【第二部開始】オレは視えてるだけですが⁉~訳ありバーテンダーは霊感パティシエを飼い慣らしたい

凍星

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第5章 月下の胎動

◆5 蒼真の変化②

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「随分頭に血が昇ってるな……だけど、蒼真が怒ってる理由は?」
「そんなこと、分りきってるだろうが……!」
「本当にそうか――?」

急に冷静な顔になったかと思うと、ふざけた質問を投げてきた。どういうつもりなのか、清和の考えていることが全く読めない。

「――尊が嫌がっているのに、お前が勝手に術式を仕掛けようとしたからだ!」

「へえ?」と唇の端を上げ、皮肉っぽく笑う。

「嫌がってるのに――か。じゃあ、逆に訊くけど。そもそも、お前の方が先にやった事だよな?初めて会った時、本人の意思と関係なく彼に御神酒を飲ませて、昏倒させたのは一体誰だっけ?」
「……!」

言われてみれば――確かに、それはそうだった。
不意打ちな言葉に、頭を殴られたような気分になる。
失った記憶が甦るように、そのことをゆっくりと思い出す。
あの時の自分は、祓ってやりさえすれば文句はないだろう、と何の疑いもなくそう思っていたのだ。

「彼の秘密を知る事ができるなら、今すぐ僕の力を使ったって別に構わないんじゃないか?少し前の蒼真なら、多分そうしろって言ったと思うけど。なのに今は――そう思ってないんだな?」
「うっ……」

理屈で追い込まれていく感じに、息苦しさを覚え始める。
……周囲の言うことを聞かない俺を宥めるのは、昔から、いつも清和の役目だった。
だから反射的に。悔しいことに。この男の声を聞いていると。
俺は黙って言うことを聞く態勢になってしまう。

「……何が、言いたい」
「どんな理由があったって、自分以外の人間が彼の秘密に触れようとするのは嫌なんだろ?蒼真にとって尊くんは特別な存在だって、少しは自覚したらどうだ?」
「な………」

(……特別な、存在?)

単なる除霊対象者クライアント――そう言いたかったのに、すぐに言葉が出て来なかった。

「僕たち以外の人間に、蒼真が特別な感情を持つなんてね。正直……ちょっと嫉妬してるんだ、尊くんに」
「はあ!?」
「僕と由良、二人だけの蒼真だったのに……」

ううっ…と泣き真似をして、目元を手で覆う。
たちの悪い冗談だと分かっているのに、笑い飛ばせなかった。
「二人だけの蒼真」という言葉が。
子供の頃の、自分にとっても二人の存在が全てだった――そんな心の奥底にしまった感情に触れて。
一瞬、感傷的な想いに捉われた。

「……揶揄からかうのもいい加減にしろ」

真剣になってみたり、ふざけてみたり。
こっちは感情を揺さぶられっぱなしである。
……昔からそうだ。
澄ました顔をして、突然人を驚かせるようなことをする。幼い頃から、そういう所は変わらない。

「まあ家出してた時は、誰と何があったか知らないけど……それはそれとして。彼に術式を試してみたかったのは本気だよ?――でも蒼真の許可なく仕掛けたらダメってことなんだな?」
「……あいつをここに呼んだのは、俺だ」
「ふうーん、あっそう。おっかない守護神が付いちゃって、尊くんも大変だ」
「誰が守護神だ!俺はあいつの中身と敵対関係なんだぞ?そのケリがつくまで、手出し無用ってだけの話だ」
「はいはい、了解。勝手に何かしたら今度こそ殺されそうだから、もうやらないよ」

清和が大仰に肩を竦めた。

「蒼真にとって彼がどんな存在なのか……もう一度、よーく考えてみたら?」

清和が、たまに見せる真剣な表情と言葉。普段、軽いノリで調子のいいことを言っているだけに、ドキリとさせられる。

「――よし、お説教タイムは以上。年長者の意見は尊重するように」

………全く、コイツは。
俺は心の中で悪態をく。
煙に巻かれた。そんな気分だ。
あんなに怒りを感じていたのに。
いつの間にか、すっかり搔き消されてしまっていることに納得がいかなかった。

兄代わりのこの男は、本当に、いつもいつもズルい。
反抗的な自分を従わせる才能を生まれつき持っていて……こうやっていつまでも、首根っこを押さえられたままかと思うと、複雑だ。
6歳の頃からの刷り込みは、そうそう消えるものではない、ということか――


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