40 / 44
40話 犠牲となったゴーレム
しおりを挟む「ホワイトさん見てくださいまし! 遂に完成いたしましたの!」
「ん? なにが完成したって……うわっなんだこれ!?」
ガコン、ガコン、と謎の音を響かせながらハイドロが俺の部屋まで連れてきたのは、等身大の謎の石像だった。
「あ、あー……もしかしてこれが例のハーピィエルフ様の像ってやつか?」
「そうですの! ハーピィエルフ様のミスリル像・ver1.01ですの!」
「ver1.01ってなんだよ」
なんかアップデートでもしたんかその像。不具合は解消されましたか……?
「ウゴー!!」
「うわっびっくりした! って、え? なにコイツ、喋るの?」
「デビルアイランドにいたミスリルゴーレムをちとリメイクしたのじゃ」
「型を取り直したルナ」
「マジでやったのかよ」
以前、ハイドロたちが話していたミスリルゴーレムを加工してハーピィエルフの像にする作戦。
ミスリルゴーレムを溶かしてハーピィエルフの形を模した型に流し込み、見た目がハーピィエルフのゴーレムに生まれ変わらせるという、なんともえげつないやり方である。
「シテ……コワシテ……」
「ああっ! ゴーレムの魂の叫びが聞こえる……! 大丈夫だ、俺がすぐに楽にしてやるからな」
「ダッダメですの! この子は壊させませんの! 復興したら大教会で祀り上げられる運命なんですの! 永遠に」
「いやあまりに不憫すぎる」
ミスリルゴーレムが何をしたって言うんだ……やはり人間は業が深い。はやく滅びた方が良いかもしれない。
……。
…………。
「第8エリアの敬虔なる隠れハーピィエルフ教の皆様、こんにちは。わたくしは第7エリアの大教会所属、シスター・ハイドロでございますの」
今日はフレイムとサタンが第8エリアの教会でお遊戯会に参加する日だ。
ハイドロも一度訪問しておきたいとのことで、一緒に連れてきた。
「シスター・ハイドロって、もしかしてあのミス・グレネードの異名を持つ……?」
「第7エリアの鉄砲玉と言われた伝説のシスターじゃ……」
「押収された石像を取り返すために管理局に単身で乗り込んだって聞いたぜ」
「いやあ、照れますの」
「照れますのじゃねえよ」
別に褒められてないだろ。田舎のイキってるヤンキーみたいな言われようじゃねえか。
「こちらの教会にはハーピィエルフ様の像が押収されずに残されているととある筋から聞いていますの。それは本当ですの?」
「ええ、ウチの教会にあった像は大教会にあるものよりもかなり小さいもんですから、管理局の連中に見つからないように隠しておいたんです」
「今はプリティ☆デビル様たちのおかげで第8エリアが解放されましたので、奥の本堂に飾ってありますよ」
こちらをチラチラと見ながら話す第8エリアの住民たち。バレてんだよなあ……俺がプリデビやってんの……くっそ恥ずかしい……
「素晴らしいですの! わたくしも今度こそ、あのゴミくそババア……おっと失礼、第7エリア管理局長のモッツアレルからハーピィエルフ様を取り戻してみせますの」
コイツ、意外と口悪いな。
それにしても、第7エリア管理局の責任者、モッツアレルか。どんなヤツだろう……
ピコン! ピコン!
「ボウギャーク、出たあ! ボウギャーク、出たあ!」
「なにっ!?」
プリデビ☆チョーカーから骨伝導的なヤツで脳に直接届く警戒アラーム。
どうやら街にボウギャークが出現したらしい。
「あら、どうかされましたのホワイトさん」
「ああ、どうも街にボウギャークが……」
ハイドロにボウギャーク出現のため、この場を少し離れると伝えようとしていたとき、教会の扉があわただしく開けられる。
「た、大変だあ! 第7エリアに巨大なハーピィエルフ様が出なすった!」
「な、なんだっt」
「それは本当ですの!?」
く、食い気味ィ! いやハイドロの気持ちも分からんでもないが。
「ハーピィエルフ様が光臨なされたのですね! わたくしたちも早く向かわなければ! さあ行きましょうホワイトさん!」
「ま、待ってくれシスターさん、第7エリアにいる隠れ信徒の情報によると、どうやらいきなり出現したハーピィエルフ様は大変お怒りのようで、街中を破壊して回っているらしい」
「街を破壊……? おい、それって」
「ハーピィエルフ様の天罰ですわ!」
ダメだ、ハーピィエルフを盲信してるハイドロには何を言っても全て肯定的に受け止められてしまうかもしれない。
「ハーピィエルフ様からのお言葉はなにかありませんですの?」
「それが、人間の言葉をお話にはなられておらず、ただひたすらにボウギャーク! ボウギャーク! と叫んでいるとの連絡が入っております」
「ボウギャーク……ぼうぎゃく……やはり、理不尽の限りを尽くす管理局の暴虐に対するお怒りのお言葉ですの」
「いや、それってよおハイドロさん」
……ただのボウギャークじゃね?
「こうしては居れませんの! さあホワイトさん! はやくあのプリティ☆なんちゃらに変身して第7エリアまでひとっ飛びですの!」
「頑張ってくださいサン……ホワイトさん!」
「応援してるわ、プリティデビ……ホワイトさん!」
「なあ、あんたらわざとやってんのか? そうだよな?」
「ホワイトよ! ボウギャークが出現したのじゃ!」
「ボウギャークたおすぞー! 第7エリア、れっつごー!」
お遊戯会に参加していたサタンとフレイムもやってくる。周りに人がいるのに堂々とボウギャークとか言うんじゃないよアンタたち。
「待っててくださいましハーピィエルフ様! 今すぐハイドロがお迎えにあがりますの~!」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
魔法少女になれたなら【完結済み】
M・A・J・O
ファンタジー
【第5回カクヨムWeb小説コンテスト、中間選考突破!】
【第2回ファミ通文庫大賞、中間選考突破!】
【第9回ネット小説大賞、一次選考突破!】
とある普通の女子小学生――“椎名結衣”はある日一冊の本と出会う。
そこから少女の生活は一変する。
なんとその本は魔法のステッキで?
魔法のステッキにより、強引に魔法少女にされてしまった結衣。
異能力の戦いに戸惑いながらも、何とか着実に勝利を重ねて行く。
これは人間の願いの物語。
愉快痛快なステッキに振り回される憐れな少女の“願い”やいかに――
謎に包まれた魔法少女劇が今――始まる。
・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
ナンパなんてしてないでクエスト行ってこい!
直哉 酒虎
ファンタジー
ある日異世界転生してしまった芹澤恵莉奈。
異世界にきたのでセリナと名前を変えて、大好きだったアニメやゲームのような異世界にテンションが上がる。
そして冒険者になろうとしたのだが、初めてのクエストで命の危機を感じてすぐ断念。
助けられた冒険者におすすめされ、冒険者協会の受付嬢になることを決意する。
受付嬢になって一年半、元の世界でのオタク知識が役に立ち、セリナは優秀な成績を収めるが毎日波乱万丈。
今日もクエストを受注に来た担当冒険者は一体何をやらかすのやら…

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる