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32話 レッサードラゴン
しおりを挟む「それじゃあ本当に魔物じゃなくて妖精だったんだね」
「そうなんですよ。デュラハンのデュラちゃんです」
「…………」
「へ、へえ……何も喋らないけど……」
「なかなか良い名前じゃんって言ってます」
「君が付けたのかい」
最初はわたしのイメージする妖精さんって感じよりも魔物に近い見た目だったからちょっと怖かったけど、背中に乗せてもらって色々話してたらすぐ打ち解けた。
なんだろう、妖精さんは接してると気持ちが穏やかになるというか、そんなオーラが出ている気がする。
魔物はもう、近づくと『うわっ! こ、怖い……!』って感覚があるのよね。
「馬に乗って戦うのはやっぱ変ですかね?」
「自分の馬に乗って戦う冒険者もいるから、変に目立ったりは……いや目立つか。実は馬じゃないしね」
「たしかに」
わたしが乗ってる妖精デュラハンのデュラちゃんは、身体は白馬、前脚から上は白銀の鎧で出来ている、まるでケンタウロスのような姿をしている。
ケンタウロスと違う所は、デュラちゃんには首から上が無いということ。これはデュラハンの特徴だ。
ちなみに首の中身は黒い煙のようなもので満たされていて、鎧の中に人がいる気配は感じられない。
「まあでも、魔物さえ倒してくれれば問題ないさ。それじゃあベルベルちゃん、レッサードラゴンを倒しに行こうか」
「えっと、さっきのダックフロッグと同じようにわたしの魔法でレッサードラゴンを拘束して、アサツキさんが魔法でやっつけていく感じで大丈夫ですか?」
「それでオッケーだよ」
「わかりました。それじゃあデュラちゃん、お願いします」
「……いざ参る」
__ __
それからわたし達は一足先にレッサードラゴンと戦っていた冒険者と合流し、レッサードラゴンの討伐に取り掛かった。
「ぴかぴかすとりんぐ~!」
「ギャオッ!?」
わたしの妖精魔法『ぴかぴかすとりんぐ』が発動し、光の糸でレッサードラゴン達を拘束していくと、アサツキさんや周りの冒険者が動けなくなった彼らをどんどん倒していく。
「嬢ちゃんの魔法、初めて見たけどすげえなあ! これならずっと楽に倒せるぜ!」
「ありがとうございます!」
「……で、嬢ちゃんが乗ってるその馬っぽいのはなんなんだい?」
「デュラちゃんです!」
「そ、そうかい、デュラちゃんかい」
冒険者さんは考えるのをやめた。
「やっぱベルベルちゃんの拘束魔法はすごいね、相手の強さに関係なく効果を発揮できる」
「ありがとうございます!」
普通の魔法にも相手を拘束する魔法はあるみたいだけど、相手が強すぎると拘束を解かれてしまうらしい。
妖精魔法は魔物に対して相性が良いらしく、普通に戦ったらわたしなんて一撃でやられちゃいそうなレッサードラゴンでも拘束して身動きを封じられるのだ。
「よっしゃ、レッサードラゴンの数も減ってきたしこの調子で……」
「ギャオオオオオウ!!」
「お、おいっ! 1匹やべえのがいるぞっ! 上位種のクリムゾン・レッサードラゴンだ!」
「なんだって!?」
「クリムゾン・レッサードラゴン……?」
生き残っているレッサードラゴンの後方に、1匹だけ一回り程大きなレッサードラゴンの姿を見つける。
通常のレッサードラゴンは薄暗い緑色をしているが、その個体は鮮やかな紅色をしていた。
「まずいね……あれはレッサードラゴンの変異種だ。通常のレッサードラゴンはBランク程度の強さだがアイツはAランク、下手したらSランク相当だ」
「よし、逃げましょう!」
「そうはいかないでしょ。とりあえずベルベルちゃんの拘束魔法を試してみよう」
「あんな強そうなのに効かないですよ!」
「……ベルベル、妖精魔法、信じて」
「さあベルベルちゃん、君の力を見せてくれよ」
「デュ、デュラちゃん、アサツキさん……」
二人にそんなことを言われたら仕方がないわね。まんまと乗せられた気もするけれど。
「え~い! ぴかぴかすとりんぐ~!」
「ギャオオオオオウ!?」
魔法を唱えた私の手から現れた巨大な光の糸は、すぐさまクリムゾン・レッサードラゴンの足に巻き付き、動きを封じる。
「き、効いてるみたいですっ!」
「今だ! みんな一斉に攻撃~!!」
「うおおおおお!!」
「ギャオオオオオ!!!!」
周りの冒険者から袋叩きにされたクリムゾン・レッサードラゴンがパアアアアア……とまるで煙のように消えてゆき、そこには巨大な赤い魔石が。
…………。
「やったー!! クリムゾン・レッサードラゴンを倒したぞー!」
「他は通常種だけみたいだ! この調子で残りも片づけるぜ!」
上位種を倒して勢いづいた冒険者たちで残ったレッサードラゴンを討伐し、無事に緊急クエストを達成することが出来たのだった。
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