無用少女のフェアリークエスト~女神様から授かったスキルが使えないと言われて勇者候補を降ろされたので妖精さんと旅に出ます~

ふぃる汰

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12話 オムライスの妖精さん

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「妖精さん、どんな感じー?」


「オイシソオイシソ」


「『良い感じ』ですって」


「よかった~!」


 タイムさんが持って帰ってきた『オムライスの見本細工』を妖精さんのお皿に乗せて固定すると、妖精さんはそのまま楽しそうにお店の中を飛び回りだした。どうやら気に入ってくれたみたい。


「まさか、この子自身を料理見本にしちゃうとはねえ。全然思いつかなかったよ」


「妖精さんの話を聞いて、この子の性格というか、行動の理由を考えたんです」


 妖精さんはビストロ・コロポックルのリニューアルした美味しいオムライスが気に入り、『いっぱい食べてみんなにも気に入って欲しい、オススメしたい』という想いからここに棲みついている気がした。
それで自分のお気に入りのオムライスを注文した人がいると、つい嬉しくなってテンションが上がり、親戚のおばちゃんのごとくたくさん食べさせようとしてしまうのだ。
自分で言っててちょっと意味不明なんだけど、多分そんな感じで合ってる。


「でも、それじゃあお客さんが怖がって逆効果になっちゃうよってことを教えて、それよりもせっかく見本があるならオムライスを乗せて宣伝したら? って」


「でもこれじゃあ食器の妖精じゃなくてオムライスの妖精だね」


「タベテタベタベ」


 オムライスを乗っけてお店の中を飛び回る妖精さんは、なんというか、ちょっとシュールなマスコットキャラクターみたいでかわいい。


 カラン、コロン。


「あ、いらっしゃいませー」


「わっ本当にオムライスが飛んでる!」


「お店の外から飛んでるオムライスを見かけて、なんだろうと思って入ってみたんですけど……」


 飛び回る妖精さんを発見して興味を持ったお客さんがやってくる。


「あれは見本のオムライスちゃんです! もちろんおんなじ料理を注文することもできますよ!」


「ウマイウマイヨ」


「きゃーかわいい! それにとっても美味しそう。私、食べてみたーい!」


「私もー! 注文お願いしまーす!」


「はーい! お母さーん! オムライス二つ!」


「はいよ~!!」


 どうやら宣伝効果もバッチリみたいだ。


「あなた、ビストロ・コロポックルの宣伝部長ね」


「センデンブチョウ?」


 ……。


 …………。


「困ったねえ……」


「お母さん、どうしたの?」


「もうオムライスの材料が無くなっちまったよ。完売だ完売!」


「すごーい!!」


 あれからしばらくして『お店の前を通りかかった人が妖精さんを見て入店し、そのままオムライスを注文して食べていく』という流れが頻繁に起こり、遂にオムライスが売り切れとなった。


「久しぶりに大盛況だ。アンタのおかげだよ」


「タベテタベテ?」


 妖精さんは相変わらずお店の中を飛び回って、たまにオムライスを食べているお客さんの所に行って嬉しそうにクルクル回ったりしていた。


「ふふ。あなた、子供たちに大人気だったね」


「ウマイウマイ」


「ねえお母さん、せっかくだしこのオムライス、『妖精のオムライス』って名前にしない?」


「おお良いじゃないかホップ。ウチの看板メニューになりそうだ。明日からは多めに食材を仕入れないとね」


 オムライスを食べたお客さんはみんな美味しい美味しいと言って夢中になっていた。
きっと、今日お店に来てくれたお客さんから口コミで広がって、明日からもっと人気になっちゃうかも。


「ベルベルさん、アンタのおかげで妖精の問題も解決して、そのうえ店も大繁盛だ。本当にありがとう」


「ありがとうベルベルさん!」


「いえ、そんな……妖精さんを邪険にしないで解決方法を探っていたお二人の気持ちがあればこそです」


「お礼に、ベルベルさんはウチの料理一生食べ放題だよ」


「いやいやそんな、それは流石にダメですって!」


「こんなに助けてもらったんだから、何かお礼させてよー!」


 タイムさんとホップちゃんが妖精さん並みにグイグイくる。さ、さすがに一生食べ放題は申し訳なさすぎるわ。10%オフとかならまあ……


「あ、それじゃあ代わりにひとつお願いがあるんですけど」


「なんだい、なんでも言ってみな」


「この辺に安くてオススメの宿屋ってありますか?」


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