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第5節
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7月も最終週に入ったが、自動車の販売実績はかんばしくなかった。毎日、各自動車メーカーがたくさんテレビCMを流しているにもかかわらず、客足は鈍い。
今岡孝一自身、まだ自家用車を持っていなかった。
「自動車メーカーで勤めている以上は、車を買え」
「最近の若いヤツは、物欲がないのか」
「お前はメガネをかけていないメガネ屋から、メガネを買いたいか?」
現在の上司である自動車販売会社の社長や課長は、車を買うよう、孝一に圧力をかけてくる。しかし、車検代や駐車場代など自動車の維持費はバカにならない。また、駅から10分のワンルームマンションに住んでいると、車を持っていなくても生活で困ることはない。都心にはすぐに出られるし、デートで車を使いたいときには、レンタカーを借りればいいのだ。
ただ肝心のデートすべき相手、藤本真奈からの連絡が途切れてしまっていた。前回のデートのあと、何度かはメールのやりとりをした。特に何も問題はなかったように思えた。しかし、そのあと1週間ほど彼女からの返事が止まっている。
正確には「既読」と表示されているので、孝一からの文面は読んでもらえているようである。それなのに、真奈はメールを書いてはくれないのだ。こんなことは今までないことだった。
『仕事が忙しいんだろうな』
孝一がそう思おうとしたある日、真奈からメールが届いた。
あまりにも客が来ず、書類整理をしていると、デスクの上に置いていた孝一のスマートフォンが短く振動した。カバーを開くと、「藤本真奈」とメールの着信表示が出ていた。慌ててこっそりとメールを開いた。
「えっ!」
思わず声をあげて、イスから立ちあがってしまった。
「もう会わない」
短い一文が、メールに書かれていた。
「すみません。ちょっと緊急の連絡が」
孝一は課長にそう言って、店舗の裏に出た。課長の眉をひそめる顔も、焼くような暑さも気にしていられなかった。すぐに返信する。
「いったいどうしたんだ? 何かあった?」
孝一が送ったメールは、すぐに「既読」になった。
今、彼女はいったいどんな文章を入力しているのだろうか。
もどかしい沈黙が続く。
これまで孝一は女を振ることはあっても、女に振られるようなことはなかった。こんなときにどう振る舞っていいのかよくわからない。
『真奈の機嫌を損ねるようなことを、何かしただろうか?』
考えを巡らせてみたが、理由は思い浮かばない。2回ともデートはうまくいったし、デート後のメールも機嫌はよさそうだった。お盆休みのデートの話題まで出たのだ。
『それなのになぜ?』
メールの返信を待つ間、イライラが募る。
すると、メールの画面が動いた。真奈からの文面が表示される。
「変な女から、こんな手紙が来たの」
『変な女? 手紙?』
孝一の表情が険しくなる。
真奈はすぐに画像を送ってきた。画像を拡大して見ると、震える文字でこう書かれてあった。
今岡孝一は私の彼氏だ
だからお前は孝一と別れろ
別れなければお前に天罰が下る
句読点のない不気味な文章だった。孝一の表情はいっそう険しくなる。
「変な……女……」
あの女の顔を思い浮かべないわけにはいかなかった。真奈とセックスしたあの夜、窓の外から101号室を見つめていた、あの怒りに満ちた顔を。
真奈は、さらにもう1枚画像を寄こした。その画像を見て、孝一は悲鳴を上げた。
裸で交わる2人の男女が写っていた。
後背位で、男が女を後ろから突いている。
男は孝一だった。
孝一に後ろから挿入されているのは、あの宣教女だった。
また大きく目を見開いて、写真の中からこちらを見つめていた。
口角をくいと上げ、歯を見せている。
笑顔にしては、不自然で不気味だった。
孝一は体から血の気が引いていくのがわかった。スマートフォンを握る手に力が入らない。
『なんなんだ……この写真……』
もちろんそんな写真を撮られた記憶はないし、女と後背位で交わった記憶もない。よく見ると、孝一の体ではないようだった。別の男の体と、孝一の顔写真を合成したのらしい。
『俺の顔写真は、いつ、どこで撮られたんだ?』
そう考えると、全身が冷たく感じられた。
写真の中の孝一は、穏やかに微笑んでいた。
ただ、どこか違和感がある。
『女の体も合成なのだろうか?』
ガリガリに痩せ細った体が四つん這いになり、骨ばった尻を突き出している。もしかしたら女の体は本物なのかもしれない。
今度は吐き気がした。胃液が込み上げてくるのが感じられる。
孝一が混乱していると、真奈がメールの続きを寄こした。
「消印がなく、私の家のポストの直接入れたみたい」
101号室の前に立ち尽くす女の姿が、孝一の脳裏に浮かんだ。
「やばいヤツとは関わりたくないの。孝一には悪いけど、私ともう会わないで」
「そ、そんな……」
戸惑いと落胆の声が漏れた。合コンで出会い付き合い始めたばかりとはいえ、そんなに簡単に別れを切り出されるとは思わなかった。真奈との関係は、それくらいの細い絆でしかなかったのか。
今度は女に対して、怒りがふつふつと込み上げてきた。
『そうだ……』
真奈とデートした夜、女から着信があったのだ。女の電話番号が、着信履歴に残っているはずである。
『あった』
怒りを女にぶつけずにはいられなかった。孝一はすぐに女の電話番号に発信した。
発信音が流れる。
女はなかなか出ない。
いらだちがさらに高まっていく。
しかし、今さらながら、孝一の中に1つの疑問が思い浮かんだ。
『どうして俺の電話番号を知っているんだ?』
その瞬間、電話がつながった。
「お、おい。お前か」
女をどう呼んでいいのかわからない。呼びかけてみたが、前回と同様、女は答えない。
「聞こえてるんだろ。お前、真奈に変な手紙を送っただろ」
耳を澄ましてみたが、やはり電話の向こう側からは、小さなノイズしか聞こえてこない。
孝一は既視感に襲われた。以前、女が電話をかけてきたとき、孝一のマンションの外から電話をかけて101号室を見つめていた。
『今、こいつはどこで電話に出ているんだ?』
孝一はゾッとして、周囲を見回した。
店舗の裏側には、駐車場が広がっているだけだった。
女の姿は見えない。
さすがに考えすぎだったか。また臆病になっている自分に気付き、ますますいらだつ。
「お前のせいで、真奈が怯えて別れると言い出したじゃないか」
ようやく女が反応を見せた。
震える音が、断続的にスマートフォンから聞こえた。
初めは何かを引っ掻いたり引きずったりしているような音に聞こえた。
しかし、それは女の引きつった笑い声であることがわかった。
「あの女、別れてくれたんだ」
女の嬉しそうな声が聞こえた。
孝一は全身に鳥肌が立った。
女はなおも嬉しそうに言葉を続ける。
「あんな女と別れてくれて、ありがとう。孝一」
孝一を下の名前で呼んだ。自分の名を直接呼ばれて、背筋をそっと撫でられたような感覚に陥る。
「な、何言ってんだよ……お前のやってること、脅迫だぞ。犯罪だぞ」
おびえる心を振り切るように、大きな声で言った。
しかし、女は依然、喘息のような笑い声を上げている。耳にしている孝一まで息苦しく感じさせるような笑いだった。
「うれしいよ、孝一」
「……え?」
なぜ女は笑っていられるのだろうか。
孝一の頭は混乱する。そして、もう1つの疑問が頭の中に浮かぶ。
『待てよ、電話番号以前に、なんでこいつは俺の名前を知っているんだ?』
そんな孝一の困惑も気に留めず、女はただただ自分の想いを伝え続ける。
「孝一から連絡してきてくれて、うれしいよ」
女はそう言って、笑いながら電話を切った。
「やばいヤツ」
真奈はそう表現した。その通り、「やばいヤツ」だった。まったく話がかみ合わない。
孝一の中で、怒りは恐怖に転じはじめていた。
今岡孝一自身、まだ自家用車を持っていなかった。
「自動車メーカーで勤めている以上は、車を買え」
「最近の若いヤツは、物欲がないのか」
「お前はメガネをかけていないメガネ屋から、メガネを買いたいか?」
現在の上司である自動車販売会社の社長や課長は、車を買うよう、孝一に圧力をかけてくる。しかし、車検代や駐車場代など自動車の維持費はバカにならない。また、駅から10分のワンルームマンションに住んでいると、車を持っていなくても生活で困ることはない。都心にはすぐに出られるし、デートで車を使いたいときには、レンタカーを借りればいいのだ。
ただ肝心のデートすべき相手、藤本真奈からの連絡が途切れてしまっていた。前回のデートのあと、何度かはメールのやりとりをした。特に何も問題はなかったように思えた。しかし、そのあと1週間ほど彼女からの返事が止まっている。
正確には「既読」と表示されているので、孝一からの文面は読んでもらえているようである。それなのに、真奈はメールを書いてはくれないのだ。こんなことは今までないことだった。
『仕事が忙しいんだろうな』
孝一がそう思おうとしたある日、真奈からメールが届いた。
あまりにも客が来ず、書類整理をしていると、デスクの上に置いていた孝一のスマートフォンが短く振動した。カバーを開くと、「藤本真奈」とメールの着信表示が出ていた。慌ててこっそりとメールを開いた。
「えっ!」
思わず声をあげて、イスから立ちあがってしまった。
「もう会わない」
短い一文が、メールに書かれていた。
「すみません。ちょっと緊急の連絡が」
孝一は課長にそう言って、店舗の裏に出た。課長の眉をひそめる顔も、焼くような暑さも気にしていられなかった。すぐに返信する。
「いったいどうしたんだ? 何かあった?」
孝一が送ったメールは、すぐに「既読」になった。
今、彼女はいったいどんな文章を入力しているのだろうか。
もどかしい沈黙が続く。
これまで孝一は女を振ることはあっても、女に振られるようなことはなかった。こんなときにどう振る舞っていいのかよくわからない。
『真奈の機嫌を損ねるようなことを、何かしただろうか?』
考えを巡らせてみたが、理由は思い浮かばない。2回ともデートはうまくいったし、デート後のメールも機嫌はよさそうだった。お盆休みのデートの話題まで出たのだ。
『それなのになぜ?』
メールの返信を待つ間、イライラが募る。
すると、メールの画面が動いた。真奈からの文面が表示される。
「変な女から、こんな手紙が来たの」
『変な女? 手紙?』
孝一の表情が険しくなる。
真奈はすぐに画像を送ってきた。画像を拡大して見ると、震える文字でこう書かれてあった。
今岡孝一は私の彼氏だ
だからお前は孝一と別れろ
別れなければお前に天罰が下る
句読点のない不気味な文章だった。孝一の表情はいっそう険しくなる。
「変な……女……」
あの女の顔を思い浮かべないわけにはいかなかった。真奈とセックスしたあの夜、窓の外から101号室を見つめていた、あの怒りに満ちた顔を。
真奈は、さらにもう1枚画像を寄こした。その画像を見て、孝一は悲鳴を上げた。
裸で交わる2人の男女が写っていた。
後背位で、男が女を後ろから突いている。
男は孝一だった。
孝一に後ろから挿入されているのは、あの宣教女だった。
また大きく目を見開いて、写真の中からこちらを見つめていた。
口角をくいと上げ、歯を見せている。
笑顔にしては、不自然で不気味だった。
孝一は体から血の気が引いていくのがわかった。スマートフォンを握る手に力が入らない。
『なんなんだ……この写真……』
もちろんそんな写真を撮られた記憶はないし、女と後背位で交わった記憶もない。よく見ると、孝一の体ではないようだった。別の男の体と、孝一の顔写真を合成したのらしい。
『俺の顔写真は、いつ、どこで撮られたんだ?』
そう考えると、全身が冷たく感じられた。
写真の中の孝一は、穏やかに微笑んでいた。
ただ、どこか違和感がある。
『女の体も合成なのだろうか?』
ガリガリに痩せ細った体が四つん這いになり、骨ばった尻を突き出している。もしかしたら女の体は本物なのかもしれない。
今度は吐き気がした。胃液が込み上げてくるのが感じられる。
孝一が混乱していると、真奈がメールの続きを寄こした。
「消印がなく、私の家のポストの直接入れたみたい」
101号室の前に立ち尽くす女の姿が、孝一の脳裏に浮かんだ。
「やばいヤツとは関わりたくないの。孝一には悪いけど、私ともう会わないで」
「そ、そんな……」
戸惑いと落胆の声が漏れた。合コンで出会い付き合い始めたばかりとはいえ、そんなに簡単に別れを切り出されるとは思わなかった。真奈との関係は、それくらいの細い絆でしかなかったのか。
今度は女に対して、怒りがふつふつと込み上げてきた。
『そうだ……』
真奈とデートした夜、女から着信があったのだ。女の電話番号が、着信履歴に残っているはずである。
『あった』
怒りを女にぶつけずにはいられなかった。孝一はすぐに女の電話番号に発信した。
発信音が流れる。
女はなかなか出ない。
いらだちがさらに高まっていく。
しかし、今さらながら、孝一の中に1つの疑問が思い浮かんだ。
『どうして俺の電話番号を知っているんだ?』
その瞬間、電話がつながった。
「お、おい。お前か」
女をどう呼んでいいのかわからない。呼びかけてみたが、前回と同様、女は答えない。
「聞こえてるんだろ。お前、真奈に変な手紙を送っただろ」
耳を澄ましてみたが、やはり電話の向こう側からは、小さなノイズしか聞こえてこない。
孝一は既視感に襲われた。以前、女が電話をかけてきたとき、孝一のマンションの外から電話をかけて101号室を見つめていた。
『今、こいつはどこで電話に出ているんだ?』
孝一はゾッとして、周囲を見回した。
店舗の裏側には、駐車場が広がっているだけだった。
女の姿は見えない。
さすがに考えすぎだったか。また臆病になっている自分に気付き、ますますいらだつ。
「お前のせいで、真奈が怯えて別れると言い出したじゃないか」
ようやく女が反応を見せた。
震える音が、断続的にスマートフォンから聞こえた。
初めは何かを引っ掻いたり引きずったりしているような音に聞こえた。
しかし、それは女の引きつった笑い声であることがわかった。
「あの女、別れてくれたんだ」
女の嬉しそうな声が聞こえた。
孝一は全身に鳥肌が立った。
女はなおも嬉しそうに言葉を続ける。
「あんな女と別れてくれて、ありがとう。孝一」
孝一を下の名前で呼んだ。自分の名を直接呼ばれて、背筋をそっと撫でられたような感覚に陥る。
「な、何言ってんだよ……お前のやってること、脅迫だぞ。犯罪だぞ」
おびえる心を振り切るように、大きな声で言った。
しかし、女は依然、喘息のような笑い声を上げている。耳にしている孝一まで息苦しく感じさせるような笑いだった。
「うれしいよ、孝一」
「……え?」
なぜ女は笑っていられるのだろうか。
孝一の頭は混乱する。そして、もう1つの疑問が頭の中に浮かぶ。
『待てよ、電話番号以前に、なんでこいつは俺の名前を知っているんだ?』
そんな孝一の困惑も気に留めず、女はただただ自分の想いを伝え続ける。
「孝一から連絡してきてくれて、うれしいよ」
女はそう言って、笑いながら電話を切った。
「やばいヤツ」
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