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小窓
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土曜日の朝、キーは小窓から外を眺めていた。
年上の彼を抱いて火照った体を冷やすため、小窓を開けている。
開けっ放しの小窓からしとしとと冷たい涙が浴槽に流れ込んでいた。
「キー、起きてる?」
けだるそうで、かつ、心配そうな声が聞こえる。キーは「だいじょうぶー」と返した。
しばらくした後、タロが棒付きキャンディをなめながら浴室の扉を開け、
浴槽の中でくつろぐキーの横でシャワーを浴び始めた。
「タロ、寝てていいのに。」
「いいよいいよ。一緒に居たいんだ。」
タロは笑顔でキーの頭をわしゃわしゃとなでる。
キーは笑顔で「ありがと」とタロに囁く。
「今日も雨だねえ、タロ。」
「梅雨が来たのかな?体、冷やさないようにね。」
しとしと、しとしと。雨は二人に語りかける。
*
その後、昼過ぎに、傘をさして二人は歩いてしていた。
曇天は冷たい雫を浴びせ、二人の傘を軽快に叩いた。
それぞれの好きな石鹸の匂いが、ほのかに香って落ちていく。
二人はバス亭まで歩き、まだバスが来ないことを確認してキスをした。
ミルク飴とイチゴ飴の味が、舌先で混ざる。
前髪が濡れる。傘が邪魔だ。でも、甘いままでいたい。
そう思う二人を、バスが迎えに来た。
バスの行先表記が「Hanka右町」であることを確認し、バスに乗った。
薄暗いバスの中は、前の方に数人、うつむいて無言で乗っている。
二人は一番奥の席に座り、再びキスをする。
そのまま、揺られて、眠る。
雨はざあざあと本降りになり、バスを飛沫で包む。
寒くて、二人は手をつなぐ。
寒さは、二人の体温の価値を上げる。あたたかい。
年上の彼を抱いて火照った体を冷やすため、小窓を開けている。
開けっ放しの小窓からしとしとと冷たい涙が浴槽に流れ込んでいた。
「キー、起きてる?」
けだるそうで、かつ、心配そうな声が聞こえる。キーは「だいじょうぶー」と返した。
しばらくした後、タロが棒付きキャンディをなめながら浴室の扉を開け、
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「タロ、寝てていいのに。」
「いいよいいよ。一緒に居たいんだ。」
タロは笑顔でキーの頭をわしゃわしゃとなでる。
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「今日も雨だねえ、タロ。」
「梅雨が来たのかな?体、冷やさないようにね。」
しとしと、しとしと。雨は二人に語りかける。
*
その後、昼過ぎに、傘をさして二人は歩いてしていた。
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それぞれの好きな石鹸の匂いが、ほのかに香って落ちていく。
二人はバス亭まで歩き、まだバスが来ないことを確認してキスをした。
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前髪が濡れる。傘が邪魔だ。でも、甘いままでいたい。
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薄暗いバスの中は、前の方に数人、うつむいて無言で乗っている。
二人は一番奥の席に座り、再びキスをする。
そのまま、揺られて、眠る。
雨はざあざあと本降りになり、バスを飛沫で包む。
寒くて、二人は手をつなぐ。
寒さは、二人の体温の価値を上げる。あたたかい。
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