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*30 鏡のかけらを溶かすには②

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苦手な方、年齢制限など、閲覧にはご注意ください。

* * *

――泉水が、自分を欲しいと言っている。

その事実に蓮の身体は熱くなった。
想い人に、どうにかして欲しいと懇願され、嫌と言える男がいるだろうか?

呼吸が苦しくなるのを感じながら、泉水の身体をぐいと引き寄せた。
右京に乱暴されたせいで、ボタンのないシャツの胸元が大きく開いている。その姿は、蓮の心にともった欲情に新たな火種を落とす。他の男にどうにかされそうだったと思い出すだけで、腕に力がこもった。

「手加減、できないかも」
「いいよ……蓮くんの好きにして」

想いが高ぶって強く抱きしめた。
“好きにしていい”だなんて――この人は本当に、どうなるか分かって言っているんだろうか……と逆に心配になる。
右の掌を、開いた胸元に這わせた。夢にまで見たその感触に、蓮の体温がまた上がる。
滑らかな肌を辿り、胸の突起に触れる。親指で優しく捏ねるように愛撫すると、泉水の口から声が漏れた。

「ん…っ」

少しの刺激で感じてしまい、それが泉水の羞恥心を煽ったらしい。恥じらうように横を向くその反応に、蓮の方が堪らなくなる。
目の前に晒された無防備な首筋に、噛みつくようにキスをした。
一緒に出掛けた時に目に焼き付いた、白い陶器のような肌に舌を這わせる。
……ずっとこうしたかった――と。
蓮の身体の奥から、これまで抑えていた強い劣情が、少しずつ、せり上がってくる。

人差し指と親指で敏感になった乳首をキツく抓ると、反射的にあっと声を上げ身体を震わせた。そのまま捏ねるように弄び続ける。

「あっ、あ」

泉水のその反応の良さに、蓮は興奮を隠せなくなっていく。
もう片方の突起に顔を寄せて、口に含んだ。

「んんっ」

舌先で舐め上げると、口の中できゅっとそれは硬さを増した。唇で啄み、飴を転がすように愛撫して、その弾力を蓮は思うさま愉しんだ。
舌と指で両方の胸を同時に弄られると、泉水はそれだけで息も絶え絶えになり、もう立っていられなくなりそうだった。

「……気持ち良さそうだね、泉水さん」

意地の悪い、けれど優しい声が、泉水の感情を煽っていく。恥ずかしさから片手を挙げて顔を隠し、蓮の視線から逃れようとする。
よろける身体を両手で支えられてテーブルの上に座るよう導かれたので、ゆっくりと腰を下ろした。

「そういうこと、言わないでいいから……」
「どうして?だって泉水さんに気持ちいいって思ってもらえなきゃ、意味がないでしょ?」

そうだけど、でも、と抗議しようとする唇を塞がれた。
唇を割って舌が滑り込み、泉水の舌を捉えて、強引に絡む。
これまで以上に深い口付けに、眩暈がした。
鼓動が跳ね上がり、呼吸が苦しい。
どちらのものか分からない唾液が、泉水の唇の端から伝い落ちる。
熱いぬめりが絡み合う感触が心地良すぎて、夢中で蓮の舌を追った。

そうしているうちにベルトを外されている事に、泉水はしばらくしてから気付いた。身体の下から引き抜かれたパンツが、床にするりと落ちる。
感じすぎて、下着の中ですっかり硬くなった下腹部が視界に晒されて――
反射的に蓮の顔をみると、その顔は自分以上に欲望に彩られていて。
欲しいものを見つけたような悪戯っぽい笑みを泉水に向けてくる。

羞恥心すらお互いを興奮させる火種になると――初めて知った。

(こんなこと……初めてだ)

――興奮している相手と、自分を目にすると、嫌悪感を覚える。

それが、これまでの泉水だったのだ。
心が追い付かないのに、身体だけ興奮している自分が、ひどく滑稽に思えたあの日の記憶が――いつまでも拭えなかった。

それが、今は。

心の底から相手が欲しいと思っている自分は。

何のブレーキも働かない。
今すぐ、滅茶苦茶にして欲しいような気分だった。

「ちゃんと感じられてる、よね」

蓮の人差し指が、下着越しに泉水の欲望に触れる。
その小さな刺激だけで、びくっと身体が震えた。

「蓮、くん……」

(感じすぎてツラいくらいだ)

蓮はすぐに触れて来ない。
指の背でそっと撫でたりして、泉水の反応を愉しんでいる。

「っ……」
「どうして欲しい?」
「だから、そういうことっ……」
「……泉水さんの口から、聞きたいな」

蓮の顔が、下腹部に近付いた。
が、唇を落としたのは内腿の柔らかい部分だった。
下着の縁だとか、感じやすい場所にキスの雨を降らせる。

「やっ……もう」

痕が付きそうなくらい、時々強く吸われる。
舌先が唾液の跡を引きながら、股から腿、腿から膝へと、段々下に降りていく。
気付けば、靴と靴下も取り去られて、いつの間にか、シャツと下着だけの姿にされた。

「身体中、全部キスしたい」

ふざけているのか本気なのか、蓮の愛撫とキスは足先にまで、辿り着く。
持ち上げられた左足の甲に、恭しく口付けられて――
泉水の身体はびくびくと震え続け、全身の力が抜けてしまう。
上半身がテーブルの上に仰向けに倒れて、俎上の鯉のような状態になった。

「もう、いいから……っ」
「キスは嫌?」
「君のキスは、好きだけど」
「けど?」
「………」

どうも蓮は言葉で責めるのが好きらしく、泉水を困らせる。
もう本当に、意地が悪いと思ってしまうが、覆いかぶさるように自分を見下ろしてくるその瞳に、上から下まで全身を見詰められていると……早くどうにかして欲しい、という気持ちの方が勝った。
がばっと起き上がると、蓮の腕を掴んで引き寄せる。
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