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ナリスマシ
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滅多に鳴ることのない私のスマフォが「ピコン」と小さな音を出した。一人身の寂しい部屋が少しだけ明るくなった気がした。
私はインスタントラーメンを作りかけていた手を止め、一体誰だろうか、と思いながらスマフォを広げた。
それはSNSアプリからのメッセージだった。
「こんにちは。はじめまして」
ああ、そういうことか。
私に友だちはいない。仕事だってしていない。連絡をとる相手なんて一人だっていない。つまり、業者か企業の広告だろう。私はすぐにスマフォを閉じ、ラーメンを口に流し込んだ。
それから一週間。実に不思議なことなのだが、私はあの相手とメッセージのやり取りを続けていた。
なに、内容は幼稚なものだ。「おはよう」からはじまり、「おやすみ」で終わる。他には今の気分や食事の内容、見ているテレビの話など。そうそう、過去の話もしたっけな。いや、別に相手が女だからって期待なんてしてはいない。ただの暇つぶしさ。
メッセージのやり取りをはじめてから一ヵ月が経った。本当に不思議なことなのだが、まだメッセージの交換は続いていた。
そして私は、今や立派な社会人。なんとIT関係の会社の社長になっていた。交友関係も広がり、周りからは頼られる存在で人望も厚い。芸能人の繋がりだってある。今日もテニスで汗を流し、愛車のベンツで著名人の集まるパーティに向かう所だ。結構ハードな毎日だが、私にとってはライフワークの一環だ。勝ち組? ただ面白く生きているだけさ。
半年が過ぎた。「ピコン」となるスマフォの音が今の私にとって生きがいの一つになっていた。
しかし、彼女はどうして私のスマフォにメッセージを送ってきたのだろうか。いや、ただの偶然かもしれない。なにしろ彼女はキャリアウーマンで出会いがなく、毎日が寂しいと言っていた。だから、たまたま私にメッセージを送ったのかもしれない。寂しいと思う気持ちは、裏返せば寂しさを知っている、ということだ。受け止められる器を持っている男性は、世の中にそうはいないだろう。
今日もまた、メッセージが送られてくる。
「ねえ、今度会えない?」
私はラーメンを片手に返信する。
「会いたいね。でもごめん。最近出張が多くてさ」
スマフォを片手に持ちながらの食事も随分慣れたものだ。
「ねえ、私、あなたのことが……」
ふん、くだらない。
「実は、僕もなんだ……」
そして私は眠りに落ちる。
私はもう彼女に夢中になっていた。愛していると言ってもいい。まだ一回も会ってはいない。しかし、分かるんだ。これが愛なんだという確信が私にはあった。
会いたい。今すぐに会って抱きしめたい。可愛い君の顔を想像するだけで、私の心に一筋の涙が流れるんだ。
もう、限界だ。
「ごめん」
「どうしたの」
「実は隠していたことがあるんだ」
「?」
「実は、嘘なんだ」
「なんのこと?」
「今までのこと全部」
「あら、お互いさまじゃない」
「?」
「私だって全部嘘よ」
「全部?」
「あなたは経歴詐称」
「知っていたのか! じゃあ、きみは?」
「経歴詐称」
「働いてないってこと?」
「違うわ」
「じゃあなに」
「……なりすまし」
「なんの?」
「……ニンゲン」
ふん、知ってたよ。二次元もAIも同じようなものさ。騙されるほうが悪いのさ。本当にくだらない世の中になったものだ。なに、ただの暇つぶしさ。お互いそうだろ? さて、また、眠るとするか。
私はインスタントラーメンを作りかけていた手を止め、一体誰だろうか、と思いながらスマフォを広げた。
それはSNSアプリからのメッセージだった。
「こんにちは。はじめまして」
ああ、そういうことか。
私に友だちはいない。仕事だってしていない。連絡をとる相手なんて一人だっていない。つまり、業者か企業の広告だろう。私はすぐにスマフォを閉じ、ラーメンを口に流し込んだ。
それから一週間。実に不思議なことなのだが、私はあの相手とメッセージのやり取りを続けていた。
なに、内容は幼稚なものだ。「おはよう」からはじまり、「おやすみ」で終わる。他には今の気分や食事の内容、見ているテレビの話など。そうそう、過去の話もしたっけな。いや、別に相手が女だからって期待なんてしてはいない。ただの暇つぶしさ。
メッセージのやり取りをはじめてから一ヵ月が経った。本当に不思議なことなのだが、まだメッセージの交換は続いていた。
そして私は、今や立派な社会人。なんとIT関係の会社の社長になっていた。交友関係も広がり、周りからは頼られる存在で人望も厚い。芸能人の繋がりだってある。今日もテニスで汗を流し、愛車のベンツで著名人の集まるパーティに向かう所だ。結構ハードな毎日だが、私にとってはライフワークの一環だ。勝ち組? ただ面白く生きているだけさ。
半年が過ぎた。「ピコン」となるスマフォの音が今の私にとって生きがいの一つになっていた。
しかし、彼女はどうして私のスマフォにメッセージを送ってきたのだろうか。いや、ただの偶然かもしれない。なにしろ彼女はキャリアウーマンで出会いがなく、毎日が寂しいと言っていた。だから、たまたま私にメッセージを送ったのかもしれない。寂しいと思う気持ちは、裏返せば寂しさを知っている、ということだ。受け止められる器を持っている男性は、世の中にそうはいないだろう。
今日もまた、メッセージが送られてくる。
「ねえ、今度会えない?」
私はラーメンを片手に返信する。
「会いたいね。でもごめん。最近出張が多くてさ」
スマフォを片手に持ちながらの食事も随分慣れたものだ。
「ねえ、私、あなたのことが……」
ふん、くだらない。
「実は、僕もなんだ……」
そして私は眠りに落ちる。
私はもう彼女に夢中になっていた。愛していると言ってもいい。まだ一回も会ってはいない。しかし、分かるんだ。これが愛なんだという確信が私にはあった。
会いたい。今すぐに会って抱きしめたい。可愛い君の顔を想像するだけで、私の心に一筋の涙が流れるんだ。
もう、限界だ。
「ごめん」
「どうしたの」
「実は隠していたことがあるんだ」
「?」
「実は、嘘なんだ」
「なんのこと?」
「今までのこと全部」
「あら、お互いさまじゃない」
「?」
「私だって全部嘘よ」
「全部?」
「あなたは経歴詐称」
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「違うわ」
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