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31話 緊急クエスト
しおりを挟むこんにちは。日本にいるお父さん、お母さん、元気にしてますか?
わたしは元気です。名前が鈴からベルベルになっちゃったけどわたしは元気です。本当です。
「いやまあ、向こうのわたしがいた世界がどうなってるのかちょっと分かんないけど」
今日は冒険者ギルドからの緊急クエストに(ほぼ強制的に)参加し、暴走した魔物の群れがやってきているという王都ヘイリオスの西門までやってきました。
ちょっと魔物との戦いが続いて泣きそうです。お父さん、お母さん、わたしに勇気と力を……
「お、結構近くまで来てるね。ベルベルちゃん、あれがレッサードラゴンだよ」
「きょ、恐竜じゃないですか!」
少し離れた所にいる魔物の群れ。ワニやトカゲを思い出させるその姿は、子供のころに観た恐竜映画にでも出てきそうな爬虫類感バリバリの魔物だった。
「ちょっと小さめのティラノサウルス……? いえ、どちらかというとヴェロキラプトル……とっとにかく! ものすごく強そうなんですけど! わたしみたいな駆け出し冒険者じゃあお役に立てませんよ!」
「大丈夫大丈夫。ベルベルちゃんの妖精魔法はキミが思ってるよりもずっと強い魔法だから」
アサツキさんは『さっきのダックフロッグ戦と同じ感じでいけば大丈夫だからさ』とわたしに声をかけ、一足先にレッサードラゴンの群れと戦っている冒険者の所まで駆け出して行った。
わたしも(ほぼ強制的とはいえ)クエストを受けてしまったので、ちょっとだけ気合いを入れ直して現場に向かう。
「はあ、どうしてこんなことに……いまごろクエスト報酬で美味しいごはんを食べていたはずなのに」
ビストロ・コロポックルで妖精のオムライスを食べたいわ。食器の妖精ちゃんにも会いたいし。
「それにしてもレッサードラゴンかあ。ダックフロッグより強そうだし、ちょっと戦うの怖いわね」
「……魔法、転ばせる。楽勝」
「魔法で拘束して転ばせれば簡単に倒せるって? そうなのね、たしかに二足歩行だから足を引っかければ……」
…………。
「きゃああああ!? び、びっくりした!」
アサツキさんを追いかけようと西門を出た瞬間、横にミオカンデ湖で出会った白いデュラハンがいたのだ。び、びっくりした~……!
「……いきなり出てきてごめ~ん」
「なんでちょっとジョイ○ンみたいな感じなのよ」
デュラハンは見た目にはほとんどなにも喋っていないのに、頭の中でわたしに理解できる内容で言葉が入ってくる。やっぱりこの子も妖精なんだわ。
「それにしても、あなたさっきまで湖にいたじゃない。どうしてこんなところにいるの?」
相手が魔物じゃなくて言葉の通じる妖精さんだと分かると積極的に出れる。
それにしても、真っ白な馬体に白銀の鎧がとても美しい……まるで白馬の王子様だわ。首が無いのがちょっとアレだけど。
「……妖精魔法、人間なのに使える」
「人間なのに妖精魔法を使うわたしが気になったってことかしら」
たしかに、わたしは座敷わらしちゃんから教えてもらった妖精魔法『ぴかぴかすとりんぐ』を駆使して魔物を倒していた。
妖精じゃないわたしが、妖精しか使えないはずの魔法を使っていたのだ。同じ妖精の彼からみたら、さぞ不思議に見えていたのだろう。
「……魔法、見学したい」
「もうちょっとわたしの使う妖精魔法を見てみたい……そうね、それは別に構わないけど」
ちょうどこれから魔物を倒しにいくのだ。どっか物陰から見学してもらうくらい全然大丈夫だけど。
「……乗れ」
「えっ? あなたに乗って戦うの?」
デュラハンがしゃがんでわたしを背に乗せようとする。どうやら彼も一緒に戦ってくれるらしい。
どうしましょう。わたし、乗馬の経験なんて無いのだけれど……
「わっ! た、高いわ!」
結局デュラハンに乗ってみたいという興味が勝り、彼の背中にまたがって鎧の部分に掴まる。
デュラハンが立ち上がると、先を進んでいたアサツキさんがこちらに気付いて驚きの声をあげる。
「ベ、ベルベルちゃん!? なにしてんの!?」
「騎馬戦です! あっ違った。騎馬隊……ナポレオンスタイル? 安土桃山時代?」
「何言ってるか全然分かんないよ」
こうしてわたしは、何故か白馬のデュラハンに乗ってレッサードラゴンの討伐に向かうのであった。
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