36 / 60
36話 王都から魔女の街へ
しおりを挟む「マスターさん、お世話になりました」
「こちらこそ。妖精の問題まで解決してもらって本当に助かったよ。また王都に寄ることがあったらウチの宿屋を使ってくれ」
「はい、是非ともまた利用させてください」
「ベルベル、ばいばーい」
「うふふ。またね、座敷わらしちゃん」
アサツキさんと魔女の街『ビャクヤ』に行くことになったわたしは、旅の準備をしながら、追加で簡単なクエストを受けて旅の資金を少し増やしつつ、遂に王都ヘイリオスを出る日となった。
「マスター、景気づけにお酒を奢っておくれよ」
「これから旅に出るやつが酒なんて飲むんじゃない。また飲酒運転で街道警備隊に捕まるぞ」
「ア、アサツキさん、飲酒運転で捕まったことあるんですか……?」
「まあちょっとね。正面から来たお貴族様の馬車とぶつかりそうになっちゃってさ」
「なにやってんですか」
これから一緒に旅をするのに、行き先が警備隊の牢屋なんてことになったらたまらない。
アサツキさんには常識の範囲内でお酒をたしなんでもらうように目を光らせておかないと。
「……ちょっと待って、運転ってなに?」
アサツキさん、何を運転してたのかしら。
__ __
「さて、とりあえずヘイリオスを出たわけだけど……本当に呼んだら出てくるんだよね?」
「ええ、そのはずです。多分、おそらく……」
これから向かう『ビャクヤ』はサンベルク王国の西端にある小さな街で、普通だと乗り合いの馬車で5日ほどかかるという。
で、今回はどうやって行くかというと……
「デュラちゃーん、かもーん!」
「ずいぶんフランクに呼ぶじゃないか」
「……参上」
「うわっ本当に出た! え、いつの間に?」
「へへーん、どうです? これがわたしのスキル、『フェアリーテレパス』です」
「スキル関係あった?」
わたしが名前を呼ぶと、どこからともなく白馬……上半身が首なし鎧騎士の白馬こと、妖精デュラハンのデュラちゃんが現れる。
というわけで、今回はこの子に乗って魔女の街まで行こうと思います。
「よいしょっと……うわあ、やっぱりデュラちゃんは視界が高い!」
しゃがんでくれたデュラちゃんに跨り、無事に乗ることができた。
デュラちゃんが立ち上がると、かなり視界が高くなる。
アサツキさんに付き合ってもらって、普通の馬で乗馬の練習はしていたのだけれど、それよりもデュラちゃんの方が背が高いので、かなり新鮮な気分だ。
「乗り心地も意外と良いわね。デュラちゃん、これからよろしくね」
「……御意」
「さてと、ベルベルちゃんの準備も出来たし、早速出発しようか」
「そういえば、アサツキさんはどうやって行くんですか? まさか徒歩?」
「そんなわけないじゃないか。ボクはこれだよ」
そう言うと、アサツキさんは手に持っていた少し大きめの旅行鞄にお尻を乗せる。
すると、なんと旅行鞄がふわっと浮き上がり、まるで魔女のホウキのように、アサツキさんを乗せて飛び始めた。
「えっ? ま、まさかその鞄……」
「これは空飛ぶ旅行鞄の魔道具なのさ。荷物も結構入れられて、移動手段にもなる。便利だろう?」
風魔法が使えないとただの鞄とほとんど変わらないけどね、とアサツキさんは笑って話す。
す、すごい。この世界にきて1番ファンタジーを感じたかも。
というか飲酒運転って、この鞄のことだったのね。
「それじゃあ魔女の街『ビャクヤ』まで」
「れっつご~!」
……。
…………。
「おい見ろよ、あれって……」
「白い馬、いやケンタウロスか? なんだありゃあ……」
「間違いない、最近噂になってる“白馬の戦乙女”だ。おいアンタ転写魔道具持ってねえか? 転写紙を貴族様に見せりゃあ情報料が貰えるぞ」
「待ってろ、今撮ってやる……よし、撮れたぞ。後ろ姿だがまあいいだろ」
「西の街道を出てったって事は、レイキュリー中立国にでも向かったか? 早くしないといなくなっちまうな」
「よっしゃ、急いで貴族様に報告だ」
54
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
【完結】人型兵器は電気猫の夢を見るか?
有喜多亜里
BL
【猫キチ男が猫型ロボットを撫で回している、なんちゃってスペースファンタジー(コメディ寄り)】
別宇宙から現れて軍艦を襲う〝何か〟。その〝何か〟に対抗するため、天才少年博士ナイトリーは四体の人型兵器を作り、銀河系を四分する各勢力にパイロット供出を要請した。だが、二年後のある日、ナイトリーは謎の死を遂げてしまう。周囲は頭を抱えるが、パイロットの一人・カガミが飼っている猫型ロボットの中にナイトリーの記憶の一部が潜んでいた。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!
FOX4
ファンタジー
王都は整備局に就職したピートマック・ウィザースプーン(19歳)は、勇者御一行、魔王軍の方々が起こす戦闘で荒れ果てた大地を、上司になじられながらも修復に勤しむ。平地の行き届いた生活を得るために、本日も勤労。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる