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ある夏の日

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今夜はキーがうちに泊まりに来た。
宿題を一緒にやりに来た。
彼ほどの学力があれば宿題など訳無いと思ったが、どうやらそういう問題ではないらしい。

「さみしいとね、ぐちゃぐちゃにしちゃうの」

そう言って、今、僕と夏休みの宿題をしている。
彼は国語の漢字問題をすらすらと解いていた。
僕はというと…さっぱりだ。

「キー、ちょっと国語の本を借りるよ」
「えー…びっくりしないでね」

彼はにへりと笑って本を手渡してくれた。

僕は本を開いて驚いた。
そこにはキーが書いた落書きが新しい世界を作っていた。
ジュークボックスに住むコビト、頭が錆びた人形、包帯に巻かれた僕、笑顔の僕たち…2Bのシャーペンで可愛らしく描かれていた。
夜空を飛ぶ天使もいたし、なぜか首を切られる文化人形も居た。

「キー、こんなことしていいと思ってんの?」
「ううん…でも、寂しいとあっちに行っちゃうから仕方ないの」

驚く僕の前で、キーは頭の上で指を回しておどけて見せた。
ボクオカシイノといった所だろう。

「でも、今日はタロがいるからいっぱい解けた!」
「そかそか…いいこだね。」

僕は無邪気なキーの頭を撫でてやった。
髪がふわりと柔らかくて心地よい。

>>★"

「タロ!こっちこっち!」

ちょろちょろと動き回るキーをやっと見つけて、僕は抱き上げた。

「きゃはははは!」
「こら、見失うとこだったよ。」

僕は無邪気に笑うキーを下ろすと、キーに手を引かれるまま藪の中を小走り気味に歩いた。
暗闇と足を風に揺れる草がきってゆく…

「ほら、見て!」

潮風のする方を見れば、赤い花火。
ぱぁんぱぁんと次々に色を変え上がってゆく。

「すいかのかわりだよ。タロ、きれいでしょ!」

僕は足の痛みを忘れて、キーを撫でてやった。
誇らしく笑う友人を胡座の中に入れてやり、僕たちは夏の世の花を見上げた。
真っ黒い空に光り輝く花がたくさん咲いては散る様を僕は友人と飴と楽しんだ。
熱い夜だった。
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