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34話 プリズン☆ブレイク

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 ハイドロに初めて面会してから数日後。俺たちはシャーチクさんを交えて再び第7エリアの大教会を訪れた。


「あ、あのお……」


「おや、この前の嬢ちゃん達……か? ホワイトちゃん、なんか雰囲気違うような……」


「あ、あは~☆ ちょっとイメチェンしてみました」


 やべ。でもシャーチクさんを召還しておくにはデビル☆サンデーに変身していないといけないしな……


「ふーん、まあいいや。ハイドロと面会か?」


「はい。それで今日はあ、もう一人友達がいるんですけどお」


「どうも。シャーチクです」


「……ハーピィエルフを信仰していたりはしないね?」


「私が神です」


「よし、通れ」


 あ、やばい人だから関わらないようにしよう的な扱いだったな今のは。


「ホワイト、もといサンデーさん」


「ん、どしたのシャーチクさん」


「なんですかさっきの発情期のネコみたいな喋り方は?」


「いや言い方言い方。普段の話し方だと男っぽいからちょっと女性的な感じを意識してんですよ」


「全国の女性を舐め腐ったかのような話し方だったルナ」


「やっぱ童貞はダメじゃな」


 いてこましたろかコイツら。


 ……。


 …………。


「ハイドロさんっ」


「来たのじゃ」


「あら、ホワイトさん、さーちゃんさん、それに……」


「今日はシャーチクさんも会いに来てくれたよっ」


「あ、あらそうでしたの。お久しぶりですシャーチクさん」


「お久しぶりですハイドロさん」


 今回も無事ハイドロと面会することができた。ここまでは作戦通りだな……あ、さっきから語尾に「っ」付けてるヤツ誰だって? 俺だよ。んだよ文句あんのか?


「面会時間は10分だ。いいか、今から測るからな、3、2、1……始めっ!」


 いや大食いチャレンジかよ。


「あ、ハイドロさん、最近天気良いですよねっ」


「ここは空なんて見えませんの」


 だ、ダメだ……コミュ障ヒキニートの俺にはお嬢様シスターとの会話は厳しいぜ。


「(おいサタン、そろそろ頼むぜ。俺はもうダメだ)」


「(まだ3分も話してないのじゃ)」


「(頼むよお。もう話せないよお)」


「(はあ、仕方ないのじゃ)」


「か、監視員のおにいさん……」


「ん、どうした?」


「……おしっこ、いきたいのじゃ」


「!?」


 いや『!?』じゃねえよ。うろたえすぎだろ監視員。


「し、しかし今ここを離れるわけには」


「あ、もうだめなのじゃ、玄関まで来ちゃってる……」


「玄関まで!?」


 玄関ってなんだよ。


「し、仕方がない、ついてきなさい……君たち、勝手なことをしないでおとなしく待っているように」


「はーいっ」


 バタンッ


「……よし、行ったな」


「今の内ルナ」


 ルナが何やらボールペンのような物を取り出すと、ハイドロが捕まっている牢の鍵穴に差し込む。


 カチッ


「開いたルナ」


「すげえ! なにそれ?」


「これはスーパーピッキングペンっていう、解錠効果の付いた魔法アイテムルナ。鍵穴に差し込むと、先がグニャグニャになって一時的に鍵の形に固定されるルナ」


 いやめちゃめちゃ空き巣御用達アイテムじゃん。普通に危険すぎるな。


「さあハイドロ、こっちへ」


「え、ええ……ありがとうですの。でもこの後はどうするんです? 監視員が戻ってきたらバレてしまいますの」


「そこはお任せを。シャーチクさん、お願いしやっす」


「はい」


 牢から出てきたハイドロの代わりに中に入るシャーチクさん。


「えっ? 影武者ですの?」


「私の事はお気になさらず、自力で脱出しますので」


「は、はあ……」


 シャーチクさんが入った牢の鍵をルナが再び施錠する。


「あ、あの、彼女は本当に大丈夫なんですの?」


「あ、大丈夫っす。神なので」


「神です」


「それよりハイドロちゃん、これを飲むルナ」


 ルナが錠剤みたいな薬をハイドロに手渡す。さっきの解錠ペンといい、どっから出してんだ?


「……えっ? お腹にチャック?」


「ちょっと、見ないでルナ」


「え、あ、すんません」


 ルナの腹にチャックが付いてて、そこから色々出してた……なんか知りたくなかった……


「あら、なんだか視界が高くなりましたの」


「……えっ? ハイドロさん?」


 ルナから貰った錠剤を飲んだハイドロがいつの間にかシャーチクさんと同じくらいの背丈になっていた。え、30cmくらい背伸びてない?


「さっきの薬はルナが作った『セガノビールZ・ハンデイタイプ』ルナ。飲んで半日間だけ背が伸びるルナ」


「なにそれすごい」


「ハイドロちゃん、この服を着るルナ。これで完璧ルナ」


「わ、分かりましたの」


 ガチャッ


「ただいまなのじゃ」


「間に合ったか?」


「ギリギリセーフだったのじゃ」


「すいませんウチの子が」


「いや、生理現象は仕方がないからな」


「なんかちょっと嬉しそうですね」


「そんなことはない」


 面会時間が終わり、俺たちは監視員に連れられて地下牢を後にした。


「脱出成功なのじゃ!」


「成功ルナ!」


「成功ですの!」


「いやまだ監視員近くにいるから……もう少し離れた所で喜んでくれ……」


 こうして俺たちは無事(?)、シスター・ハイドロを救出することに成功したのであった。
ついでに後日、シャーチクさんが異界へと帰っていったことでハイドロが地下牢から脱走したことが発覚し、彼女は無事指名手配犯として第7エリア中に知れ渡ることになりましたとさ。めでたしめでたし。


「全然めでたくないですの!」


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