カフェと雪の女王と、多分、恋の話

凍星

文字の大きさ
上 下
31 / 36

*30 鏡のかけらを溶かすには②

しおりを挟む
ここから性的描写が入ります。
苦手な方、年齢制限など、閲覧にはご注意ください。

* * *

――泉水が、自分を欲しいと言っている。

その事実に蓮の身体は熱くなった。
想い人に、どうにかして欲しいと懇願され、嫌と言える男がいるだろうか?

呼吸が苦しくなるのを感じながら、泉水の身体をぐいと引き寄せた。
右京に乱暴されたせいで、ボタンのないシャツの胸元が大きく開いている。その姿は、蓮の心にともった欲情に新たな火種を落とす。他の男にどうにかされそうだったと思い出すだけで、腕に力がこもった。

「手加減、できないかも」
「いいよ……蓮くんの好きにして」

想いが高ぶって強く抱きしめた。
“好きにしていい”だなんて――この人は本当に、どうなるか分かって言っているんだろうか……と逆に心配になる。
右の掌を、開いた胸元に這わせた。夢にまで見たその感触に、蓮の体温がまた上がる。
滑らかな肌を辿り、胸の突起に触れる。親指で優しく捏ねるように愛撫すると、泉水の口から声が漏れた。

「ん…っ」

少しの刺激で感じてしまい、それが泉水の羞恥心を煽ったらしい。恥じらうように横を向くその反応に、蓮の方が堪らなくなる。
目の前に晒された無防備な首筋に、噛みつくようにキスをした。
一緒に出掛けた時に目に焼き付いた、白い陶器のような肌に舌を這わせる。
……ずっとこうしたかった――と。
蓮の身体の奥から、これまで抑えていた強い劣情が、少しずつ、せり上がってくる。

人差し指と親指で敏感になった乳首をキツく抓ると、反射的にあっと声を上げ身体を震わせた。そのまま捏ねるように弄び続ける。

「あっ、あ」

泉水のその反応の良さに、蓮は興奮を隠せなくなっていく。
もう片方の突起に顔を寄せて、口に含んだ。

「んんっ」

舌先で舐め上げると、口の中できゅっとそれは硬さを増した。唇で啄み、飴を転がすように愛撫して、その弾力を蓮は思うさま愉しんだ。
舌と指で両方の胸を同時に弄られると、泉水はそれだけで息も絶え絶えになり、もう立っていられなくなりそうだった。

「……気持ち良さそうだね、泉水さん」

意地の悪い、けれど優しい声が、泉水の感情を煽っていく。恥ずかしさから片手を挙げて顔を隠し、蓮の視線から逃れようとする。
よろける身体を両手で支えられてテーブルの上に座るよう導かれたので、ゆっくりと腰を下ろした。

「そういうこと、言わないでいいから……」
「どうして?だって泉水さんに気持ちいいって思ってもらえなきゃ、意味がないでしょ?」

そうだけど、でも、と抗議しようとする唇を塞がれた。
唇を割って舌が滑り込み、泉水の舌を捉えて、強引に絡む。
これまで以上に深い口付けに、眩暈がした。
鼓動が跳ね上がり、呼吸が苦しい。
どちらのものか分からない唾液が、泉水の唇の端から伝い落ちる。
熱いぬめりが絡み合う感触が心地良すぎて、夢中で蓮の舌を追った。

そうしているうちにベルトを外されている事に、泉水はしばらくしてから気付いた。身体の下から引き抜かれたパンツが、床にするりと落ちる。
感じすぎて、下着の中ですっかり硬くなった下腹部が視界に晒されて――
反射的に蓮の顔をみると、その顔は自分以上に欲望に彩られていて。
欲しいものを見つけたような悪戯っぽい笑みを泉水に向けてくる。

羞恥心すらお互いを興奮させる火種になると――初めて知った。

(こんなこと……初めてだ)

――興奮している相手と、自分を目にすると、嫌悪感を覚える。

それが、これまでの泉水だったのだ。
心が追い付かないのに、身体だけ興奮している自分が、ひどく滑稽に思えたあの日の記憶が――いつまでも拭えなかった。

それが、今は。

心の底から相手が欲しいと思っている自分は。

何のブレーキも働かない。
今すぐ、滅茶苦茶にして欲しいような気分だった。

「ちゃんと感じられてる、よね」

蓮の人差し指が、下着越しに泉水の欲望に触れる。
その小さな刺激だけで、びくっと身体が震えた。

「蓮、くん……」

(感じすぎてツラいくらいだ)

蓮はすぐに触れて来ない。
指の背でそっと撫でたりして、泉水の反応を愉しんでいる。

「っ……」
「どうして欲しい?」
「だから、そういうことっ……」
「……泉水さんの口から、聞きたいな」

蓮の顔が、下腹部に近付いた。
が、唇を落としたのは内腿の柔らかい部分だった。
下着の縁だとか、感じやすい場所にキスの雨を降らせる。

「やっ……もう」

痕が付きそうなくらい、時々強く吸われる。
舌先が唾液の跡を引きながら、股から腿、腿から膝へと、段々下に降りていく。
気付けば、靴と靴下も取り去られて、いつの間にか、シャツと下着だけの姿にされた。

「身体中、全部キスしたい」

ふざけているのか本気なのか、蓮の愛撫とキスは足先にまで、辿り着く。
持ち上げられた左足の甲に、恭しく口付けられて――
泉水の身体はびくびくと震え続け、全身の力が抜けてしまう。
上半身がテーブルの上に仰向けに倒れて、俎上の鯉のような状態になった。

「もう、いいから……っ」
「キスは嫌?」
「君のキスは、好きだけど」
「けど?」
「………」

どうも蓮は言葉で責めるのが好きらしく、泉水を困らせる。
もう本当に、意地が悪いと思ってしまうが、覆いかぶさるように自分を見下ろしてくるその瞳に、上から下まで全身を見詰められていると……早くどうにかして欲しい、という気持ちの方が勝った。
がばっと起き上がると、蓮の腕を掴んで引き寄せる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

おかわり

ストロングベリー
BL
恐ろしいほどの美貌と絶品の料理で人気のカフェバーのオーナー【ヒューゴ】は、晴れて恋人になった【透】においしい料理と愛情を注ぐ日々。 男性経験のない透とは、時間をかけてゆっくり愛し合うつもりでいたが……透は意外にも積極的で、性来Dominantなヒューゴを夜ごとに刺激してくる。 「おいしいじかん」の続編、両思いになった2人の愛し合う姿をぜひ♡

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...