オレは視えてるだけですが⁉~訳ありバーテンダーは霊感パティシエを飼い慣らしたい

凍星

文字の大きさ
上 下
23 / 79
第2章 訳ありバーテンダーとパティシエの秘密

◆13 正直な気持ち

しおりを挟む
心臓の音が、ずっとうるさい。
こんなことが現実に起きるなんて信じられなかった。
蒼真の顔に後光というか、何というか、急に光がさして見える。

「まぁ、怖い思いをさせたのは、悪かった。普段、この店にはそういうモノが入れないようになっているのに、お前がしれっとここに入って来たから……つい後先考えずに、反射的に動いてしまった」

「えっ、あっ、イヤ……その、なんて言っていいか」

あああ……
どうしよう……
俺、絶対、昏睡強盗か何かだと思って、めっちゃ疑いの目で見てました……!!
気まずっ……ごめんなさい……!!

だって黒ずくめで、イケメンだけどちょっと強面で、何か近寄りがたい雰囲気で。
得体が知れないとか、危ない奴とか、普通に思ってたしね!?
……あ、イヤでも危ない人なのは確かかも……?
でもでも結局、俺のせいで無茶してたってことじゃん……!!?

――尊がパニックになりながら脳内で必死に考えていたこの間、約3秒。

「まぁ、俺がそう言ってみた所で、証拠も何もない。それをお前が信じるかどうかは、そっちの勝手だけどな」

蒼真はそんな突き放したような言葉を使ってくる。

そういう態度が逆に、嘘を言っていないという閃きのような確信を――尊に与えた。
こちらを騙そうとする人は、色々な情報を出してきて、とてもよく喋る。巧みな話術で親密な空気をつくり、自分の世界に引き寄せようとすることが多い。

蒼真には全くそんな素振りがなく、ぶっきらぼうで、ただ事実だけを言っている雰囲気があって、その感じが逆に正直な気がしたし、

「どうせ信じない」

そう思い込んでいるようにも見えて。
自分と同じような経験を何度もしているからなのか、ちょっと頑なで、不器用そうな人柄が伝わってきた。

「しっ、」
「……し?」

ワナワナと震えながら、ガッ!と蒼真の手を握りしめた。
ぎょっとして身体を引こうとするのも構わず、顔を近付けて、その瞳を見ながら尊は自分の想いをぶつける。

「信じる……!信じます!!だって今まで、俺に憑いてる霊の特徴を、正しく間違わずに言い当てた人なんて……誰一人として、いなかったんだから!!」
「……!?」
「スゴい!スゴいんだね、久我さんて……!!」
「は?なっ……何言って……」

尊の態度が突然変わり、熱量に溢れた褒め言葉を浴びせられ――蒼真は唖然とし、言葉を失っていた。どう応えたらいいのか全く分からない……!と顔に書いてある。カチコチに固まってしまった。
だが、熱くなった尊はそれにも構わず、手を握ったまま話し続けた。

「だって、こんな面倒なことせずにスルーしたって良かったのに……それでも彼女のこと救ってあげたかった、ってことでしょ!?情けないけど、俺はいつも引き寄せるだけで何も出来なくて、それが辛かったから……」

ちゃんと気持ちを伝えたくて蒼真の目を見詰めたら、思いのほか、真剣な視線がこちらに向けられていて、尊の言葉に力がこもる。

「ありがとう。本当にスゴいと思うし、なんて言うか、その――気持ちが嬉しいなって」

そんな言葉がポロリと、こぼれてしまう。
口にしてからしまったと思い、急に恥ずかしくなって、パッと目を伏せた。

(会ったばかりで突然こんなこと言われたら、普通引くよな……!?)

すっかりハイテンションになっていたのに、突然理性が戻ってきてしまった。冷汗をかきながら、恐る恐る、顔を上げてみると――

これまでずっとポーカーフェイスを貫いていたバーテンダーは、そこにはいなかった。

「い、いきなり、何を……」

目を見開き、顔を赤くして、ちょっとたじろぐように尊を見ている。
それは、退魔師とかバーテンダーとか、そういう肩書きは全然関係ない――素の「久我蒼真」そのまま。
という感じで。
……明らかに、慌てているように見えた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

千里香の護身符〜わたしの夫は土地神様〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
キャラ文芸
ある日、多田羅町から土地神が消えた。 天候不良、自然災害の度重なる発生により作物に影響が出始めた。人口の流出も止まらない。 日照不足は死活問題である。 賢木朱実《さかきあけみ》は神社を営む賢木柊二《さかきしゅうじ》の一人娘だ。幼い頃に母を病死で亡くした。母の遺志を継ぐように、町のためにと巫女として神社で働きながらこの土地の繁栄を願ってきた。 ときどき隣町の神社に舞を奉納するほど、朱実の舞は評判が良かった。 ある日、隣町の神事で舞を奉納したその帰り道。日暮れも迫ったその時刻に、ストーカーに襲われた。 命の危険を感じた朱実は思わず神様に助けを求める。 まさか本当に神様が現れて、その危機から救ってくれるなんて。そしてそのまま神様の住処でおもてなしを受けるなんて思いもしなかった。 長らく不在にしていた土地神が、多田羅町にやってきた。それが朱実を助けた泰然《たいぜん》と名乗る神であり、朱実に求婚をした超本人。 父と母のとの間に起きた事件。 神がいなくなった理由。 「誰か本当のことを教えて!」 神社の存続と五穀豊穣を願う物語。 ☆表紙は、なかむ楽様に依頼して描いていただきました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

椿の国の後宮のはなし

犬噛 クロ
キャラ文芸
※4話は2/25~投稿予定です。間が空いてしまってすみません…! 架空の国の後宮物語。 若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。 有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。 しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。 幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……? あまり暗くなり過ぎない後宮物語。 雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。 ※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。

後宮の才筆女官 

たちばな立花
キャラ文芸
後宮の女官である紅花(フォンファ)は、仕事の傍ら小説を書いている。 最近世間を賑わせている『帝子雲嵐伝』の作者だ。 それが皇帝と第六皇子雲嵐(うんらん)にバレてしまう。 執筆活動を許す代わりに命ぜられたのは、後宮妃に扮し第六皇子の手伝いをすることだった!! 第六皇子は後宮内の事件を調査しているところで――!?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...