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18話 フェアリークエスト
しおりを挟む「ベルベルちゃん、本気かい? フェアリークエストを受けるだなんて」
「もちろんです。だってわたし、妖精さんとお話し出来ますもん」
「出来ますもんって……まあ、依頼を達成できる可能性は他の人よりはあるのかもしれないけども」
「それに、マスターさんが困って依頼を出してるんだから助けてあげたいです」
「……なんか、年寄りの道楽で依頼を受けた冒険者を困らせて楽しんでそうだけど」
「そ、そんなことないですって。多分」
マスターさん的にはものすごく困ってるのかもしれないわ。
「というか、こんなに報酬が高いのにどうして誰も受けないんですか! 50000エルですよ50000エル!」
「いや、意思疎通出来ないんじゃいくら報酬が良くたって難しいよ。ボクも昔、妖精と話せないか色々試したことがあったけどさ、なんというか、同じ言葉を繰り返すだけで、それが意味を成してないというか、とにかくめちゃくちゃで……」
「あー、まあそれはなんとなく分かります」
わたしもスキルが無かったらほとんど理解できないと思うし。
「でも今のわたしなら解決してあげられるかも」
「……妖精と話せる能力か。たしかに、ベルベルちゃんならなんとかなる、というか現状この依頼をこなせるとしたらベルベルちゃんだけだろうね」
「これ、どうやってクエストを受ければいいんですか?」
「受付カウンターに行って、依頼用紙に書いてあるクエスト番号を伝えれば大丈夫だよ。クエストを完遂出来なくてもペナルティみたいなのは基本的には無いから、まあ、せっかくやるなら頑張って」
「はい! がんばりまづ……ッ!? い、いだい……舌嚙んじゃった……」
「大丈夫かなこの子」
……。
…………。
「というわけで、わたしが泊まっている宿屋『金の糸車』に戻ってきました」
「おう、お帰りベルベルさん。なにがというわけなんじゃ?」
アサツキさんはわたしとは別で受けたクエストを完了させるため、冒険者ギルドの前で分かれた。依頼人の所まで話を聞きに行くらしい。
「マスターさん、わたし、冒険者ギルドでクエストを1件受けてきたんです」
「ほう、さっそく精進しておるようじゃの」
「でも普通のクエストじゃなくて、フェアリークエストってやつなんです」
「……なに? フェアリークエストじゃと?」
「で、このクエストを依頼したのがマスター・モリブデンっていう人なんですけど」
ギルドで貰ってきたクエストの依頼用紙を見せると、マスターさんはなんともいえない表情で2階を見上げた。
「まさか、ベルベルちゃんがこれを受けてくれるとはの……」
「それでマスターさん、この座敷妖精って」
「ああ、こやつはウチの店におる妖精じゃ。いたずらばかりしおるクソガキみたいなヤツでの」
「ク、クソガキって……でも、わたしがここに来てからは見かけてませんね」
「悪さばかりするんで閉じ込めておるんじゃよ」
「ええっ!?」
マスターさんの話によると、小さな子供のような妖精『座敷妖精』がいつの間にかこの宿屋に棲みついてしまったらしく、何故かマスターさんにちょっかいをかけてきて仕事の邪魔をするので、仕方なく今は使われていない2階の部屋に封印しているという。
「妖精さんを封印って……そもそもそんなことができるんですか?」
この世界で妖精は別名『気まぐれな幽霊』と言われていて、妖精からは触れるのにこちらからは触れられないようになったり、壁をすり抜けたりもできるため、檻の中に捕まえても勝手に出てきてしまう、魔法の結界なんかも効かずに通り抜けてしまうらしい。
魔物みたいに討伐ができないとアサツキさんが言っていた理由がこれなのね。
そのうえ妖精がなにかを求めて話しかけてきても言葉が分からないし、かといって魔物ほど危険な存在ではないから、何かされても仕方なく基本は放置というスタンスの人が多いのだ。
「厳密には封印しているワケではないんじゃがの。妖精の嫌いなアイテムがあるんじゃよ。それを使って部屋から出られないというか、出たくないと思わせておる」
「そ、そのアイテムって……いえ、そんなことより。マスターさん、その妖精さんに会わせてくれませんか? わたしが依頼をこなしたら、いたずらする原因とかも分かるかも」
「しかし、妖精と意思疎通が図れないのにアイツに会ったところで……」
「あ、それは大丈夫です」
「なんじゃと?」
「わたし、妖精さんとお話しできるので!」
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