モノクロスカイ-年下の友達とBLっぽくなる話-

よくうつ

文字の大きさ
上 下
13 / 16

小窓

しおりを挟む
土曜日の朝、キーは小窓から外を眺めていた。
年上の彼を抱いて火照った体を冷やすため、小窓を開けている。
開けっ放しの小窓からしとしとと冷たい涙が浴槽に流れ込んでいた。

「キー、起きてる?」

けだるそうで、かつ、心配そうな声が聞こえる。キーは「だいじょうぶー」と返した。
しばらくした後、タロが棒付きキャンディをなめながら浴室の扉を開け、
浴槽の中でくつろぐキーの横でシャワーを浴び始めた。

「タロ、寝てていいのに。」
「いいよいいよ。一緒に居たいんだ。」

タロは笑顔でキーの頭をわしゃわしゃとなでる。
キーは笑顔で「ありがと」とタロに囁く。

「今日も雨だねえ、タロ。」
「梅雨が来たのかな?体、冷やさないようにね。」

しとしと、しとしと。雨は二人に語りかける。

 *

その後、昼過ぎに、傘をさして二人は歩いてしていた。
曇天は冷たい雫を浴びせ、二人の傘を軽快に叩いた。
それぞれの好きな石鹸の匂いが、ほのかに香って落ちていく。

二人はバス亭まで歩き、まだバスが来ないことを確認してキスをした。
ミルク飴とイチゴ飴の味が、舌先で混ざる。
前髪が濡れる。傘が邪魔だ。でも、甘いままでいたい。
そう思う二人を、バスが迎えに来た。

バスの行先表記が「Hanka右町」であることを確認し、バスに乗った。
薄暗いバスの中は、前の方に数人、うつむいて無言で乗っている。
二人は一番奥の席に座り、再びキスをする。
そのまま、揺られて、眠る。
雨はざあざあと本降りになり、バスを飛沫で包む。
寒くて、二人は手をつなぐ。
寒さは、二人の体温の価値を上げる。あたたかい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

目の前に色男が!早速ケツを狙ったら蹴られました。イイ……♡

ミクリ21
BL
色男に迫ったら蹴られた話。

愛おしいほど狂う愛

ゆうな
BL
ある二人が愛し合うお話。

素直じゃない人

うりぼう
BL
平社員×会長の孫 社会人同士 年下攻め ある日突然異動を命じられた昭仁。 異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。 厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。 しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。 そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり…… というMLものです。 えろは少なめ。

処理中です...