モノクロスカイ-年下の友達とBLっぽくなる話-

星追いバスルーム

僕達はバスルームに居た。
一緒に浴槽の中に入っていた。
今日も眠れずに浴槽の中から外の星を眺めていた。
小さな窓は、残念ながらほぼ漆黒を映し出していた。
しかし、よく目を凝らせば、見えなくもない。

「タロ、お星様見えないねぇ。」
「うん。だってここはお風呂だから。」

ぼーっと、浴槽の中で、ただ二人で空を眺めていた。

「…背中、ながしっこしようか。」
「僕、傷がいっぱいあるからいいって。キーは？」
「…抱っこ♪」
「え？！」

イルカさんの防水時計は午前一時を指していた。
友人キーは眠れない変なテンションでおかしくなっていたのだろう。
…僕達、男同士だよ？たまにあいつはそのあたりを解っていない事がある。

「だだだだって、僕、恥ずかしいって！」
「お友達だから大丈夫でショ？」
「大丈夫とかそういう問題じゃなくて！裸、だよ？！」
「うん。」
「うんじゃなくって！」

にっこりと笑う親友は僕に擦り寄ってきた。無邪気な仔猫のように。
邪なことを考えていない友人は16歳の癖に背は低く声も変わっていない。
まるで、まるで子供のように。何故か色のない金色の髪が揺れる。
僕は自慢じゃないけど身長が高いくせにガリガリに痩せているので、ちょっと女々しい、らしい。
だから、腐女子の知人のネタの餌食になることがよくある。
…今の光景、もし見られちゃったら、裸体をみられるって事よりも別の危機感が湧くかもしれない。

「タロ。足細いねぇ。」
「そんなところに座るなよ。」

僕の脚の間に居る友人にはもう笑って返すしかなかった。


　カチッ

「あ！」
「あ。電気切れちゃったねぇ。」

一瞬のフラッシュのような明かりを見た後、電球が焼ききれたようだ。
真っ暗な浴室。
水面に写る月明かりがユラユラと輝き、
壁に飛んだ水滴がキラキラと輝き、
窓からは星がチカチカと輝いていた。

「でも、キレイだねぇ。」
「うん。キレイだねぇ。」
「…のわっ！」

友人は何故だか僕の胸にほお擦りをして、細い両手で抱きしめてきた。

「あったかい…ねぇ、タロ。ボク、タロが好きだよ？」
「……友達で、ってことでいいよね？」
「うん…」

くたー、と僕に持たれかかる友人の息遣いがダイレクトに伝わってくる。
いやらしいことをしてるわけではないが、ぴったりくっつくとお互いの心音まで解ってしまう。

「…ねぇ、ボク、一人ぼっちじゃないよね？」
「キーには僕が居るよ…。」

ゆっくり、ゆっくりと髪の毛を撫でてやった。
お互い、家族は居ない。独りっきりの寮生活。
たまにはこういうことだって許されるだろう…うん、でも、男同士だからちょっと変な感じ。


星がキラキラと輝いていた。

とくん、とくん、とくん、とくん。

BGMはお互いの心音。

ゆったりと、時と風、浴槽の中の水が流れてゆく。

さっきまで眠れなかったのに、なんだか落ちついてきた。