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飴と雨
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今夜も雨だった。
空は真っ暗で、部屋からは仄か(ほのか)に青い空気を感じる。
スレテオからゆったりとしたジャズが流れているが、
ここの部屋の主は若干16歳の少年、キーだ。
窓の暗闇をなぞる細い光を飴を噛み砕きながら見つめている少年・キー。
その横では親友のタロが写真を見つめていた。
チュッパの棒がめんどくさそうにタロの口元で上下する。
「……だるいね」
「うん。」
先ほどから、会話といえばこればかりである。
何故なら、会話の代わりに雨とピアノの音が部屋を飽和して漂っているからだ。
少年・キーは絵を描いていた。
なんて事の無い雨の絵。透明な絵の具を何重にも重ねている。
手を差し込めば冷たく消え入ってしまいそうな青と、
手を入れることを自制するように降る雨の筋。
少し寂しい、眠れぬ夜のような絵だ。
キーは絵の中の境界をボーっと見ていたが、厭きてしまったのだろう、
絵をテーブルから机に持って行ってしまった。
「キーちゃん、今の絵さぁ、結構良かったよ。僕はもっと見て居たかったな。」
「見てたの?」
「うん、見てた。」
「…さみしくなりそうだから、置いてきた。」
ボクはなんだか泣きたいくらい寂しかった。
だから、タロのアメを引っこぬいて勝手に舐めた。
「キー、それ僕の…」
「だって、寂しいんだもん。口も。」
「そっか…」
タロはあたまをわしゃわしゃ撫でてくれた。
でも、指が冷たかった。
「タロー…うわぁぁぁん」
なんかよくわかんないけど、とっても悲しくなって泣いちゃった。
泣いてたら、…タロがだきしめてくれた。
「どしたんだ、キー?なんで泣いてるんだ?」
「だって…さみしいんだもん」
「さみしいのか…」
「タロは一緒にいてくれるよね?」
「うん、いるよ、ほら、ね?」
タロは困ってたみたいにして頬っぺたをふにゅふにゅ触ってた。
やっぱり、指がつめたかった。
冷たい僕の指先に、キーの暖かい涙が流れている。
なんだかとても悪いことをしたみたいで、泣きたくなってきた。
「ごめんな、ごめんな…」
「なんであやまるの?」
「ごめんな。。。」
僕は何かが壊れたように、詫びて抱きついていた。
「…いたいよぅ。」
「あ…!ごめんよ…」
「ねぇ、右手の薬指を出して?」
訳がわからぬまま出した右人差し指。その指をキーは…
「……タロは、心が、温かいんだよ。ね?」
舐めながら、こう言った。
もちろんそんなものは迷信だと知っていたが、
何故か救われた気がして、でも何か別の物が働いて、その指を押し込んでしまった。
雨と、飴と、一筋の水が流れた。
空は真っ暗で、部屋からは仄か(ほのか)に青い空気を感じる。
スレテオからゆったりとしたジャズが流れているが、
ここの部屋の主は若干16歳の少年、キーだ。
窓の暗闇をなぞる細い光を飴を噛み砕きながら見つめている少年・キー。
その横では親友のタロが写真を見つめていた。
チュッパの棒がめんどくさそうにタロの口元で上下する。
「……だるいね」
「うん。」
先ほどから、会話といえばこればかりである。
何故なら、会話の代わりに雨とピアノの音が部屋を飽和して漂っているからだ。
少年・キーは絵を描いていた。
なんて事の無い雨の絵。透明な絵の具を何重にも重ねている。
手を差し込めば冷たく消え入ってしまいそうな青と、
手を入れることを自制するように降る雨の筋。
少し寂しい、眠れぬ夜のような絵だ。
キーは絵の中の境界をボーっと見ていたが、厭きてしまったのだろう、
絵をテーブルから机に持って行ってしまった。
「キーちゃん、今の絵さぁ、結構良かったよ。僕はもっと見て居たかったな。」
「見てたの?」
「うん、見てた。」
「…さみしくなりそうだから、置いてきた。」
ボクはなんだか泣きたいくらい寂しかった。
だから、タロのアメを引っこぬいて勝手に舐めた。
「キー、それ僕の…」
「だって、寂しいんだもん。口も。」
「そっか…」
タロはあたまをわしゃわしゃ撫でてくれた。
でも、指が冷たかった。
「タロー…うわぁぁぁん」
なんかよくわかんないけど、とっても悲しくなって泣いちゃった。
泣いてたら、…タロがだきしめてくれた。
「どしたんだ、キー?なんで泣いてるんだ?」
「だって…さみしいんだもん」
「さみしいのか…」
「タロは一緒にいてくれるよね?」
「うん、いるよ、ほら、ね?」
タロは困ってたみたいにして頬っぺたをふにゅふにゅ触ってた。
やっぱり、指がつめたかった。
冷たい僕の指先に、キーの暖かい涙が流れている。
なんだかとても悪いことをしたみたいで、泣きたくなってきた。
「ごめんな、ごめんな…」
「なんであやまるの?」
「ごめんな。。。」
僕は何かが壊れたように、詫びて抱きついていた。
「…いたいよぅ。」
「あ…!ごめんよ…」
「ねぇ、右手の薬指を出して?」
訳がわからぬまま出した右人差し指。その指をキーは…
「……タロは、心が、温かいんだよ。ね?」
舐めながら、こう言った。
もちろんそんなものは迷信だと知っていたが、
何故か救われた気がして、でも何か別の物が働いて、その指を押し込んでしまった。
雨と、飴と、一筋の水が流れた。
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