロバートが、ボウルを抱えて歩いてきた。
今日はティラミスの気分らしい。

「じゃあ、ひとくちだけ」
「そういわずに一皿もってきなよ。この喫茶店は常連になるととんでもないサイズでオーダーできるのがいいよね」
「うん。僕も紅茶を自分のボトルに作ってもらってるよ」
「ああ、この世の楽園!」

平和な様子で医師とその患者のフールはためいきをついた。

「それにしても、今日は雨だけど寝なくていいの?」
「今日は紅茶の気分なんだよね~」
「そうか、そうか。私は明日クロテッドクリームをたくさん食べるんだ。一週間前から予約してる」
「うわ、作るの大変そう」
「明日だけは仕入れるってさ」
「そっか。」

外はあたたかくなってきたついでに、強風が吹き雨が窓に打ち付けられていた。
雨は喫茶店のBGMの安いジャズのCDと即興でセッションしていた。

「あのね、あのね。」
「ん?」

台車に乗ったうさぎさん二匹が近寄ってきた。一匹は黒いたれ耳ウサギのタイヘーちゃん、もう一匹はしろいもふもふうさぎのうたちゃんだ。

「いまね、琥珀糖で小唄切手を作る練習をしてるの。これ、たべてみて」
「ありがとううさぎちゃん」

うさぎちゃんたちがちいさなおててで白い皿に乗った蛍石のようなものをこちらに手渡してきた。
カリカリの糖が歯ごたえよさそうな琥珀糖だ。

「んー……かわいいうた。味もかき氷みたいでおいしいよ。」
「ぼくがつくりました!」「タイヘーちゃんに作曲を教えてあげたの」

うさぎたちは嬉しそうにぴょんぴょんはねながらそういうと、次のテーブルに行ってしまった。

「……さて。履歴書を書きますかね」
「お疲れ様。」

仮面を被る風習のある果ての街だが、履歴書用の写真をフールは用意していた。
金髪に緑の目の、アンティークの人形がそこには映っていた。

「あら。アンタまたバイト探すの。派遣でいいじゃない派遣で」
「マギーさん。僕、国から出る病人保護費だけで暮らすの嫌なんです。何なら雇ってほしいくらいですよ」
「アンタにはウチは無理ね。シーツの洗濯、アパートの掃除、喫茶室、全部体力勝負だからね」
「そうですか……。」

マギーさんはカウンターの奥から声をかけてくれたが、すぐにひっこんでしまった。

「あ、洗濯するものあったら袋に入れて名前書いといてねー洗うからー」
「はーい」

奥からマギーさんの声がする。フールは少し大きめの声で返事をした。
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