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番外編2:年越しそばとうさぎちゃん

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その日、誠吾はパーティーを断り、グレンとうさぎのぬいぐるみと共に年明けを迎えた。

誠吾の腕の中でうさぎさんは眠っている。テレビからは除夜の鐘を打つ音が流れてきて、台所からは醤油だしの香りがふわりと漂ってきた。

「少し遅いけど年越しそば、食べよう!」

グレンが2つのどんぶりと、小さなプラスチックのおわんを置いた。
小さなプラスチックのおわんの中には、毛糸のそばとビーズのてんかす、フェルトのなるとが入っていた。ものを食べられないうさぎさん用だ。
どんぶりには鴨そばが入っていて、焦がし葱が鴨肉といい香りを漂わせていた。

「グレン、うさぎさんがよく眠っていますよ。ほら、かわいいですね。」
「おー、ほんとだ。寝ちゃってる。かーわいいー!」

では、私たちだけで頂きますか。誠吾はそう言うと手を合わせ「いただきます」と呟いた。

その時、うさぎさんは目を覚まし、誠吾の小豆色のよれたジャージを登り、誠吾の蕎麦へ突っ込もうとしたのだ。
間一髪で誠吾が首根を掴み、持ち上げて阻止した。
うさぎさんは手足をばたばたさせて暴れている。

「うさぎさん、いいですか。わたしは鬼ですよ。お蕎麦に突っ込んだらわたしがあなたを食べてしまうかもしれませんよ。」

うさぎさんは臆せず、まだ手足をばたばたさせていた。
誠吾の顔をぺちぺちと叩く。

「ほら、うさぎちゃん、これ食べなよ。特製手芸蕎麦だよ。」

テーブルに座らされたうさぎさんは、そばに見立てた毛糸を手づかみで口に擦り付けていた。

「ふふふ。グレンには世話になりっぱなしですね。」
「いいのいいの!改めて、あけましておめでとう!」
「あけましておめでとうございます、グレン、うさぎさん」

うさぎさんはビーズをこぼしながら、夢中になって毛糸を食べる真似をしていた。
ようやく安心して蕎麦を啜れた誠吾は、うさぎさんに小さな小銭入れを首からかけてやった。
うさぎさんには鞄のように大きな小銭入れ。中からはチャリンと独特の金属音がした。

「お年玉ですよ。」

うさぎさんは中から500円を取り出し、はむはむと布の口で食んでいた。

「誠吾、まだ早いんじゃない?」
「そうですね。そのうちわかるようになりますよ。あれ、迷子追跡用のガジェットが入ってて、隣のひよこキーホルダーに連絡先を書いたのですよ。ぬいぐるみの迷子、多発してますから…」

逆に誠吾のファンに盗まれるんじゃないか?とグレンは思ったが、突っ込まず「ふーん」と受け流した。テレビからはアイドルの歌声が流れている。
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