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57話 ヴァイオレット・ダーティートード

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「あそこが泉やで」


 イズミンの案内で『女神の森』を進み、遂に泉を発見する。
途中で魔物に襲われるかと思ったけど、元々この森に魔物は棲みついていないらしく、ここまでは安全に進むことが出来た。


「もし魔物が出てきた場合、そいつこそがウルーソの使役するヴァイオレット・ダーティートードってことだね」


「怖いなあ……嫌だなあ……」


「ベルベルちゃんなら大丈夫さ」


 女神の森にある泉はかなり広く、そして何より、色とりどりの木々に囲まれていてとっても神秘的。
たしかにこれなら女神様が現れた、みたいな言い伝えがあるのも分かるかも。真実かどうかは置いといて。


「泉の水、なんだか濁ってますね……」


「水質がかなり悪くなってる。普段だったらそのまま飲めるくらい綺麗な水なんだけどね」


 女神が降臨したと言い伝えられているだけあって、ミミエリ様の教会の信者の方が巡礼に来たりもするらしい。
その時はここの水を汲んで、聖水として持ち帰るのだとか。


「ちなみにこの泉の水はビャクヤの教会が管理しててね、持ち帰り用の聖水瓶を1本1万エルで好評販売中さ」


「教会ってそういうとこありますよね」


 魔法使いが多く、あまり信仰に興味が無い人が多いビャクヤの教会は、この聖水瓶の販売で生計を立てているらしい。
……そんなことしてるからミミエリ様が怒って泉の水が濁っちゃったんじゃないかしら。


「カムバックあの頃の泉やで」


「そうね。イズミンの為にも綺麗にしてあげたいわね」


 そもそもなんでこんなに水質が悪くなってしまったのだろう……と考えていた時だった。


 ブクブク……ブクブク、ブク……


「あら? 泉からなにか、泡みたいなのが」


 ザッバアアアアアン!!


「グエグエグエエエエエエ!!」


「きゃああああああああ!?」


「あ、コイツがヴァイオレット・ダーティートードだね」


「またこのパターンなの!?」


 女神の泉から巨大なカエルが跳び出してきた。


 __ __


「なるほど、やっぱりコイツのせいで泉が汚染されてたんだね」


「なんでまたカエルなんですか! なんでまたカエルなんですか!」


「落ち着くやで」


 ヴァイオレット・ダーティートード。
なんというか……全身が毒々しい紫と黒のマダラ模様のめちゃめちゃ大きいカエル。
前にミオカンデ湖で討伐したダックフロッグよりも更に一回り大きい気がする。


「討伐依頼が出たらAランク……いや、下手したらSランク級の魔物だよ」


「よし! とりあえずこの場は逃げて、街のギルドに報告しましょう! ねっアサツキさん、ねっ!」


「何言ってるんだい、そんなことをしたら応援を呼ばれて倒した時の分け前が減るじゃないか」


「倒せなくて死んじゃうよりマシですよ!」


「ベルベルちゃん、人生は冒険だよ?」


 アサツキさんは冒険のやり時をちゃんと見極めるべきだわ。


「グエ……グエ……グエエ」


「……ん?」


 そんな感じでアサツキさんと言い合ってたら、ヴァイオレット・ダーティートードが何やら口を膨らましてこちらに身体を向け直した。


「っ!! ベルベルちゃんまずい! 避けるんだっ!!」


「えっ!?」


「……!!」


「グエエエエエエエ!!」


 アサツキさんの叫び声と、わたしを乗せたデュラちゃんが横に跳ぶのと同時に、ベッシャアアアアアア!! とヴァイオレット・ダーティートードの口から謎の液体が発射される。


「ポイズンボムか……通常のダーティートードよりも威力が上がってる。いやー危ない危ない、あれに当たってたら一瞬で溶けてたね。服とか」


「服だけで済むんですか!? それも嫌だけど!」


 ポイズンボムがかかった泉近くの木が溶けて倒壊している。
こ、これはさすがにシャレにならないわ……!


「アサツキさん、逃げましょう!!」


「大丈夫大丈夫、当たらなければ問題ないから」


「当たりますよ! 絶対いつか!」


「30%だから30%」


 30%の一撃必殺は普通に当たるんですよ。


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