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8話 王妃様のプレゼント
しおりを挟む「それでは王妃様、失礼します。美味しいお茶までいただいてしまって。ごちそうさまでした」
あんまり長く話すと王妃様の負担になっちゃうので、そろそろ切り上げよう。おさんぽの妖精……てくてくちゃんも友達に再会出来てよかったわ。
「本当に出て行ってしまうの? なんなら私のポケットマネーで勇者育成学校に通わせるわよ?」
「い、いやそれは貴族たちが」
「なにか?」
「あっその……」
国王様、王妃様に頭が上がらないのね。
「いえ、実際わたしのスキルでは多分お役に立てませんし、国民の大切な血税を貰うわけにはいかないでしょう。しばらく生活できるお金は頂いたので、これ以上は申し訳ないです」
わたしがよく読んでたファンタジー小説だと、たまに主人公が理由もなく一方的に追い出されてたりしたけど、ここはそこまでひどい人ばっかりでもないみたい。
冷静に考えると、勇者候補として召喚されるって分かってた上に好きな能力まで貰えたのに、『妖精さんとお話しできる』とかいうふわっふわなスキル選んだわたしもちょっと抜けてたわね。
「そうねえ……でもてくてくちゃんに会わせてくれたし、なにかお礼がしたいわ」
「くつをぷれぜんと?」
「えっ? 『靴もらったら』って? いやそれはさすがに……」
「そういえばあなた裸足じゃないの! てくてくちゃん以外にも履物は持ってるの?」
「てくてくちゃんは履物では……一応他に、こういうのがありますけど」
王妃様に病院スリッパを見せる。うーん、なんともいえない表情をしておられる……
「見たことない形状の靴ね。室内なら便利そうだけど……あっそうだわ! 私が子供のころに履いてたものを差し上げましょう!」
「い、いいんですか?」
「もう履けないし、うちは息子が2人で娘はいないの。だから貰ってくれたら嬉しいわ」
王妃様がお付きの人に言っていくつか靴を持ってきてくれる。
「わあ、どれもかわいい……!」
「ベルベルさんだと、この辺りの靴がサイズ的に良いかしら」
王妃様が選んでくれた靴は、可愛らしい水色の厚底パンプス。
履いてみるとサイズもピッタリで、履き心地もバツグン。さすが王妃様の靴……値段がいくらかなんてとても聞けない。
「これ、とっても履きやすいです。わたしにはちょっとかわいすぎるかもだけど……」
「おにあーい!」
「え、とっても似合ってるって? ふふ、ありがとう」
『とっても』とまでは言ってないって? いいのよ、翻訳者はわたしなんだから。
「私もそう思うわ。ねえアナタ?」
「う、うむ……そうだな。ベルベル殿、せっかく来てくれたのに追い出すような真似をして申し訳ない。貴女に女神様のご加護があらんことを」
「国王様……ありがとうございます」
「ベルベルさん、元気でね。また遊びに来てくれたら嬉しいわ」
「てくてくてく」
「あはは、来れたらまた来ます」
絶対行かないやつじゃんとか言わないで。
__ __
「というわけで、お城からチェックアウトしたわけだけど……」
いやまあ、召喚されて1泊して追い出されただけなんだけどね。
「さてと、これからどうしようかしら」
靴を買おうと思ってたけど、王妃様から可愛いのを貰っちゃったし。やっぱり泊まる場所を探した方が良いのかな?
「大臣さんに貰ったお金は、小さい銀貨が100エル、大きいのが1000エル、この金貨が10000エル……」
紙幣がないだけで、感覚的には前の世界と同じかしら。
「それにしても、これが城下町ってやつよね。すごいわ……まるで映画でも見ているみたい」
わたしが召喚されたこの世界は『ネオテイル』という。
ネオテイルにはいくつかの国があって、今いる所がサンベルク王国の王都『ヘイリオス』。
サンベルク王国は、この世界にいる『魔物』と呼ばれる生き物、およびその長である魔王を敵とみなして、とにかく滅ぼそうと頑張っているそうだ。
そのために勇者の育成にも力を入れてるんだとか。
「魔物かあ……まだ見たことが無いからわからないけど、きっと恐ろしいモンスターよね」
なんか、こういうとアレだけど、勇者候補から外されて良かったかも。魔王とか絶対倒せないし。
「よーし、それじゃあまずは~」
クキュルルル……
「……ご、ごはんでも食べようかしら」
恥ずかしいわ、もう。
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