上 下
46 / 60

46話 見せられないよ!

しおりを挟む


「ここが依頼を出してた占い屋さんですか?」


「そうだよ。ビャクヤには土地柄、占いの店がたくさんあるんだけど、ここはその中でも当たると評判の店だね」


 冒険者ギルドで受けたフェアリークエストをこなすため、アサツキさんの案内で依頼人の占い師さんのお店にやってきた。
お店の周りが紫色の布で覆われた、いかにもな占い屋さんって感じ。


「いやむしろ、高校のオカルト研究部とかが文化祭でやってそうなちょっと誇張した占い屋さんの感じ?」


「入り口でごちゃごちゃうるさいねえ。客かい?」


「あっごめんなさい。あの、依頼を受けて冒険者ギルドから来ました、ベルベルです」


「……ほう。まさかあの妖精退治の依頼を受けてくれる人がいるとはねえ」


「いや、退治とかはまだ」


「こんな所で立ち話しててもしょうがないさね。入んな」


「あ、はい……」


 占い師さんはちょっと偏屈そうなおばあさんだった。
うん、こっちもいかにもな感じ。細木○子系ね。


「それじゃあベルベルちゃん、クエストがんばってね」


「えっアサツキさんどっか行っちゃうんですか?」


「ちょっとサントリナにお使いを頼まれててね。サントリナのポーション屋までの道は覚えてる?」


「あ、はい。大丈夫だと思います」


 『それじゃあ、日が暮れるまでに帰って来てね』と言ってアサツキさんは白夜の雑踏に消えていった。


「なにやってるんだい。早く入ってきな」


「はーい!」


 __ __


「えーというわけで改めまして。依頼を受けて来ました、ベルベルと申します」


「リンデンだ、よろしく頼むよ。今回こそは解決できるかねえ。あまり期待はしてないがね」


 もしかしたら、今までにも何度か同じようなことがあったのだろうか。
占い師のリンデンさんは、依頼を受けてやってきたわたしを前にしても、妖精の問題がどうにかなるとはあまり考えてないらしい。


「それで、妖精のせいで水晶が使えないとか」


「ああ、これなんだけどね」


 占い屋の真ん中に置いてあるテーブルに、まん丸で綺麗な水晶が置いてある。


「ワシの占い道具の1つ、“彩見の水晶”じゃ」


「もしかして、将来の旦那さんとか見えちゃったり?」


「なにを言うとるんじゃアンタは」


 どうやら運命の人とかは見えないらしい。
まあ、さすがにね。


「この水晶で見ることができるのは、色じゃ」


「色、ですか?」


 リンデンさんの説明によると、この水晶を覗き込むと、その人に今必要な『色』が見えるらしい。
そして、その色の服だったり、装飾品を身に着けることで運気が上がると。まあ、いわゆるラッキーカラーみたいなものかしら。


「見えた色から、更にどんな服やアイテムを身に着けた方がよいかを他の道具で調べるんじゃが、今はこの水晶が使えんでの。先の占いに進めないんじゃ」


「それで、妖精さんがちょっかいかけてくるっていうのは……」


「まあ、実際に見てみるのが早いじゃろ」


 そう言うと、リンデンはわたしの前に水晶を置き、わたしに覗き込むように指示した。


「それじゃあ、魔力を込めるよ……どうだい、なにか見えたかい?」


「うーんと、まだ透明……あっちょっと濁ってき」


「みせられないよー」


「きゃあああああ!?」


 わたしが叫んだと同時にリンデンさんが水晶に布を被せる。


「どうだった?」


「な、なんか、ブラクラが……」


「ブラクラってなんじゃ」


「い、いえなんでも」


 水晶をずっと覗き込んでたら、透明だった表面に白い煙のようなものが出てきて、これに色が付くのかな? と思った瞬間に水晶の表面いっぱいに黄色い目をしたまっ黒な謎の生き物が現れてなにも見えなくなった。
昔、ネットで間違い探しの動画を見てたらいきなり怖い画像が出てきた時のトラウマが蘇ったわ……


「なんか、真っ黒なやつが現れてほとんど見えなくなりました」


「やはりか。そやつが水晶占いの邪魔をしておる妖精じゃ」


「今の、妖精だったんだ……」


「ベルベルよ、あの妖精をなんとかできるかの?」


「うーん……が、頑張ります……」


 こうしてわたしは、水晶に出現するブラクラみたいな妖精をどうにかする事になったのであった。


「あの子の名前は……ウォーリーにしようかしら」


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜

幻月日
ファンタジー
ーー時は魔物時代。 魔王を頂点とする闇の群勢が世界中に蔓延る中、勇者という職業は人々にとって希望の光だった。 そんな勇者の一人であるシンは、逃れ行き着いた村で村人たちに魔物を差し向けた勇者だと勘違いされてしまい、滞在中の兵団によってシーラ王国へ送られてしまった。 「勇者、シン。あなたには魔王の城に眠る秘宝、それを盗み出して来て欲しいのです」 唐突にアリス王女に突きつけられたのは、自分のようなランクの勇者に与えられる任務ではなかった。レベル50台の魔物をようやく倒せる勇者にとって、レベル100台がいる魔王の城は未知の領域。 「ーー王女が頼む、その任務。俺が引き受ける」 シンの持つスキルが頼りだと言うアリス王女。快く引き受けたわけではなかったが、シンはアリス王女の頼みを引き受けることになり、魔王の城へ旅立つ。 これは魔物が世界に溢れる時代、シーラ王国の姫に頼まれたのをきっかけに魔王の城を目指す勇者の物語。

真面目に掃除してただけなのに問題ありまくりの賢者に生まれ変わっちゃった~えっと、わたしが最強でいいんでしょうか?~

遥 かずら
ファンタジー
遠藤奈々はお掃除代行人の中でも早くて安くて優秀で、模範的なお掃除マスターとして好評だった。いつものように浴室を綺麗にして終えようとする奈々だったが、子供のいたずらをきっかけに突然渦の中へと流されてしまう。 流された奈々は前世の記憶を持ったまま赤子に生まれ変わっていた。村の人々に見守られた奈々は、自分が賢者の生まれ変わりということを知らされる。聡明な賢者として人の為に尽くすことを教えられ、魔法学園へ進むことも決められていた。 ところが村のあちこちで意図せず問題ばかり起こし、入学させられないくらいの問題児として村を訪れてきた冒険者に預けられてしまう。 いつしか奈々は冒険者に同行するうちに、あらゆる面で手に負えない賢者となる――かもしれない話。

処理中です...