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42話 アサツキさんの知り合い

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「わあ、本当に妖精さんがいっぱいいる……!」


「ここは王都よりも全体的にユルいからね」


 アサツキさんの知り合いの家を目指してビャクヤの街を歩くと、今までわたしたちがいた王都ヘイリオスよりもたくさんの妖精を見ることが出来た。
道端に生えてる葉っぱの上で寝る妖精さん、魔女のトンガリ帽子にぶら下がる妖精さん、ベンチに座ってる人の靴を磨く妖精さん……


「……靴磨きのバイトかな?」


「あれは勝手にやってるんだよ」


 お城で会った靴の妖精さんと会わせてみたいわね。


「妖精は邪気の少ない緩やかな空気が流れる場所が好きだからね。ヘイリオスなんかは『打倒魔物! 打倒魔王アヴェス!』って感じでピリついてるから妖精があまり現れないのさ」


「魔女の街……邪気、少ないんですか?」


 なんか、結構怪しそうというか、胡散臭そうな雰囲気も感じるんだけど……マッドサイエンティストっぽい人が多そうっていうか。


「邪気は無いよ、うん。……まあ、無邪気なまま禁忌魔法の研究とかおっぱじめるヤツはいるかもしれないけど」


「全然ダメじゃないですか!」


「それはそれとして、王都よりはみんな楽しそうに暮らしてるからさ。ここいにる妖精たちはそういう雰囲気が気に入ってるんじゃないかな」


 まあ、妖精さんもいたずら好きな子が多いって聞くし……
楽しければOKです! みたいな感じなのかも。


「でも妖精が多いってことは、妖精関連で困ってる人も多いんだよねえ」


「そうなんですか?」


「ああ。後でここの冒険者ギルドにも顔出してみようか。多分フェアリークエストの1つや2つ出てるんじゃないかな」


「あ、いいですねえ。わたしがババーンと解決しちゃいますよ!」


 フェアリークエストっていうのは、冒険者ギルドに掲示されているクエストの中で、妖精に関わる依頼のことだ。
基本的には人間と妖精は会話をすることが難しいうえに、妖精は魔物と違って倒すことが出来ないので、フェアリークエストは誰にも受けてもらえずに掲示板の端に貼られていることが多い。


「なんたってこのわたし! 妖精さんとお話しできる……」


「おっとベルベルちゃん、スキルのことはあまり大きな声で言わない方がいいよ」


「おっと、それはそうですね」


「またさっきの“王都からのスカウト隊”みたいなのに絡まれたくなければね」


「う……き、気を付けます」


 能ある鷹は爪隠す……いえ、結局デュラちゃんと一緒にいるとこ見られてるからちょっと隠せてないかも……


「頭隠して尻隠さず……?」


「パンチラの話?」


「違いますよ……って、あー! あの転写画! 回収するの忘れた!!」


 わたしがデュラちゃんに乗ってるところを転写魔道具で撮られた画像、ちょっと下着が……最悪だ、あれが勇者候補のスカウト写真として広まっちゃってるんだ……


「もう、ヘイリオスに戻れない……」


「まあまあ、どうせ戻る予定も無いんだからさ、あの件は忘れて……おっと、そんなことを言ってたら到着だ」


「到着……? どこにですか……?」


「ボクの知り合いの家さ」


 アサツキさんと話しながら歩いていたら、いつの間にか目的地までやってきていたみたい。
ねじったレンガを組み立てたみたいな、ビャクヤ特有の不思議な建物。
屋根には緑色の煙を吐き出す大きな煙突が設置されていた。
……緑色の煙? ど、毒ガスじゃないわよね?


「……ニューポーションショップ?」


 なんかラーメン屋さんみたいな名前ね。ポーションってあの、RPGゲームとかファンタジー小説でよく出てくる回復薬よね? この世界にもあるんだ。


「誰もいませんね……あっ猫ちゃんだ」


 お店の中は無人で、カウンターらしき台の上に黒猫が1匹寝っ転がってるだけだった。
ふふ、猫ちゃんかわいい。


「おーい、サントリナー! いるかーい? アサツキだけどー!」


「は~い」


 奥にある部屋からタッタッタと誰かの足音が聞こえる。店主さんだろうか。


「待ってたわよアサツキちゃん~」


「おいこらやめろ」


「……!?」


 奥から出てきた、なんというか非常にグラマラスなお姉さんがいきなりアサツキさんにアツい抱擁を……


「あ、あわわわ……お邪魔しましたっ!」


「ちょっとベルベルちゃん、これからお邪魔するんだから帰らないでよ」


「へ? なにがですか?」


「ビャクヤにいる間はここに泊まるんだよ」


「ゆっくりお邪魔してってね~」


「…………へ?」


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